弱腰対中外交に小沢一郎の嘆きが聞こえる

2010-10-01 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
弱腰対中外交に小沢一郎の嘆きが聞こえる
新恭 提供:永田町異聞
2010年09月27日10時41分

 今度こそ法律に従って、淡々と手続きを進めるのかと思ったら、結局、6年前と変わらず、「日中関係への配慮」とやらで腰砕けになった。
 1978年に中国漁船群が初めて来襲して以来、東シナ海大陸棚の石油資源をめぐって中国、台湾が領有権を主張するようになった尖閣諸島。
 9月7日、その最北端の「久場島」近海で操業していた中国漁船は、第十一管区海上保安本部の巡視船に発見されるや、逃走しながら巡視船に衝突を繰り返したという。
 中国漁船の乗組員15人のうち船長だけが送検され、那覇地検の取り調べを受けていたが、処分保留で釈放された。
 中国政府の猛抗議や、ハイテク製品の生産に欠かせないレアアースの禁輸など、外交圧力に屈するかたちとなった。
 小泉政権時代の2004年3月24日早朝、尖閣諸島の魚釣島に中国人活動家7人が不法上陸したときは、送検もされず二日ちょっとで強制送還となったが、このときも今回の仙谷官房長官と同様、親中派とされた福田官房長官の意向が強く働いたと言われたものだ。
 この件で「事なかれ主義を露呈した」と小泉政権を批判したのが小沢一郎だった。
 夕刊フジに連載された「小沢一郎の剛腕コラム」を抜粋、加筆修正して出版された「剛腕維新」という本がある。
 小沢は04年4月2日の記事でこう断言した。
 「僕が首相の立場なら、日本の主権を意図的に侵した活動家7人は法律にのっとって適正に処理する。そして、日本の領土である尖閣諸島に海上保安庁の警備基地などを設置して、国家主権の侵害を認めない」
 05年3月4日の記事では、北京で中国側とやり合ったときの模様を次のように記している。
 昨年9月末、僕は北京を訪問した。このとき、唐家セン国務委員(前外相)が尖閣諸島について「昭和53年に小平副首相が訪日した際、『問題が難しいので、一時棚上げにしても構わない』と語った」とエピソードを披露したので、僕は断固としてこう主張した。
 「このままだと(日中関係を悪化させた)サッカー・アジア杯どころの騒ぎじゃなくなる。中国は周辺海域で天然ガスを採掘するための施設建設に着手している。早急にケリをつけるべきだ」
 日中交流のための「長城の会」をつくり、毎年、数百人を連れて中国各地を訪問している小沢ならではの、明確な意思表示といえる。実際の行動を通じての相互信頼がなければ、言うべきこともいえないし、相手も真摯に聞かないだろう。
 小沢はこの記事の最後に「領土問題の解決のためには、相手のリアクションを十分予想しながら、毅然とした姿勢で事の是非を論ずる外交交渉が求められる。ただ、現在の官僚任せの自民党政府では難しい。激動する北東アジア外交は乗り切れない」と締めくくっている。
 「自民党政府」を「菅政権」と置き換えて、さぞかし今回のへっぴり腰を嘆いていることだろう。 小沢が野党民主党代表だったころの2007年8月8日、テロ特措法の延長をめぐって、シーファー駐日米大使が小沢に会うため民主党本部を訪れた。
 場所を民主党本部とし、一部始終をメディアに公開するという条件を米側に突きつけて、小沢はシーファーとの会談を受け入れた。
 シーファーが参院で多数を占める野党の最高実力者、小沢に求めたのは、インド洋で海上自衛隊が米艦船などに給油活動を継続するための、テロ特措法の延長である。
 大使は「秘密の情報が必要なら、どんな情報でも提供する準備がある」と甘言を弄して延長への同意を要請したが、小沢は「米国を中心とした活動は、直接的に国連安全保障理事会からオーソライズ(承認)されていない。活動には参加できない」と明確に拒否した。
 この会談について、「自民党はなぜ潰れないのか」という本のなかで、村上正邦、平野貞夫、筆坂秀世の三氏が、それぞれ以下のような感想を述べている。
 筆坂「私は率直に言って思い切った対応をするもんだと感心したんですが」
 平野「小沢はボールをアメリカ側に投げた。ほんとうは当時の安倍政権、自民党側に投げなきゃいかんけど、コミュニケーションができませんからね。安倍にしても、当時の小池百合子防衛相にしても、そんな能力がないですから」
 村上「自民党も自民党だ。いまさらなんで小沢に会いに行くんだ、と言ってアメリカ大使に文句も言えない。そして小沢は『国民の皆さん、見てくださいよ』と公開でやった。いままでこんなことないよ」
 要するに、日本の政治家のなかで、小沢でなければできないことをやったと、三人とも思ったのだろう。それほど、日本の外交は弱腰を続けてきたということでもある。
 05年5月27日の「剛腕維新」で、小沢は「米国、中国、韓国に見下される日本」と題して以下のように綴っている。
 以前から指摘しているように、中国は日本に対して高飛車で、軽く見下したような言動を繰り返している。
 反日暴力デモへの対応を筆頭に、瀋陽の日本総領事館での亡命者連行事件や原子力潜水艦の領海侵犯事件、尖閣諸島への中国人活動家上陸事件など、まさに「日本など眼中にない」といった態度だ。
 これは韓国も似たり寄ったりだが、実は(小泉)首相が「最大の同盟国」という米国も、BSE感染牛の確認からストップしている米国産牛肉の輸入再開を求める姿勢などは同じだ。
 ともかく、多くの国からまともに相手にされていないのが、悲しむべき日本の現状なのだ。これは日本および日本人が、自らの主張を持たず、勇気を持って責任を果たさず、問題から逃げてきたことが最大の原因だ。米国も中国も韓国も「しょせん、日本は意気地なしの臆病者だ。いざとなればすべて金で解決できる」とばかにして、見下しているのである。
 大久保秘書逮捕に端を発した、検察による小沢一郎追放捜査がなければ、昨年の歴史的政権交代の立役者である小沢は、民主党代表としてすんなり首相の座についていたはずである。
 小沢なら、諸外国との外交交渉をどのような戦略で進めただろうか。
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尖閣問題「譲ってはいけない」=民主・小沢氏
 民主党の小沢一郎元幹事長は30日、衆院第1議員会館の事務所で先の代表選で自らを支持した同党議員らと個別に面会した。尖閣諸島沖での海上保安庁巡視船と中国漁船の衝突事件に関連し、小沢氏は「中国が領土問題と言うのなら、譲ってはいけない」と述べ、菅政権に毅然とした対応を求めた。
 小沢氏はまた、菅政権について「心配している」と述べるとともに、「民主党政権を国民に信頼されるように育てなければならない」などとも語ったという。(時事通信2010/09/30-23:22)

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