【府中刑務所文化祭】2015/11/3 ツアー参加者は1万8000人

2015-11-14 | 社会

府中刑務所文化祭 塀の中の素顔を垣間見たい…ツアー参加者は1万8000人
産経新聞 11月14日(土)17時9分配信
 普通の生活をおくる人間にとって、普段、縁がなく、できれば一生関わりたくない場所の1つに刑務所がある。その刑務所の中でも、日本一の規模を誇る「府中刑務所」(東京都府中市)が、犯罪とは無関係の一般人でにぎわう日がある。それが毎年文化の日に開催される「府中刑務所文化祭」だ。普段、中を垣間見る機会がなかなかない刑務所だが、入場無料ということもあり、怖いもの見たさなのか、40回目の今年、集まった見学者は実に約1万8000人。「臭い飯」と伝わる受刑者の食事を再現した弁当を購入できるほか、受刑施設の一部を見学できる「プリズンアドベンチャーツアー」も人気だ。去る11月3日に開催された第40回文化祭に潜入してみた。

   

■1000人以上が長蛇の列
  府中刑務所は、東京都西部・府中市の京王線府中駅から住宅街を北に抜けると突然現れる。高く長い塀に囲われた外観は、やはり少し近寄り難くもある。途中の道には、見学希望者だろうか、人々が列をなして刑務所を目指していた。
  午前10時スタートとのことだったので、到着したのは少し早めの午前9時20分ごろ。すでに、入口前には千人以上が開会を待っているだろうか。昨年の入場者が約1万5千人、刑務所を所管する法務省の幹部からも事前に「結構人気があるんですよ」と聞いていたものの、思った以上の盛況ぶりだ。府中刑務所の職員によると、この日、通勤した午前7時ごろにはすでに50人程度が並んでいたという。
  午前10時、人気ダンスボーカルグループの「MAX」のメンバー3人らによるテープカットで開会。MAXは今年4月に法務省から、全国の受刑施設の支援などを行う矯正支援官に任命された。この日は矯正支援官の活動の一環として府中刑務所の1日所長を務めた。
  開会式が終わると、文化祭を待ちわびていた見学者が、一斉に刑務所内になだれ込んだ。
■レアな網走牛は少し高め、レッテルの由来
  まず向かったのが、府中刑務所庁舎1階の食堂に設置された「麦飯食堂」。ここでは、受刑者に普段、提供される食事を基に考案された「プリズン(刑務所)弁当」が購入できる。昨年までは定食形式で提供していたが、今年はより多くの見学者に提供できるよう弁当にしたのだという。
  メニューはプルコギ(韓国風の甘辛牛肉炒め)弁当(600食限定)とカレー弁当(300食限定、いずれも500円)。それに、北海道・網走刑務所の農場で受刑者が育てた「網走監獄和牛」を使用したすき焼き弁当(100食限定、1000円)だ。府中刑務所の職員は「網走牛は数が限られるので、確保が大変なんです。だから、こういう数と値段になりました」とのこと。いずれも売り切れ必至とのことで、いち早く並び3食とも確保した。
  弁当のために朝食を抜き空腹が限界に近づいていたため、早速、ふたを開けるてみる。「臭い飯」のイメージに、恐る恐る顔を近づけると、鼻腔には食欲をそそる香りが広がる。いずれも食堂名の通り麦飯が添えられており、少し辛めながらお袋の味のような素朴なカ味わいのカレー、甘辛く味付けられたプルコギ、柔らかく噛むと肉のうまみと甘みが広がる網走牛と、三者三様の味わいながらいずれも美味。うれしいような、拍子抜けのような…。
  「臭い飯」という巷の評判は何だったのだろうか。府中刑務所の職員がその由来を分析してくれた。それによると、受刑者の房はトイレが備え付け。それゆえに「房内での食事の時に、トイレが匂うということで『臭い飯』となったのでしょう。とは言っても、トイレにフタはありますし、房内での食事も朝食くらいです」と苦笑いだった。
  近くでカレーに舌鼓を打っていた20代の女性2人も「えー、臭くない」「普通においしいじゃん」と楽しんでいた。

    

