2016.2.8 07:00更新
【産経抄】北のミサイルは沖縄を覚醒させるか 2月8日
「泰平の眠りを覚ます上喜撰(じょうきせん) たつた四杯で夜も眠れず」。幕末に詠まれた狂歌は、日本史の教科書にも載っている。「上喜撰」とは宇治の高級茶のこと。浦賀沖に現れた米国の蒸気船に掛けている。つまり4隻の黒船来航だけで、慌てふためく幕府を皮肉ったものだ。
▼平成10年8月31日に、北朝鮮が発射したテポドン1号もまた、日本人の「泰平の眠り」を確実に覚ました。実はその10日前に、小紙は「北朝鮮が日本海に向けて中距離弾道ミサイルの発射準備」と報じている。各紙はほとんど無視していたが、翌年に新聞協会賞を受賞する記事は正しかった。
▼いや正確には、日本海どころか日本列島を飛び越えて、太平洋に着弾していた。北朝鮮が、日本全土を射程におさめるミサイル開発に成功する。衝撃の事実もさることながら、発射から発表まで半日も要した、政府の慌てぶりにも驚かされた。
▼テポドンは、日本人が北朝鮮への甘い幻想を捨て去り、安全保障問題を真剣に考えるきっかけになったといえる。北朝鮮は昨日、またぞろ人工衛星と称して、長距離弾道ミサイル発射を強行した。自衛隊は、迎撃ミサイルを含めた万全の態勢で待ち構えていた。18年前とは、隔世の感がある。
▼もっとも、今回の飛行ルートに近い沖縄の人たちの不安は、大きかっただろう。幸い混乱や被害はなかったものの、翁長雄志知事は、「心臓が凍る思いだ」と述べている。北朝鮮が先日行った核実験に続くミサイル発射は、知事の泰平の眠りを覚まし、沖縄の置かれた危機的な状況をあらためて実感させたはずだ。
▼ならば、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の名護市辺野古移設について、政府との現実的な話し合いを一日も早く、始めるべきである。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
◇ 『日本人の誇り』藤原正彦著(文春新書) 2011年(平成23年)4月20日第1刷発行
(抜粋)
p63~
GHQすなわちアメリカはまず新憲法を作り上げました。GHQ民生局が集まり1週間の突貫工事で作ったのです。憲法の専門家はいませんでした。まず前文に「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と書きました。アメリカは他国の憲法を自分達が勝手に作るというハーグ条約違反、そしてそれ以上に恐るべき不遜、をひた隠しにしましたが、この文章を見ただけで英語からの翻訳であることは明らかです。「決意した」などという言葉が我が国の条文の末尾に来ることはまずありえないし、「われら」などという言葉が混入することもないからです。いかにも日本国民の自発的意志により作られたかのように見せるため、姑息な姑息な偽装を施したのですが、文体を見れば誰の文章かは明らかです。そのうえ、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」と美しく飾ってみても、残念なことに「国益のみを愛する諸国民の権謀術数と卑劣に警戒して」が、現実なのです。
ともあれこの前文により、日本国の生存は他国に委ねられたのです。
第9条の「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」は前文の具体的内容です。自国を自分で守らないのですから、どこかの国に安全保障を依頼する以外に国家が生き延びる術はありません。そして安全保障を依頼できる国としてアメリカ以外にないことは自明でした。すなわち、日本はこの前文と第9条の作られたこの時点でアメリカの属国となることがほぼ決定されたのです。この憲法が存在する限り真の独立国家ではありません。中国に「アメリカの妾国」と馬鹿にされても仕方ないのです。(~p64)
...............