佐世保・高1〈松尾愛和さん〉殺害事件 「世の中には攻撃衝動がとくに強い人間が存在する」片田珠美

2014-08-09 | 少年 社会

【精神科女医のつぶやき】片田珠美(99)佐世保高1女子殺害、惨劇の芽は摘めたのか
 産経ニュース 2014.8.9 07:00[westナビ]
 長崎県佐世保市で発生した高1女子生徒殺害事件には、大きな衝撃を受けた。こういう事件が起こるたびに人間の持つ攻撃衝動に戦慄し、「人間は人間にとって狼である」という古代ローマの詩人の言葉を思い出す。
 精神科医としての長年の経験から痛感するのは、世の中には攻撃衝動がとくに強い人間が存在するという厳然たる事実である。このような攻撃衝動が生まれつきの素質によるのか、生育歴によるのかは精神科医の間でも意見が分かれるが、いずれにせよ、サディズム的傾向の強い人間が存在することは否定しがたい。
 だとすれば、われわれにできるのは、フロイトが『文化への不満』で指摘しているように「攻撃的な欲動に制約を加える」ことだけだ。とはいえ、「さまざまな努力にもかかわらず、この文化的な営みはこれまでそれほど大きな成功を収めていない」。
 今回も、犯行前に加害者の少女を診察した精神科医が「人を殺しかねない」などと児童相談所に伝えていたにもかかわらず、具体的な対策が取られていなかった。その時点で精神科病院に入院させておくべきだったという意見があるが、実際にはなかなか難しいというのが現場にいる者の正直な気持ちである。
 この少女が入院をすんなり受け入れたとは思えないので、強制的に入院させるしかなかっただろう。現行制度では、強制入院には医療保護入院と措置入院の2種類がある。医療保護入院は保護者の同意を必要とする。措置入院の場合も、金属バットで殴られたという父親が警察に被害届を出したり通報したりすることが必要だった。そのうえで「自傷他害のおそれ」があると診断されてはじめて入院ということになる。いずれにせよ、父親が何らかの決断をする必要があった。
 このようにして入院させておけば、今回の惨劇は防げたかもしれない。ただ、この少女の場合、父親への怒りと復讐願望が相当強そうなので、退院後に別の形で攻撃衝動を爆発させる可能性が高いと言わざるを得ない。
 カミュの『異邦人』で描かれているのは、母の死の直後に人を殺した青年である。愛する者の死という対象喪失を受け入れなければならない「喪」の時期に、生と死の間の境界を破壊する行為である殺人が起こりやすいことは過去の事例を振り返れば明らかである。
 この時期に再婚して娘に1人暮らしをさせるという父親の決断は、攻撃衝動の爆発の抑止力になるどころか、真逆に働いたのではないだろうか。
 ◎上記事の著作権は[産経新聞]に帰属します *強調(太字・着色)は来栖
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