真相解明も弁護人の役割 池田小事件担当・戸谷氏が意義強調 京アニ放火 25日 判決
中日新聞 2024.01.23 夕刊
京都アニメーション放火殺人事件の判決が、25日に京都地裁で言い渡される。青葉真司被告(45)の弁護団は無罪などを求めているが、インターネットなどでは「なぜ凶悪事件の被告をべんごするのか」との批判も少なくない。2001年の大阪教育大付属池田小の校内児童殺傷事件を担当した戸谷茂樹弁護士は「何をどう考えて事件を起こしたのかを本人の口から引き出し、被告の立場から真相を解明するのが役割だ」と意義を語る。
京アニ公判が結審した昨年12月7日。主任弁護人の遠山大輔弁護士は強調した。「われわれの活動は理解されにくいが、真実に近づくため(け検察側とは)真逆の立場から意見を申し上げる」
弁護側は犯行当時、妄想性障害の影響で刑事責任能力が大きく減退していたと主張。現場のスタジオの構造によって想定以上に犠牲者が増えたことや絞首刑の残虐性も訴えた。一方で遺族らは、こうした主張について意見陳述などで「遺族の心情を軽視している」と非難していた。
他の凶悪事件でも、弁護人が批判を浴びるケースがある。池田小事件で宅間守元死刑囚=04年執行=を弁護した戸谷弁護士も当時、法定を出たところで遺族の関係者とみられる人から「あぜあんなやつを弁護するんだ」と言われた経験を持つ。
宅間元死刑囚は現行犯逮捕されており、冤罪の可能性は極めて低い中、戸谷弁護士は「贖罪の弁を引き出すことを目標にしていた。さらに、なぜ宅間のような人間が出てきてしまったのか、世間に考えてほしかった」と振り返る。
宅間死刑囚は統合失調症の診断を受けていたため、心神喪失などで刑罰を科されなかった人を裁判官と医師の判断で入院や通院させる「心神喪失者等医療観察法」の施行にもつながった。
「誰でも少しのきっかけで人生の歯車が狂い、犯罪を起こしてしまう可能性がある」と訴えた京アニ事件の遠山弁護士。戸谷弁護士は「京アニ事件を通じ、二度と起きない世の中にするためには何が必要なのか考えるきっかけになってほしい」と思いを代弁した。
◎上記事は[中日新聞]からの書き写し