■屋久杉の高級テーブルやおみこしも販売
  「臭い飯」のほかに人気なのは、コッペパンとレーズンパンのセット。2つ100円で販売される。弁当完食後に販売所に向かったが、すでに100メートル超えの長い列。この日は午前中800セット、午後700セットの販売予定で、開場約30分後には、係員が「午前中はあと100です」と購入希望者に呼びかけるほどだった。
  完全に出遅れたと感じ、パンの購入は泣く泣く諦めることに。毎年購入しているという40代の女性によると、「中がしっかり詰まった、懐かしい味」とのこと。来年こそはとリベンジを誓った。
  会場では、受刑者が刑務所作業で制作した家具や革靴などの即売も行われる。“監獄製”は、質が高くて安価と愛好者も多い。
  革靴が5~6000円程度で販売される他、家具は数万円の日用品から高級品まで多種多様。ほかにも枕や箸、お盆のような日用品やうどん、カバンやベルト、バーベキュー用品まである。また刑務所の名前が入った巾着袋や前掛けなどのグッズも人気だ。この日の即売で最も高価だったのは108万円のおみこし。また、高級感あふれる約50万円の屋久杉製テーブルは、開場から1時間もしないうちに「売約済」となっていた。

    

■出場券、無くすと「出所できない可能性があります」
  府中刑務所の敷地は約26万平方メートル、収容する受刑者は現在約2100人で、日本最大の受刑施設だ。受刑者のうち約400人が外国人と多国籍。また、指定暴力団山口組の篠田建市(通称・司忍)組長(73)が約4年前まで入所し、現在もナンバーツーの高山清司受刑者(68)が受刑している暴力団関係者の収容先としても知られる。
  文化祭では、受刑者を直接目撃することは不可能だが、その日常を垣間見ることもできる。「プリズンアドベンチャーツアー」では、録音や録画は禁止だった一方、受刑者が作業を行う工場や浴場を見学できる。
  刑務所西側の受刑施設の入口に並ぶこと数10分。手荷物を渡されたポリ袋に入れ、きつく縛って抱える。そのまま少し待つと目の前の金属製の扉が左右に開く。すると、奥にはもう1つ、閉ざされた重い扉。一定の人数になると、今、入ってきた背後の扉が閉じる。
  「無事、娑婆に帰ることができるだろうか」そんなことが頭をよぎっていたその時、職員によるダメ押しが。「お手持ちの入場券は出場券になります。途中で無くしてしまうと、出所に手間がかかる可能性があります」。お決まりのネタなのだろう、職員は慣れた様子だ。苦笑いを浮かべざわつく見学者。職員はさらに「出所の記念に出場券はお持ち帰りください」とたたみかける。
  ■「かけ湯は2杯」まで
 見学者がまず向かうのは工場だ。途中、目に入った脱衣場には、作業服が掛かっている。トラブル回避のためだろう、見たところハンガーは取り外し不可能な構造だ。作業場には複数の工作機械があり、中央奥には職員が監視するために一段高くなった場所がある。作業にあたって受刑者に向けられた10訓は日本語の他、ローマ字、中国語、ハングル、英語表記も。外国人受刑者を数多く抱える府中ならではだ。
  次は浴場。正面に入浴にあたっての注意が掲げられている。「かけ湯は2杯まで」などと表記され、入浴中の合計も12杯と厳格なルールがある。
  「当たり前なのだろうけれど、お風呂も自由に入れないのか」。隣で見物していた50代の男性は感心しきりだった。
  見学コースが一通り終わり、入場の際の重い門の脇にある狭い扉から外に。非日常から日常に、娑婆の空気を胸一杯に吸う。少しの間だったが、受刑者の日常を感じた。
  法務省の幹部は「普通の日常生活になじめず、犯罪者になってしまった受刑者も多い。朝、決まった時間に起床して食事と労働。規則正しい生活を習慣づけて、出所後に備えてもらう」と話す。スムーズに普通の日常に復帰できれば、再犯防止に役立つとの考えがあるのだという。
  普段、あまり深く考えることのない塀の中。非日常を楽しみつつも、犯罪や刑罰について考える契機にもなった1日だった。
最終更新:11月14日(土)17時9分

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
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