産経ニュース 2014.11.8 05:07
公安調査官の写真串刺し、教団名隠し勧誘…旧オウム、「反社会性」は継続
オウム真理教による無差別テロ「地下鉄サリン事件」から来年3月で20年。公安調査庁が同教団を母体とする「アレフ」と「ひかりの輪」に対し、6回目となる観察処分に向けて更新請求を行う方針を固めた。その背景には依然として「反社会的」と取れる活動実態がある。信者数や資産は前回更新時より増え、教団の活性化も懸念される。教団施設付近の住民からは処分継続を求める声が上がっている。
■信者、資産とも増加
同庁によると、両団体は今年9月末現在、15都道府県に32カ所の拠点を持ち、信者数は約1650人。前回の更新時より150人増え、12年前の水準に戻った。資産は信者からの布施の増加により昨年より約1億円増え、約6億5500万円に上った。
アレフの信者勧誘では、教団名を隠して行われる悪質な事例も報告されている。大学の趣味やスポーツのサークルを“隠れみの”にしたり、学園祭で声をかけるなどして若者を増やしている。公安関係者は「最近では、東京都内の公民館を借りてヨガ教室などを行っている。役所側は普通の区民として貸すので断ることもできず、対応に苦慮している」と話す。
■住民の不安
「(元教祖の麻原彰晃=本名・松本智津夫=死刑囚は)宗教上の『開祖』」「麻原開祖が解説した仏教・ヨガ等の宗教体系を継承」。アレフの公式サイトにはいまだに、「麻原開祖」が頻出する。一方、「(一連の)事件や犯罪の肯定に結び付くことがないことを明示した語義やその解釈を規定」などと危険性を否定する。
しかし、施設付近の住民は「中で何をやっているか分からない。事件が風化しては困る」と不安を募らせている。「観察処分の継続を求める署名を全国31万人分集めた。前回より6万人分多い」と話すのは、アレフの拠点がある東京都足立区の「足立入谷地域オウム真理教(アレフ)対策住民協議会」の斉藤洋一会長。オウム真理教対策関係市町村連絡会会長でもある近藤やよい足立区長らが署名を同庁に提出する予定だ。
平成19年にアレフから分離したひかりの輪は、上祐史浩代表(51)が行う講話会やセミナーを通じて信者を集める。「宗教団体でなく、思想哲学の学習教室」(上祐代表)と位置づけ、外部監査委員会の設置や祭壇の撤去などを行い、安全性をアピールする。
ひかりの輪本部が入居する東京都世田谷区のマンションには、移転を求める住民の横断幕が張られている。8日には、付近の住民が抗議デモを行う予定。
■反社会性
同庁による施設への立ち入り検査はこれまでに約280回。同庁の調査によると、アレフは施設内に麻原死刑囚の肖像画を掲げ、信者に麻原死刑囚の動画を見せるなどして絶対的帰依を指導。昨年7月には公安調査官らの写真を刃物で串刺しにし、施設の祭壇付近に置かれていたことが明らかになった。同庁は「教団の危険性と反社会性が露呈した」と指摘する。
ひかりの輪は、マスコミを通じて「脱麻原」を訴えるが、麻原死刑囚の修行を特徴づけるような儀式を行っていることを同庁が確認。さらに、全国各地の神社仏閣や自然を探訪する「聖地巡り」で無登録のまま旅行業を営んだとして、旅行業法違反容疑で警視庁の捜査を受けている。
アレフは10月、麻原死刑囚の長男から「勝手に自分の名前を使って催事をしている」として、名前や写真の使用差し止めなどを求める訴訟を起こされた。地下鉄サリン事件から20年を目前に、教団をめぐる動きが活発化している。
*地下鉄サリン事件
平成7年3月20日、東京メトロの日比谷、千代田、丸ノ内の各線の計5車両で、オウム真理教信者が猛毒ガス「サリン」を散布、13人が死亡するなどした事件。教団幹部らが殺人罪などで起訴され、麻原彰晃死刑囚ら13人の死刑判決が確定している。
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産経ニュース 2014.11.8 05:07
麻原死刑囚の三女、アレフ「実質的な現職役員」とみて調査 公安調査庁、教団の観察処分更新請求へ
公安調査庁が元オウム真理教教祖の麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(59)の三女(31)について、教団主流派「アレフ」の実質的な教団幹部に当たるとみて調査していることが7日、分かった。同庁が団体規制法に基づき、アレフとアレフから分離した「ひかりの輪」への観察処分の更新を公安審査委員会に請求する方針を固めたことも判明。同庁は三女とアレフの関係を請求要件に盛り込む詰めの作業を進めている。
3年ごとに可否が判断される観察処分は来年1月で期限を迎え、更新されれば6回目となる。更新請求を受け、公安審査委員会は教団側から意見を聴き、可否を決定する。
同法では、観察処分の請求要件として「無差別大量殺人行為が行われた当時の役員が現職役員」など5要件を定めている。同庁は、平成7年の地下鉄サリン事件発生当時、ホーリーネーム(教団内名)で「アーチャリー」と呼ばれ、11歳で最高幹部だった三女が実質的にアレフの「現職役員」に当たるとみている。
三女は昨年8月、東京拘置所に収容中の元オウム幹部、小池(旧姓・林)泰男(56)▽新実智光(50)-ら死刑囚との面会を不許可にしたのは不当として、処分の取り消しなどを求め東京地裁に提訴。訴状によると、三女は平成19年9月ごろから継続的に面会していたが、昨年5、6月に面会を禁じられた。
同庁は、三女が面会時、刑事収容施設法が禁じる死刑囚らの間の書籍のやり取りを仲介していたとみて事態を重視。さらに、立ち入り検査などの情報収集の結果、三女がアレフと密接な関係にあるだけでなく、大きな影響力を持つとの見方を強めている。三女が要件に入れば、麻原死刑囚の子供としては初めてとなる。
同庁によると、アレフは現在も、麻原死刑囚を絶対的帰依の対象とするなど反社会的体質を堅持。ひかりの輪は「脱麻原」をアピールしながらも、麻原死刑囚の修行を特徴づける儀式を実施するなど「麻原隠し」を行っているという。
三女は自身のブログに教団とは一切関係ないと記載。アレフは産経新聞の取材に応じなかった。ひかりの輪は「オウム真理教の過ちに対する反省を深め、改革を進めてきた。当団体には麻原(死刑囚)の教義に従う者はいない」などとして観察処分の更新に異議を唱えている。
■観察処分 無差別大量殺人の再発を防止する団体規制法に基づく措置。処分対象となった団体は、構成員や施設に関する情報を公安調査庁に報告する義務を負うほか、施設への立ち入り検査を受ける。同庁の請求を受け、公安審査委員会で決定する。期間は3年以内で、要件に該当すれば更新される。
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