暴力が当たり前のような世界だった角界…スネ傷ある相撲協会幹部らで決別できるのか?

2018-12-17 | 相撲・野球・・・など

貴ノ岩にもブーメランした暴力問題 スネ傷ある相撲協会幹部らで決別できるのか?
渡辺勘郎2018.12.16 17:26週刊朝日
 去年10月の巡業中の暴行の引責で横綱・日馬富士が引退し、約1年後、あろうことか、そのときの被害者だった貴ノ岩が暴行の加害者となって引退した大相撲。悪い冗談を見ているようで、最も痛みを知るはずの者が、なぜ? と思うと同時に、だからこそ許されることではなく引退は当然の帰結、だと思う。
 ただ、どこか釈然としない部分もあるのだ。
「モノを手にして頭をたたいた日馬富士と、自分の手で額をたたいた貴ノ岩と、被害者のけがの程度が全然違いますからね。それが結果として共に“引退”という結末になり、前例となる訳で、それでいいの? と思います。暴力を肯定する訳ではありませんが、大相撲は相手の顔を引っぱたく攻撃を認めている競技で、それを職業にしている力士に対して厳しすぎないか、というか、土俵上での“張り手”も禁止にしないと現実的にはなくならないのでは、と思うんです」(ベテラン記者A)
「今回の貴ノ岩の暴行に最初に気付いて事情を聴いたという巡業部長の春日野親方は以前、弟子をゴルフの9番アイアンでたたいた人です(笑)。『自覚がない』『もってのほか』だと言っていた広報部長の芝田山親方は元弟子に、土俵外で一升瓶や木刀で兄弟子に殴られて失明したからと損害賠償請求された。裁判の結果、暴力が認定されて3200万円の支払いを命じられて控訴し、のちに示談が成立したものの内容は明かされていません。相撲協会の幹部にはそういう人たちが普通にいる訳で、偉そうなことを言えるのか?と思いますよ」(ベテラン記者B)
 そうなのだ。『無理偏に拳骨と書いて兄弟子と読む』という言葉がまだ当たり前だった頃の方々が今の協会幹部。そんな人たちが? と思ってしまうのである。
 私事ながら、彼らとほぼ同世代である筆者は東京の国技館の近所の中学校に通ったため、クラスには地方出身で相撲部屋に弟子入りして部屋から通ってくる同級生が何人もいて、彼らが兄弟子に殴られて顔を腫らしてやってくるのを当たり前の風景だと感じてしまうくらい、何度も目撃した。
 一方で、彼らが付き人としてついている兄弟子の関取が勝ち越すと小遣いを一杯もらうそうで、急に羽振りが良くなり、下校途中で「何でも食え」と、ごちそうしてくれて、勝つことがカネになるプロという世界を垣間見た気がした。だから彼らは殴られても我慢しているのか、と妙に合点がいったものだ。その中学の先輩には全盛期の横綱だった故・北の湖さんがいて、彼の中学時代の蛮行が英雄伝説になっていたのも懐かしい。
 義務教育の空間で大相撲という異文化と遭遇し、彼らが生活する相撲部屋は私たちの暮らす一般社会とは全く別の物差しがある世界なのだと認識した私には、彼らが急に変われるとは思えないのである。
 しかし若い相撲担当記者には「そういうことを言っているお歴々は多いようですが、侮っていますよ。もう、変わらないといけない、ってことなんです。春日野さんや芝田山さんの過去のことを言い出したらキリがないでしょ。そういう人は他にもいるんだし(笑)。とにかく、暴力は一切ダメ、ってことなんです」と言われてしまった。
 そして「今回の貴ノ岩は、本人が辞めると言わなかったら1場所休場という処分だったろう、という声もありましたが、そんな軽いものでは済まなかったはず」という。日本相撲協会は日馬富士の暴行事件で立ち上げた第三者委員会の提言を受けて10月25日、八角理事長が暴力決別宣言をしたが、その前後で全然、空気が変わったと言われている。
「たとえビンタ一発でもNG、ってことです。そんな雰囲気の中で最初に明らかになった暴力が今回の貴ノ岩の件。しかも貴ノ岩は他の部屋のお相撲さんにも暴力を振るっていたという話があったので、19日の理事会を経て解雇、それも執行猶予なし、という処分を出さざるを得なかったと思います。だから協会としては、貴ノ岩が自分から『辞める』と言って欲しかったでしょうし、そうしなかったらクビで、退職金も出ないよ、と本人に伝えたんじゃないですか」(同前)
 それにしても、暴力が当たり前のような世界だった角界が、何で暴力決別という彼らにとって非常に難しそうな宣言をしたのか? 
公益法人の認定取り消しが怖いんです。だから必死です。できそうもない、とか言ってられなくて、そうしなきゃいけない、という危機感でしょう」(同前)
 ちなみに一番仲が良かった同級生のお相撲さんは私がまだ高校生だった頃、大した出世もしないうちに廃業したと、後で知った。
 あれだけ苦労していたのに、と思ったが理由は聞けなかった。彼は今、声高に暴力決別を語る角界をどんな思いで見ているのだろう。(渡辺勘郎)
※週刊朝日オンライン限定記事

 ◎上記事は[dot. ]からの転載・引用です *強調(=太字)は来栖
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