原子力安全委員会の変わらぬ隠ぺい体質

2012-06-09 | 政治

原子力安全委員会の変わらぬ隠ぺい体質
ガジェット通信 2012.06.08 14:15
原子力安全委員会の情報隠ぺいが明らかに
 情報公開法で資料を請求された原子力安全委員会が、当たりさわりのない文書のみ公開し、都合の悪い文書を隠ぺいしていた。そして、新たに提出された文書は、同委員会が電力会社に「作文」させていたことが分かった。2012年6月5日付の東京新聞が「電源喪失対策 文書『隠す』」というスクープ記事を掲載している。
 福島第1原発の事故が深刻になった主な原因は、施設内のすべての電源が使用できなくなる状態、すなわち全交流電源喪失(SOB)になったことある。同新聞は、政府や東電らがSOBについてどう考えてきたのかを検証するため、昨年6月に情報公開制度を利用して、関連する資料の公開を原子力安全委員会に請求した。
 公開を請求したのは、原子力安全委員会の作業部会が1993年に作成した文書。当時、海外でSOBによる事故が発生したことから、安全指針を見直す気運が高まったことがある。そこで、有識者や電力会社などをメンバーとする作業部会を設置し、協議を重ねた。その結果、1993年にA4で約600ページの文書がまとめられ、作業部会での資料として配付された。
 昨年6月末の時点で、同委員会はその文書をすべて同新聞に公開すると言っていた。だが、さまざまな理由をつけて、開示請求の補正を要求した。「補正」とは、公開する側が請求された資料の公開に条件をつけることである。東京新聞はこの補正を受け入れ、一部が未公開の資料は開示される。
 昨年10月になると、同委員会は未公開であった文書を開示。その後も「これがすべて」と言っていた。ところが、本年6月4日に同委員会は、「残る文書」を公開したのだ。斑目春樹原子力安全委員は、「結果的に隠ぺいしたとみられても仕方がない」と同新聞にコメントしている。では、その「残る文書」によって何が分かったのか。
 議論の結論は「日本の原発は安全だから対策の必要はない」
 それは、主催者の原子力安全委員会と作業部会の事務局である科学技術庁、そして電力会社のズブズブな関係であった。海外の原発でSOBが起きたから、日本も安全指針を考え直そうという主旨で、作業部会が立ち上がった。にもかかわらず、議論の末に出た結論は、日本の原発は安全なのでSOBを「考慮する必要はない」。危機感のないまま原発が稼働されていた実態に、ただあきれるばかりである。
 それも、文書のSOBに関する部分の執筆は、電力会社に割り振られていたのだが、SOBが起きても「重大な事態に至る可能性は低い」などと書くよう、事務局が電力会社に「作文」を指示していたというのだから、開いた口がふさがらない。くわえて、そんな実態が分かってしまうと都合が悪いので、情報公開法を無視して文書の一部を開示しない。原発事故で私たちが学んだことは、原子力の安全が情報の公開によって担保される、と言うことではなかったか。
 原子力に関わる組織や人々の、安全に関する認識の甘さを、私たちはすでに嫌というほど知らされた。おかげで、そういった組織や人々のウソや隠し事に対する免疫が、私たちにはできている。原発関係者には、都合の悪いことであろうが何であろうが、すべての情報を包み隠さず公開してほしい。情報公開法を無視して情報を隠し、自ら信用を失墜させておきながら、原発の再稼働を求めるというのは、都合のよすぎる話だと思う。
(谷川 茂)
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原子力安全委 電源喪失対策 文書「隠す」
東京新聞 2012年6月5日
  東京電力福島第一原発事故の主因となった長時間の全交流電源喪失(SBO)をめぐり、原子力安全委員会の作業部会が一九九三年に「考慮する必要はない」とした国の安全指針を追認していた問題で、安全委が関連する全資料を公開したと説明しながら、一部を伏せていたことが分かった。安全委は四日、残る文書を公開。班目(まだらめ)春樹委員長は「結果的に隠ぺいしたとみられても仕方ない」と謝罪した。
  文書には、事務局だった科学技術庁原子力安全調査室が電力会社側に短時間の電源喪失を考えるだけでよい理由を「作文」するよう求めたものも含まれ、官業が一体化して安全を軽視していた実態が明らかになった。
  作業部会は海外で全電源喪失事故が起きたことを受け、九一年に設置。有識者による専門委員五人のほか、東京電力などの外部協力者も参加して非公開で協議を重ね、九三年に報告をまとめた。文書は作業部会で配布された資料などで、A4判で計約六百ページある。
  公開文書によると、東電は報告の骨子案に対し、SBOだけを安全指針に取り込むのは「バランスの取れないもの」と主張。関西電力は「指針への反映は行き過ぎではないか」と難色を示した。
  報告書の原案では、電源喪失対策の現状などの主要部分について電力会社に執筆が割り振られていた。
  事務局の「作文」指示に、東電は「日本の原発は設計に余裕があり、十分な安全性が確保される」などと答えた。作業部会は、ほぼ受け入れ、全交流電源喪失が起きても「重大な事態に至る可能性は低い」と記した報告書を作成。安全指針は見直されなかった。
  安全委は会議資料を昨年十月までに全部公開したと説明していたが、国会事故調査委員会が五月下旬、非公開の資料があるのではと指摘し提出を要求。公表漏れが分かった。
  電力側と一体で報告書をまとめたことに対し、班目委員長は「原案を電力会社に執筆させていたのは明らかに不適切で、大変申し訳ない」と話した。
  安全委事務局は「非公開文書は報告書とともに昨年六月に見つかっていた。公開の準備を進めていたが、防災指針の見直しなどで忙しくなり、忘れてしまった」と釈明した。


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