裁判員裁判3件目懲役15年. 重刑化=弁護士共通の懸念. 裁判員の牧師・・・・・

2009-09-05 | 裁判員裁判/被害者参加/強制起訴

裁判員裁判:性犯罪・初参加公判判決 会見の4人、複雑な胸中吐露 /青森
9月5日12時0分配信 毎日新聞
 ◇「頭の中事件が駆け巡った」 充実感あるとエールも
 性犯罪事件で全国初となる裁判員裁判は4日、青森地裁での審理が終わった。全国から注目されるなか、被害者女性のプライバシーに配慮しながら四つの事件を短期間で審理した6人の裁判員たち。4人が地裁での会見に応じ、安堵(あんど)の表情を浮かべながらも複雑な胸中を語った。【宍戸護、後藤豪、坂本太郎】
 ■判決前夜
 青森市の牧師、渋谷友光さん(45)は判決前日の3日夜、家族といつもの生活をしながら、裁判のためにできなかった仕事を片付けていた。だが「頭の中は事件が駆け巡っていた」という。
 今回、唯一の女性裁判員だった60代の主婦は、家に帰ると仕事が山ほどあり、事件のことは考えないようにしていたという。しかし「夜中に目が覚め、被害者の気持ちを考えさせられた」と話した。
 29歳の男性は前夜、家族と過ごしたが、1人になると事件のことが浮かび、夜遅くまで起きていた。44歳の男性は、普段通りに妻と子供とで過ごし、なるべく裁判を家に持ち込まないように努めた。しかしテレビをつけると裁判のニュースが流れ、思い出してしまったという。
 ■判決を終え
 一夜開け、評議を経て出た結論は求刑通り懲役15年。裁判員の主婦は判決への感想を話した後、思い出したように「追加で言っていいですか」と切り出し、「被告と同じ環境の人間がたくさんいて、道を外れた人には真の友人がいないように思う。友だちを作れない人はどうしたらいいのか。それが私たち大人の課題ではないかと思う」と提起した。
 44歳の男性は「正直、ほっとしている。人を裁くということにかなり緊張したが、裁判官がみんなでしゃべれる環境を作ってくれた」。29歳の男性は「緊張がまだ取れない。帰ってから整理したい」と疲れた表情で語った。
 渋谷さんは「判決を出すことがこれほど難しいとは。『チームが考えた内容が彼に届いてほしい』との願いで一生懸命やったつもりだ」と話した。渋谷さんは地裁会見後の別の会見で思いがこみ上げて涙した。
 ■次の裁判員へ
 裁判員制度はスタートしたばかりで、今後、各地で裁判が開かれる。これからなっていく裁判員に対し、44歳の男性は「最後までやれば充実感がある」と話し、主婦も「裁判長や裁判官が私たちの視線で話してくれたので緊張しなかった。緊張せずに臨めると思うので頑張ってほしい」とエールを送った。
 29歳の男性は「今は騒がれているが、定着するまで時間がかかる。義務だと考えて責任感を持ってやってくれれば、常識になっていくのでは」との見方を示した。渋谷さんは「本当に重い仕事で、ストレスや精神的な疲れもある。(でも)一つの刑を言い渡すことは社会に対して小さくないメッセージを送られる」と話した。
 ◇地検「試金石になると思う」
 裁判を終え、地検と田嶋靖広被告の弁護人が相次いで会見した。
 地検の吉松悟検事正は「小規模な検察庁にとって初の裁判員裁判で自信はなかったが、リハーサルを繰り返して臨んだ。試金石になると思う」と話した。事件数が多かったため、いかに分かりやすく的確に裁判員に示すかに気を遣ったといい、犯行状況を法廷で詳しく読み上げた点については「手探りだったができる限りプライバシーなどに配慮し、犯行の悪質さを立証しようとした」と意図を語った。公判を担当した田野尻猛主任検事は「裁判員からは内容を理解してポイントを突いた質問があった。2日間、役割をしっかり果たしていただいた」と話し、最後は笑顔だった。
 ◇弁護側「被告の利益では課題」
 竹本真紀・主任弁護士は「性犯罪被害に対して、法律家が考えるより重く処罰すべきだという国民の気持ちが反映された」とし、弁護人の主張を考慮した上での判決で、主張が伝わらなかったとは考えていないとした。また、「裁判員裁判は弁護活動をする上で、事件を深く理解して分かりやすくしようとの意識付けになった」と感想を述べた。
 ただ被告は十和田市に拘留され、接見のために青森市から往復140キロを行き来しなければならなかったといい、「時間も限られ、被告の利益を考えると課題がある。制度を定着させるなら、支部でも裁けるようにするなど検討が必要だ」と提言した。【三股智子、山中章子】
 ◇傍聴人、意見さまざま「市民感覚反映」「刑軽減難しい」
