「後期高齢者」厚労相はマニフェストを金科玉条にするのをやめてほしい

2009-12-03 | 政治
日経新聞 社説2 「後期高齢者」の廃止は的外れ(12/2)
 75歳以上を対象とする後期高齢者医療制度をやめ、新しい制度を検討する長妻昭厚生労働相主宰の会議が発足した。昨年4月に導入した制度の廃止は民主党の衆院選マニフェスト(政権公約)の目玉のひとつだ。
 日本人の寿命が長くなるなかで高齢者医療をどう支え、医療財政の持続性を高めるか。粘り強く議論する必要があるが、制度廃止ありきの会議は存在意義を疑わざるを得ない。
 議論は高齢者を中心とした感情的な批判を出発点にしており、この制度の根幹を見えにくくする恐れが強い。厚労相はマニフェストを金科玉条にするのをやめてほしい。
 社会保険庁の年金記録問題と後期高齢者医療制度は、民主党に政権党に就くきっかけをつくった。社保庁問題は当時の政権に弁解の余地がない。一方、高齢者医療問題は制度の不備というより、厚労省や地方自治体の説明不足が混乱を増幅させた。
 保険料を年金から天引きするのは2006年の法制定時から分かっていた。なのに同省は75歳以上の当事者に、分かりやすく知らせる手間を惜しんだ。年金の受取額をいきなり減らされれば誰だって憤る。その空気を巧みに読み、自公両党や厚労省幹部を責めたのが長妻氏らだ。
 自公政権は原則を踏み外すような保険料の軽減を決めたり、天引きしなくてもよいようにしたりと、防戦に追われた。当時、舛添要一厚労相が民放テレビの番組に出て、唐突に制度を変えるとしゃべったこともあった。感情的な反発を味方につけた民主党など野党の勝利だった。
 一連の騒動は制度の根幹を見えにくくした。それは、若い世代に比べ病気やけがをしやすくなる75歳以上の人への医療給付費を(1)国・自治体が出す税金(全体の約50%)(2)現役で働く世代が出す支援金(約40%)(3)高齢者自らが払う保険料(約10%)――の3財源で支えるしくみだ。
 「年齢で差別する制度」などと、野党時代の感情的な批判を盾に制度の根幹を崩そうとするのは、責任政党のすることではない。医療費負担の問題では、前期高齢者のために法外な持ち出しを迫られている年齢構成の若い健康保険組合が悲鳴を上げている。それらへの財源の手当てなど真っ先に解決すべき課題がある。
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