能「自然居士」  狂言「萩大名」

2019-10-04 | 本/演劇…など

  「自然居士」

自然居士(じねんこじ)

あらすじ
  自然居士という若い説経師が、京都・雲居寺(うんごじ/うんこじ)に人を集めて、七日間の説法を行っていました。その最終日、一人の孤児の女の子(少年)が、美しい着物を携えて現れます。女児(少年)は持参した着物を供養の品として、亡き両親を弔ってほしいと、自然居士に申し出ます。その健気な心に、居士も聴衆も涙します。
 ところが、その女児(少年)は、東国から来た人商人にわが身を売って、着物を調達していました。女児(少年)は、追ってきた人商人に連れ去られてしまいます。そのことを知った自然居士は、女児(少年)を助けようと人商人一行を追いかけ、彼らが琵琶湖のほとりで舟を出そうとするところに間に合います。自然居士は舟を引き留めて乗り込み、女児(少年)を解放しないなら、自分も人商人と子どもについていくと決意を述べます。舟から下りなければ、殺してやろうかと言う人商人の脅しにも負けず、自然居士は、決して下りようとはしません。

みどころ
 自然居士が高座で説法を始める場面、亡き両親の供養を願い出た女児(少年)の優しい心を描く場面、人商人が女児(少年)を荒々しく連れ去る場面、自然居士が体を張って人商人と渡り合う場面、自然居士が人商人の要求のままに次々と舞を見せる場面……。さまざまに場面転換しながら、見せ場が連続していくエンターテインメント性の高さが特徴的です。
 そのなかで、身を捨てて人を救おうとする主人公、若き自然居士の頼もしい姿がくっきりと浮かび上がってきます。
 問答を楽しみ、謡を楽しみ、舞を楽しんだ後、正義は勝つという揺るぎない心情を得て、爽快な気持ちを覚えることができます。一貫して流れる温かい情感に浸りつつ、物語に入り込んで、じっくりとお楽しみください。

 ◎上記事は[the 能 com.]からの転載・引用です


  『萩大名(はぎだいみょう)』

萩大名(はぎだいみょう)

あらすじ
 京での長い訴訟を終えた遠国(おんごく)[地方]の大名が気晴らしに、太郎冠者に案内させ、清水寺に参詣しがてら茶屋で萩見物をすることにします。ところが茶屋では萩の花を詠み込んだ歌を作る慣例があると聞いて、歌を詠んだことがない大名はいやがります。そこで冠者は「七重八重九重とこそ思ひしに十重咲き出ずる萩の花かな」という歌を大名に教え、7、8、9などの数字を扇の骨で示し、「萩の花」では自分のすねはぎ[足のすね]を見せるなど、歌を思い出させるヒントを出すことにします。ところが大名は、茶屋の亭主にとんちんかんなことばかり言い、たまりかねた冠者は先に帰ってしまいます。残された大名は、歌の最後の七文字を思い出せず苦しまぎれに「太郎冠者の向こうずね」と口走り、恥をかきます。

鑑賞のポイント
 枝ぶりのよい庭の梅を見て「切って茶臼の引き木にしたらよい」などと失言を繰り返したり、せっかく太郎冠者がジェスチャーでヒントを出しても間違えたり……。本曲に登場する大名は滑稽な言動で笑いを誘いますが、決して愚かなわけではなく、武骨な田舎育ちで雅び(みやび)な世界に縁がないことを示します。狂言に登場する大名は、江戸時代の大名とは異なり、各地の地主くらいの階級なのです。曲中、大名が太郎冠者を「すねはぎばかり伸びおって」と言っていつも叱るという台詞がありますが、これは「図体ばかり大きくなって」くらいの意味の言葉です。日頃役立たずと叱りつけている相手に、今日は全面的に頼っているという立場の逆転も面白いところです。

 ◎上記事は[文化デジタルライブラリー]からの転載・引用です

https://www.youtube.com/watch?v=IxBUW2L8pcc 


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