【暮らし】
『脱貧困』掲げて運動 『ユニオン』の活用
2009年1月22日
誰でも一人でも入れる労働組合「ユニオン」が、脱貧困を掲げ活動範囲を広げている。「派遣切り」など非正規労働者の雇用は劣化の一途で、正社員も安泰とはいえない。最低限の生活を守るため、ユニオンを活用しよう。 (服部利崇)
「ユニオンがなかったら、野垂れ死んでいた」
警備会社を解雇されネットカフェ難民になった東京都葛飾区の男性(67)は昨年十二月、ユニオンの協力で、生活保護を受けられるようになり、アパートに入居できた。職探しはこれからだ。
二年前、工事現場で左足をくじき、労災適用を求めたが、拒否された。健康保険も未加入で満足に通院できず、足がしびれたまま。車で巡回する仕事しかできなくなり「安月給がさらに下がった」。社員寮の家賃が払えなくなり、滞納額も二十万円まで膨れた。
車での仕事もなくなった昨年十一月以降、退職・退寮を求められた。「仕事が見つかるまで」と拒み続けたが、十二月初旬、非正規ながら六年勤めた会社の寮から放り出された。
五日ほどネットカフェなどで夜露をしのぎ、行政の紹介で門をたたいたのが、同区内のユニオン「東京東部労働組合」。スタッフは男性に生活保護申請を勧め、区役所に電話で“根回し”してくれた。男性はスタッフの名刺を持って一人で区役所を訪れ、生活保護が認められた。男性は「ユニオンはアパートも一緒に探してくれた。地獄から天国へ来た感じだ」と感謝する。
男性のように、社会保険に未加入で、失業と同時に今日の暮らしに困る労働者は少なくない。同労組の須田光照書記次長は「従来は失業者の雇用を守る活動でよかったが、それ以前に、労働者の命や生活を守る運動が必要になった」と状況の悪化を嘆く。
ユニオンは解雇や未払い賃金などの労働問題で、雇用主と交渉するときも力を発揮する。
東京都町田市の吉田尚人さん(30)も突然の職場閉鎖通告に、自らユニオンを立ち上げて戦った一人だ。
アパレル会社の倉庫で、商品を店舗に発送するアルバイトをしていたが、昨年五月倉庫の閉鎖を告げられた。友人の紹介で知ったユニオン「フリーター全般労働組合」の指導を仰ぎ、自ら「アパレルユニオン」を設立。倉庫閉鎖は止められなかったものの、雇用継続は認めさせた。
吉田さんは「会社にはもともと組合がない。ユニオンでなければ、会社と対等な話し合いはできなかったはずだ」と振り返る。
ユニオンには正社員も加入できる。組合員に求められるのは「働く場所が違う仲間との協力」だ。派遣ユニオンの関根秀一郎書記長は「一人より五人、十人の方が、会社に対する交渉力が増す。企業という枠を超えて応援しあえるのがユニオンの特徴」と解説する。
ユニオンを利用するには、まず相談窓口に電話を。関根書記長は「メールでも受け付けているが、一般論の回答しかできない。こちらも質問して、相談者のニーズに即して回答したい」とする。
組合費とカンパで運営しているユニオンの弱点は財政基盤。非正規労働者が多く、高い組合費を徴収できないからだ。派遣ユニオンの組合費は月々二千円で、日雇い労働者に限り五百円。活動範囲が広がるなか、関根書記長は「お金に余裕のある正規組合の手助けがほしい」と語る。
◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です
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