 裁判を傍聴した人からは、被害者の意見陳述がビデオリンク方式で行われたことや判決の重さについてさまざまな意見が出た。
 県弁護士会の猪原健弁護士は判決について、「被害者の気持ちを最大限、すくってあげた結果だ。市民感覚が反映されたと評価してもいいと思う」とコメント。ビデオリンク方式に対しては「被害者は、裁判員に顔を見られて声も法廷に流れた。被害者保護が徹底されていない。傍聴人のいない場所で期日外に話を聴くなどの方法も今後、検討されるべきだ」と批判した。
 一方、一橋大法科大学院2年の松本吉広さん(34)=東京都小平市=は、「もう少し弁護人の意見を勘案した結果が出るかと思った。被害者の話を直接聞いた裁判員には、刑を軽くする判断は難しかったのではないか」と率直な感想を述べた。ビデオリンク方式については「被害者の表情なども重要な資料で、合理性があると思う。被害者のプライバシー保護に関してはそれなりに配慮されていると感じた」と話した。【鈴木一也、三股智子】
 ◇性犯罪取り上げ、時期尚早と指摘--ウィメンズ青森
 傍聴してきた青森市の女性保護団体「ウィメンズネット青森」は4日、県庁で会見し、佐藤恵子副理事長=写真中央=らは「性犯罪を裁判員裁判の対象にするには早過ぎる」と裁判に疑問を呈した。
 会見には鹿内文子理事長ら3人が出席。佐藤副理事長は「現段階でのプライバシー保護は最大限、行われていたと思う」と一定の評価をしたが、「犯行状況の詳細な描写や再現写真は必要だったのか。裁判員の男女比のバランスも取れていない」と指摘し、ビデオリンク方式については「ビデオは有効だったが、詳細を語ることで被害者の心の傷がさらに深くなる恐れがある」と指摘した。佐藤副理事長はまた、今後の裁判のあり方について「起訴事実を争う場合、被害者の負担はさらに増す。裁判員裁判の対象から外すケースも考えていい」と述べた。【鈴木久美】9月5日朝刊
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〈来栖の独白〉
 「裁判員」参加というよりも「被害者」参加によって、被告人の防御権が著しく侵害され、重刑化が確実に進んでいる。法廷は報復の場ではなく、道を踏み外した人が自己と事件を見詰めなおし、更生の道を探る場所のはずだ。罪を犯し深い闇に閉ざされた人は、何の資格ももたない人(裁判員)に心のなかにズカズカ侵入して貰いたくはないだろう。被害者の心情は推し量っても、法壇の高みから見下ろされ侵入された被告人の心と尊厳に配慮した裁判員が何人いただろう。
 裁判員の一人渋谷氏は、牧師さんだという。とりあえず、カトリックなら聖職者に対し「科料を支払ってでも、裁判員は遠慮するよう」との勧告が司教団から出されているので、こういう(裁判員・会見)情景はありえない。〈この勧告に対し私は異論を送っているが〉
 牧師という肩書の渋谷氏の会見には失望した。氏名公表と写真撮影をOKなさったわけだから(そして肩書も)、それなりの福音的な(一味違う)何かをお話になる意欲かと期待したが、中日新聞を隅々まで見渡しても、一言もなかった。名古屋の弁護士のコメントのほうが余程か的を得ていた。所詮、得体の知れない「市民感覚」にすぎない。
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中日新聞2009/09/05朝刊より
「量刑重くなる傾向」(東海の弁護士)
 愛知県弁護士会の弁護士「一般論だが、裁判員裁判は量刑が比較的重くなるのではないか、というのは弁護士共通の懸念だ。職業裁判官には控訴されるのを避けたい意識がある。だから、弁護側の納得も得られるよう、検察の求刑よりも少し軽い量刑を言い渡す傾向にある。しかし、裁判員にはそうした意識はないからだ」
 岐阜県弁護士会の弁護士「裁判員裁判の全国1,2例目を見ると、いずれも被告と被害者は知り合いで、被告はいろんな経緯があって罪を犯したと訴えた。それでも、なかなか裁判員には被告側の事情は酌んでもらえなかった。今回の事件は被害者は被告とは何の関係もないケース。被害者に全く落ち度もない中、『被告が反省している』だけでは、とても裁判員が検察の求刑より軽くしようとは思えなかったのでは」

http://blog.goo.ne.jp/kanayame_47/e/378190f5ceb19263d550d23d846c22f4


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