PC遠隔操作事件 片山祐輔被告「老練な弁護士なら自分の嘘を見破ってしまうかも、と心配も」15回公判

2014-08-09 | 社会

【法廷から】遠隔操作・片山被告「無実の人ならこう話すはず…」演技で辣腕弁護士だまし、虚偽否認の“最強の味方”に
 産経ニュース 2014.8.9 07:00
 パソコン(PC)遠隔操作ウイルス事件で無罪主張から一転、起訴内容を認めた片山祐輔被告(32)。東京地裁(大野勝則裁判長)で7日に開かれた第15回公判では約2時間半にわたる被告人質問が行われ、“無実の人”を装うことを決めた逮捕前後の心境などを片山被告が法廷で説明した。捜査の手が迫ると予想し、逮捕前から疑いを晴らすための想定問答を用意していたという片山被告。周到な準備で弁護団や家族を嘘に巻き込んだ過程を饒舌(じょうぜつ)に振り返った。
*逮捕前、「自分にたどり着くかも、やばい」
 片山被告は午後1時半ごろ、グレーのTシャツ姿で傍聴席に目をやりながら入廷。裁判長に促されると、慣れた様子で証言台の椅子に座った。
 この日の公判では平成25年1月3日に神奈川県藤沢市の江の島を訪れ、「グレイ」という愛称の野良猫にウイルスのソースコード(設計図)の入った記録媒体を付け、2日後にクイズ形式のメールでそのことを報道機関などに知らせた経緯から、弁護側が質問を始めた。猫と接触する片山被告の姿が防犯カメラに映っていたことが、約1カ月後の2月10日の逮捕につながる手がかりとなった。

弁護人「あなたがグレイを抱えている防犯カメラの画像がありますが、この時に首輪を付けたのですか」
片山被告「はい」
弁護人「カメラに映ることを懸念しなかったのですか」
片山被告「全く考えていませんでした。商店街を歩いていて、郵便局の辺りに1台あると気付きましたが、(高台の方に)登っていって、『もうないな』と」

 ネット上では匿名化ソフトを使ったり、ウイルスの痕跡を消去したりと、犯行の痕跡を残さないように用心深く立ち回っていた片山被告。しかし、現実世界の防犯装置には疎かったのか、無頓着に振る舞っていた様子が浮かび上がった。
 片山被告が自身を映していた防犯カメラがあったと知ったのは、数日後だったという。「テレビで『ここが犯人が首輪を付けたと思われるベンチです』と報道していました。それを見て、青くなりました」
 片山被告は専門学校に通っていた17年に大手レコード会社社長らへの連続殺害予告事件で逮捕、起訴され、実刑判決を受けて服役した。「前科もあるし、『自分にたどり着くかも、やばい、やばい』と思いました。ただ、周囲には平静に見せなければならず、警察が尋ねてきたときのために、受け答えを考えていました」と振り返った。
*「祐輔、警察だって」
 片山被告は江の島に行った後、「やばいと思う半面、自分は大丈夫だ、という思いもあった」とイタリア旅行に行き、帰国後の2月、休職していたIT関連会社に復帰した直後に逮捕されたという。

弁護人「あなたは2月10日に逮捕されましたね。そのときの様子は?」
片山被告「(午前)6時半くらいに呼び鈴が鳴り、母が対応しました。『祐輔、警察だって。あなた、何かした?』と言われました。私は事件を知らないはずで、驚いてみせないといけないので、『えぇーっ』と反応しました。玄関のドアの外に何十人もいて『警察だ』と言われました」
 「家中の捜索が始まり2時間くらいして、逮捕状を見せられ、執行されました。家の前にたくさんマスコミがいて、フラッシュを浴びせられました」
弁護人「警察が来たとき、どんな気持ちでしたか」
片山被告「『やっぱりきたか』という気持ちでした。その場で逮捕されるとは思っていませんでしたが、向こう(警察)がどの程度情報を持っているか、見極めようと思いました」

 片山被告は警察の捜査が自分に及ぶと予想していたが、すぐに逮捕はされず任意の事情聴取に止まると考えていたという。
 弁護人が「もし、逮捕されずに任意で事情を聴かれていたら、切り抜けられたという自信はありましたか」と尋ねると、片山被告ははっきりとした口調で「はい」と即答。「自由の身なら情報収集もしやすいし、どう言い訳するのがベストか分かった」と続けた。

弁護人「(逮捕後の取り調べで)どう振る舞いましたか」
片山被告「(遠隔操作については逮捕状に直接書かれていないので)遠隔操作事件の被疑者だと自分が気付いていないふりをし、しかし、黙秘と取られない程度には対応しました」
 「ある部分は認め、ある部分は嘘をついたり忘れたと言って引き延ばし、相手から情報を得ようとしました」

 片山被告は江の島で実際にはデジタルカメラを使って猫の画像を撮影し、メールに添付していた。しかし、取り調べのやり取りの中で、捜査当局がスマートホンでの撮影と誤認している可能性を察知するなどし「言い訳の方針を固めた」と振り返った。
*事件の動機は「自分でも分からない」
 逮捕直後から容疑を全面的に否認した片山被告。逮捕から4日後の2月14日には、22年に再審無罪が確定した足利事件などを担当した佐藤博史弁護士が主任弁護人となった。

弁護人「佐藤弁護士と接見する前は、どのような印象を持っていましたか」
片山被告「足利事件を無罪に持っていったすごい先生だと聞いて、もし、(自分の弁護人に)付いてもらえるなら心強いと思いました。ただ、老練な弁護士なら、自分の嘘を見破ってしまうかも、と心配もありました。ただ、その人を信じ込ませたら、最強の味方になると思いました」
弁護人「見破られる不安はありましたか?」
片山被告「(不安は)大きかったです。試されているな、と感じる局面は何度もありました。実際は捜査の進展がとても気になっていましたが、まず『家族が心配だ』と無実の人ならするであろう態度を取ったことで、佐藤先生をだませてしまったと思います」

 よどみなく話す片山被告を、弁護団の席から、佐藤弁護士は表情を変えずに見つめていた。
 虚偽の無罪主張を続けた動機について、片山被告は「前の事件で家族に多大な迷惑をかけてしまった。前よりもはるかに大きな事件を起こしたので、今度は見捨てられてしまうと思い、『絶対に認めてはいけない』『どんな手を使っても無罪になるべきだ』と考えた」と述べた。
 これ以上、家族に迷惑をかけたくないという気持ちがあったなら、なぜ、今回の事件を起こしたのか。片山被告は自分でも説明ができないと法廷で吐露した。「私自身、この事件をどういう動機でやったか分からない。自分の心の中にどんな化け物がいるか自分で自分が分からない状況です。心の中に、ものすごくとんでもないことを考えている自分がいて、事件にまで至ってしまった…」
 弁護団は「動機の解明のために必要だ」などとして、情状面の精神鑑定を求めていたが、裁判所は今月8日、請求を却下。次回公判は9月19日に予定されており、検察側が被告人質問などを求めている。

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