事件記録 神戸家裁廃棄 事件記録は国民の財産 神戸連続児童殺傷事件 2022/10/24

2022-10-26 | 神戸 連続児童殺傷事件 酒鬼薔薇聖斗

<社説>神戸家裁廃棄 事件記録は国民の財産
 東京新聞2022年10月24日 

 一九九七年の神戸連続児童殺傷事件で逮捕され、少年審判を受けた当時十四歳の加害男性(40)の全ての事件記録を神戸家裁が廃棄していたことが判明した。最高裁の内規にも反するとみられ、司法への信頼を損なう不祥事だ。他の事件でも記録廃棄が明らかになっており、司法当局には廃棄の経緯など徹底した調査を求めたい。
 少年事件の捜査書類や裁判記録は、最高裁が内規で少年が二十六歳になるまでの保存を規定。さらに「史料または参考資料となるべき」、あるいは「全国的に社会の耳目を集めた」事件の記録は特別保存(永久保存)を義務付ける。
 加害者が「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」を名乗った事件は、犯行の異様さ、残虐さで社会に強い衝撃を与えた。加害者は医療少年院送致となったが、事件を機に少年の刑罰対象が「十四歳以上」に引き下げられた点を考えても、「特別保存」相当だろう。判決確定後三年で閲覧不可となるルールだが、資料自体が失われては、裁判所の許可を得て閲覧するといった道ももうない。
 事件の検証も同種事案防止の参考にしたりすることもかなわないわけで、同事件で殺害された男児の父親が「廃棄に憤りを感じる」と語ったのも当然だ。
 神戸家裁は不適切な措置だったことは認めつつ、廃棄は「担当者個人」の判断とし、調査には否定的だ。最高裁も「見解を控える」とするが、社会が参考にすべき資料は残すという内規の精神が無視されたのだから、速やかに調査を進め、再発防止策を講じるのが最高裁など司法当局の責務だろう。
 ガイドラインはあるが、「特別保存」の基準は必ずしも明確でない。同じ少年事件でも、愛知県で夫婦を殺傷したとして逮捕された当時十七歳の事件記録は、名古屋家裁が廃棄した。一方、山形県で中一男子がいじめの末に死亡した事件では、山形家裁が期限延長して記録を保管している。
 裁判資料の廃棄は少年事件に限らず起きている。二〇一九年に共同通信が、代表的な憲法判例集に載った百三十七件の裁判を調べたところ、百十八件(86%)で記録が廃棄されていた。重要な裁判も、「特別保存」の対象とみなされなかったらしい。
 重大事案の記録は、ある意味で国民の財産だ。保存の制度化やデジタル化の検討など、速やかな対応を求めたい。

 ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です


* 永久保存の少年事件 15件 最高裁、各家裁に確認 2022/10/25 
* 「少年A」の全記録、神戸家裁が廃棄 神戸連続児童殺傷事件


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