中日春秋
2010年4月26日
有名な<神は死んだ>の言葉で知られるドイツの哲学者ニーチェの箴言(しんげん)を集めた『超訳ニーチェの言葉』がベストセラーになっている▼今年一月からすでに十五刷を重ね、三十九万部を売り上げた。難解なイメージがある哲学者らしくない、親しみやすい短文を紹介しているのが特徴だ▼<孤独は人間を腐らせてだめにしてしまう。さあ、部屋を出て、街へ出かけよう>という呼び掛けや<人を待たせるのは、何も使わずにその人を人間的に悪くさせてしまう不道徳きわまりない方法なのだ>と時間にルーズな人を戒める警句も盛り込んだ▼十九世紀末の西欧で、絶対的な価値だったキリスト教道徳を激しく攻撃したニーチェとは別の顔が見える。編訳者の白取春彦さん(56)は「ニーチェの本質は、人間を深く見つめる洞察力にこそある」とその魅力を訴える▼米軍普天間飛行場の国外・県外移設を求める沖縄県民大会がきのう、読谷村であり、主催者発表で約九万人が参加。仲井真弘多知事も初めて出席し、圧倒的な民意を政府側に突きつけた。鳩山由紀夫首相は「五月末の決着」にどんな道筋をつけるのだろうか▼首相とニーチェの言葉が重なってくる。<人から信じてもらいたければ、言葉で自己を強調するのではなく、行動で示すしかない。しかも、のっぴきならない状況での真摯(しんし)な行動のみが、人の信に訴えるのだ>