妻を刺殺した夫(66歳)菅野幸信容疑者 妻は難病長男の人工呼吸器を止め(嘱託殺人)執行猶予中だった

2009-10-16 | Life 死と隣合わせ

介護の末…再び悲劇 5年前に妻が長男を、その妻を夫が殺害
 讀賣新聞 2009年10月19日(月)08:05
 悲しすぎる。家族にしか分からない苦労と苦悩の果てに、「死」を懇願された母は息子を、夫は妻を…。神奈川県相模原市で今月12日、妻に「死にたい」といわれた夫が、包丁で妻の首を刺し殺害する事件があった。妻は5年前、介護していた息子を殺害して起訴されたが、執行猶予付きの有罪判決を受けていた。介護される側とする側。それを見守った家族。高齢化や核家族化が進む中、介護は誰にとっても身近な問題となっている。その末路が「殺人」ではやり切れない。
 神奈川県警相模原署に殺人容疑で逮捕されたのは同市の無職、菅野幸信容疑者(66)。12日午後2時半ごろ、自宅寝室で妻、初子さん(65)の首を包丁で刺し殺害した疑いがもたれている。
 初子さんは、全身の運動神経が侵され体が動かなくなる難病「筋委縮性側索硬化症」(ALS)を患っていた長男=死亡時(40)=を、平成13年から約3年間、自宅で介護した。人工呼吸器をとりつけられた長男の食事も排せつも、ほとんど面倒を見ていたという。床ずれの心配もあり、夜も2時間おきに起きなければならなかった。「体格の大きい息子さんを抱えて看病しながら、病気に負けないように励ます毎日。本当に大変そうだった」。近所の人はそう振り返る。
 長男の身体は動かなくなっていった。ひらがなの文字盤を目で追わせ、視線の動きで意思を読み取る方法でしか、長男との“会話”は成立しなかった。「死にたい」。長男は初子さんに視線でこう訴えるようになったという。
 横浜地裁の判決によると、初子さんが無理心中を決意したのは、16年8月26日深夜。初子さんが人工呼吸器を外すことを伝えると、長男は目で「おふくろ、ごめん。ありがとう」と応じたという。
 結局、初子さんは死に切れず、殺人罪で起訴された。裁判では「嘱託殺人」と認められ、執行猶予判決を受けて自宅に戻ってきたが、「すっかりふさぎ込んでいた」と近所の男性は話した。
 初子さんは、長男に語りかけるように家の仏壇を拝むようになり、夫婦で墓参する姿もたびたび見かけられた。精神的に不安定にもなっていたようで、病院にも通っていたという。
 初子さんは足が悪かったが、勤めていた会社を退職した幸信容疑者が病院や買い物に車で送り迎えをしている姿を、近所の人たちはたびたび目にしていた。
 「妻が『死にたい』と言うのをずっとなだめていた」「妻が包丁を持ち出した」。相模原署によると、幸信容疑者はこう供述しているという。
 「長男を手にかけるというつらい事件があった自宅に5年近く住み続けた2人には、想像を絶する思いがあったはずだ」。署幹部は複雑な表情で話す。
 幸信容疑者と初子さん、長男が暮らした自宅の郵便受けには、いまも3人の名前が書かれたままになっている。初子さんが殺害された後、ベッド脇のテーブルの上には、書き置きが見つかった。そこには、こう書かれてあった。
 《これでやっと楽になれる 葬式の心配はしないでください 長男の七回忌をお願いします…》(読売新聞 中村昌史)
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日経新聞 春秋(10/15)
 65歳の妻を包丁で刺殺して自首した66歳の夫が逮捕された。妻は5年前、難病に苦しんでいた40歳の長男の人工呼吸器を止めて嘱託殺人罪に問われ、執行猶予中だった。神奈川県相模原市で先日起きた事件に、言葉を失うばかりである。
▼長男の病はALS(筋萎縮性側索硬化症)。全身の筋肉が徐々に動かなくなり、症状が進んだ場合、自分で呼吸ができなくなる。4年近く看病を尽くした母はある夜、「死にたい」と訴え続ける子に「一緒に逝こう」と伝えた。体がもう全く動かない子は文字盤を目で追い、「ごめん、ありがとう」と答えたという。
▼呼吸器の電源を切ったあとで自殺を図った女性の命を救ったのは夫だ。その夫が今度は妻を刺した。すぐ自首し、「妻はうつ病で日ごろから死にたいと言っていた」と供述した。「母さんが息子にしてあげたぶん、彼女の力になりたい」。5年前の週刊朝日の報道に夫の言葉が残る。なぜ、の思いが頭を離れない。
▼5年前は、事件も裁判もずいぶん騒がれた。難病患者や家族を支える仕組みや終末医療のあり方も問題になった。でも、また悲劇が起きた。二つの殺人は罰せられねばならないが、どんな境遇にあっても「生きたい」と思える社会が当たり前である。それはないものねだりだ、という空気がありはしないか、怖い。
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死を望む妻、引き留め続けた夫「裁判所は深い同情を感じています。命の大切さを確かめ、生き抜いてほしい」 2010-03-06 
妻(ALSだった長男の殺人罪で執行猶予中)の嘱託殺人罪で夫に執行猶予判決 2010-03-05 
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妻(ALSだった長男の殺人罪で執行猶予中)の嘱託殺人罪で夫 初公判2009-12-22 
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1 コメント

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Unknown (rice_shower)
2009-10-17 01:16:55
私が最も尊敬する人物の一人がS.ホーキング博士です。(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%B0
ALS。 感知、認知、思考機能は全く失われない病だと聞きます。 内部に沈殿、堆積する正負を問わぬエネルギーを、言葉でdischargeする術を奪われたとき、それを宇宙の深遠に至らしめる事の出来るのは、億分の一の天才のみに与えられる僥倖なのでしょう。
私たちは、このような病に苦しむ“普通の人々”が、生きたいとまで思わなくとも、せめて死にたいと思わせない社会になるよう、何かを為すべきなのですが、何をどうしていいのやら。 
数年前『風歩』という筋ジストロフィー患者の手記を読み、K点越えの衝撃を受けたことが有ります。 ホーキング博士同様(あと、モハメッド・アリと)、私が今最も死んでもらっては
困ると思っている人です。
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