地面師

2018-10-18 | 社会

2018年10月17日 中日新聞
 夕歩道
 詐欺師にも五輪特需か。地価が上昇に転じた東京の一等地を舞台に、またぞろ地面師たちが暗躍しているらしい。それにしても、世に知られた大手企業まで見事にだまされるとはどうしたことか。
 詐欺師、ペテン師、いかさま師にゴト師。「師」の付く悪者にもいろいろあるが、地面師とは名前からして詐欺まがい。免許が必要な「師」かと。戦後混乱期までさかのぼる詐欺の老舗らしいが。
 土地を売った人物は偽物、と本来の土地所有者の名で何度も警告の内容証明郵便が届いたそうな。にもかかわらず、それが取引妨害工作に見えてしまったという。われわれ人間の心の弱さを思う。

中日春秋(朝刊コラム)
2018年10月18日 中日春秋
 旅の二人が裸になって、麦畑の真ん中を歩いている。まるで水の中を進むように、おそるおそる。「狐(きつね)にでもだまされたんじゃろ」。見かけた農民がこつんとたたく。われに返ると「ここにあった川、どこへやりました」。おなじみの上方落語『七度狐(ひちどぎつね)』。怒ったら七度、人をだますという、執念深くて、悪賢い狐に、仲のいい二人が狙われるはなしだ
▼寺に宿を取ったら、棺おけから現れたおばあさんに追いかけられて悲鳴を上げる羽目に。またも頭をこつんとやられて、「ここにあったお寺どこへ行きました」
▼化かす側の悪知恵がよほどだったか。東京の五反田あたりに現れた地面師なる詐欺集団による事件である。積水ハウスが実に五十五億円をだまし取られたようだ。旅館跡地の所有者になりすまし、書類を偽造し、駆使する大掛かりな仕事に大手住宅メーカーが欺かれた
▼被害者が踏みとどまる機会は、幾度かあったようだ。本物の地主の側から警告が来て、警察も動いた。だが「怪文書の類い」「取引妨害の一環」と契約を進めたという
▼いつの世も、詐欺師は人の欲望と不安に付け込む。こつんとやられたくらいでは、目の前の幻が消えないほどいい取引だったか
▼バブル期に起きた巨額詐欺事件を思い出す。東京五輪を前に、警戒するべき時だろう。「ここにあったもうけ話、どこへ行きました」とならないように。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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〈来栖の独白〉
 いやぁ、「地面師」という言葉、初めて知りました。何とも、含みのある言葉? 
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【主張】「地面師」摘発 手口の周知で再発防止を
2018.10.18 05:00
 地主になりすまして架空の土地取引を持ちかけて多額の代金をだまし取る「地面師」グループが警視庁に摘発された。
 地価の値上がりを背景に同様の詐欺被害は全国で広がりつつある。土地を売買する際には、所有者の本人確認を徹底するなど基本的な行動が被害を防ぐことになる。
 「オレオレ」などの特殊詐欺と同様である。早期に事件の全容を解明し、悪質な手口を広く周知して、新たな犯行の抑止につなげてほしい。
 東京都内の土地を購入しようとした大手住宅メーカーの積水ハウスが偽の地主らにだまされて約55億円の被害に遭った事件で、警視庁は土地所有者になりすました女ら数人を逮捕した。
 舞台となったのは品川区西五反田のJR駅近くの約2千平方メートルの土地だ。積水ハウスはこの土地を購入する契約を結んだが、土地の所有権移転登記をする際に相手側が提出していた書類が偽造されたものと判明した。
 土地取引をめぐる詐欺は地価が高騰したバブル経済期に横行していた。ここ数年は都市部を中心に地価が再び上昇に転じ、三大都市圏の商業地は6年連続で上昇している。積水ハウスも問題の土地を取得した後、マンションを建設する計画だったという。
 最近は土地所有者の高齢化で不動産の管理が行き届かず、相続された土地がそのまま放置される事例も目立つ。
 2020年東京五輪の開催を控えて都内では再開発事業も活発化しており、地面師グループがつけ込みやすい状況にある。
 地面師の手口には、割安な価格で土地取引を持ちかけて契約を急がせるなどの特徴がある。グループ内では役割が細分化され、犯人が「善意の第三者」を装うなど摘発が難しい部分もある。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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