拙速審理 「あと何分かかりますか」「予定時間はもう過ぎています」 オウム高橋克也被告の裁判員裁判

2015-03-22 | オウム真理教事件

【オウム証人尋問終わる 】 「最後の声」届いたか 駆け足審理、遺族に不満も
 東京地裁で1月に始まった元オウム真理教信者 高橋克也 (たかはし・かつや) 被告(56)の裁判員裁判で、27人に上る証人の尋問が終わった。教団関係者にとっては法廷で地下鉄サリンなど一連の事件を語る最後の機会だったが、過密な日程をこなすために尋問の時間は制限され、真相に迫る肉声を期待した遺族は「物足りなかった」と強い不満を漏らしている。
 「これが最後。風化させないために用意してきたものがある」。2月25日、無期懲役が確定した元幹部 林郁夫 (はやし・いくお) 受刑者(68)が尋問中に意を決したように切り出した。
 深い後悔を口にしていたサリン散布役の言葉を聞き漏らすまいと身を乗り出す遺族。「9分かかるが読ませてほしい」。だが裁判長は認めず、林受刑者は遺族の方を振り返りながら退廷した。
 被害者参加していた遺族の 高橋 (たかはし) シズヱさん(68)は「20年後の今、彼らがどう考えているかは、重要なことではないのか。細かい争点の審理ばかりで、心が通っていない裁判だ」と悔しがる。
 死刑囚の証人は公の場に出ること自体が異例中の異例だった。長年逃亡していた特別手配3人の裁判員裁判が終われば、証言の機会はないとみられている。3月11日の公判。尋問終了を告げられた 中川智正 (なかがわ・ともまさ) 死刑囚(52)は、「ありがとうございました」と急に声を張り上げた。中川死刑囚の尋問も、大半は事件の細部に関する内容だった。
 短期集中で審理される裁判員裁判では、裁判所と検察、弁護側が事前に争点や証拠を絞り込む。裁判員の負担を軽くし、効率的に審理するために重要な手続きだが、大型事件ではスケジュール通りに審理を進めるのが難しく、裁判長が時間管理に追われることも多い。
 「あと何分かかりますか」「予定時間はもう過ぎています」。高橋被告の公判では、尋問途中で裁判長が検察官や弁護人をせかすような場面が何度も見られた。
 地下鉄事件で散布役を車で送迎したとされる高橋被告は、サリンを使ったテロ計画を知らなかったと無罪を主張している。限られた時間で20年前の「認識」について審理を尽くすのは容易でない。証人尋問は、事件直前の実行グループ内の会話に「サリン」という言葉が出たのかどうかなど、細かな状況を記憶の断片から再現する作業に終始。質問も同じ内容の繰り返しが多かった。
 このような光景は昨年開かれた元幹部 平田信 (ひらた・まこと) 被告(49)や、元信者 菊地直子 (きくち・なおこ) 被告(43)の裁判員裁判でも見られた。 公証役場事務長拉致事件 の遺族として参加した 仮谷実 (かりや・みのる) さん(55)は「証人尋問や被告人質問にもっと時間をかけてほしかった。裁判員がちゃんと理解できたか疑問が残る」と話す。
 一審で懲役9年を言い渡された平田被告の場合、控訴審では証人尋問を実施せず30分足らずの被告人質問をしただけだった。今月4日の東京高裁判決は、裁判員裁判の結論を支持する一方で「指示に従うだけだった平田被告の動機を十分考慮していない」と、一審の審理に疑問を示した。
 東京地裁は23日から4日間連続の予定で高橋被告の被告人質問を実施する。仮谷さんは「まだ謝罪の言葉すら聞けていない。彼しか知らない事実を聞けるかもしれない」と望みをつないでいる。
 (共同通信)2015/03/22 20:54
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