トヨタ・ショック世界に 東証、一時630円超安
2008年11月7日 16時21分
7日の東京株式市場は、トヨタ自動車が2009年3月期の業績見通しを大幅下方修正したことで実体経済悪化への不安感が拡大し、続落した。日経平均株価(225種)の下げ幅は一時630円を超え、8200円台まで下落した。
終値は、前日比316円14銭安の8583円00銭。全銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)も30・30ポイント安の879・00と下落した。
トヨタ株には売り注文が殺到し、値幅制限いっぱいのストップ安まで値を下げて3310円の売り気配のまま午前の取引を終了。午後の取引再開後、前日終値から約12%下げた水準で取引が成立した。トヨタは6日、来年3月期の営業利益予想を従来の見通しから1兆円引き下げ、前期比73%減に下方修正。市場の予想を超える修正幅に景気悪化懸念が一段と広がり、関連企業株や自動車株に悲観的な売りが集まった。
外国為替市場が円高に振れたことも機械や電機など輸出関連株を中心に幅広く売られる要因となった。午後は買い戻しの動きが強まり、急速に下げ幅を縮小した。市場では「“トヨタ・ショック”は来週以降も尾を引く可能性がある」(大手証券)との見方もある。(中日新聞)
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トヨタの大幅下方修正、体質改善の絶好機とも
(ロイター - 11月07日 15:13
11月7日、トヨタの大幅下方修正は、体質改善の絶好機との見方も出ている。写真は6日、会見したトヨタの木下副社長(2008年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)
[東京 7日 ロイター] トヨタ自動車<7203.T>の業績下方修正は大きな「ショック」となったが、同時に体質改善を進める絶好の機会だとの見方も出ている。
10─3月の半期の営業利益予想がわずか180億円という「衝撃」は、これまでの販売拡大で伸びきった組織をスリム化させ、調達などの見直しを積極的に進めることができるインパクトがあるという。株価は短期的な調整を余儀なくされる可能性が大きいが、中期的な成長力は依然高いとの見方も少なくない。
<大きなショックは同時にチャンス>
09年3月期の営業利益予想が「1兆円を下回る」との事前観測報道はあったものの、実際は従来予想を「1兆円下回る」6000億円。その衝撃は「経験したことがないレベルのネガティブ・サプライズ」(日興シティグループ証券)、「『超』がつくほどのネガティブ・サプライズ」(野村証券)──とアナリストを動揺させるほど。株価は業績の下方修正観測もあり前日6日から下げていたが、7日も売りが止まらず一時ストップ安となる前日比500円安の3310円まで下落した。デンソー<6902.T>やアイシン精機<7259.T>など系列部品メーカーも一時ストップ安まで売られた。
下方修正の主要因は北米販売の減少と円高だが、下期の営業利益予想を180億円と大きく引き下げた裏にはトヨタの強烈なメッセージがあるとの声がアナリストからは聞かれる。
ゴールドマンサックス証券の自動車担当アナリストである湯澤康太氏は7日付リポートのなかで「下期ブレークイーブンの会社予想はトヨタ社内に対する危機意識の警鐘であるとともに、系列部品メーカー、競合メーカー、調達先など様々なステークホルダー(利害関係者)に対する強烈なメッセージ」と指摘。現在は「緊急事態」であるとして、国内外の生産体制の見直しや設備投資の大幅な抑制、調達先への価格要求の増大などに取り組む可能性が大きいという。「中長期的視点に立てば(販売拡大で)兵站(組織)が伸び切った社内外の体質改善を進め、次の競争の源泉を確立する重要な時期に差しかかっている」と湯澤氏は述べている。
円高は短期的には輸出企業にマイナス要因だが、長期的に見れば体質改善を促しプラスとなるとの見方は多い。市場では「世界有数のブランド力が消えるわけではないし、ハイブリッド車など省エネ技術も有しており中期的な成長力は依然高い。体質改善が進めば逆にチャンスとなる」(準大手証券エクイティ部)との声も出ている。
<財務体質の強さがあらためてクローズアップ>
トヨタは1円の変動で営業損益にドルで年間400億円、ユーロで60億円の影響を受ける。トヨタは通期の為替前提をドル/円を105円から103円に、ユーロ/円を161円から146円に修正した。このため1ドル100円、ユーロで130円を割り込むような現在の為替相場が続けばさらなる業績下方修正の可能性もあるが、現時点では配当方針に変更はない。約1兆9000億円の現預金などを有する財務体質の強さがあればこその芸当だ。
また「今期2000億円・3000万株を上限にした自社株買いの予算の大半がまだ残っている。下期に実施されるわけであり、ある程度の株価の下支え要因になる」(クレディスイス証券の遠藤功治アナリスト)との指摘もあり、財務体質の強さが業績悪化局面であらためて注目されている。
今回の「トヨタ・ショック」に対する見方は総じてネガティブな見方が多いものの、モルガンスタンレー証券の平形紀明アナリストのように「大幅下方修正は2010年3月期の収益回復への備え」とポジティブな見方をするアナリストもいる。「円高の影響を在庫調整の一巡や固定費、販管費の削減、原価低減効果で補い営業利益は増益を確保する可能性が大きい」との見方だ。
円高は、原油価格や輸入資材価格の低下となり、これまで苦しめられてきた原材料の価格高騰のマイナス要因が減少する可能性があることも大きい。
きょう米国で自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターが発表する第3・四半期決算が発表されることは懸念要因だが、半面で「日本車の相対的な優位性は続く」(国内証券情報担当者)との声もある。
「トヨタ・ショック」に揺れた7日の東京株式市場は売り一巡後、方向感に乏しく上下に振れる展開になった。ある外資系証券ストラテジストは「トヨタ・ショックで09年3月期下期の業績が予想以上に悪くなりそうだとの見方は強まったが、2010年3月期の見方は大きく分かれている。為替動向や金融問題の進展、マクロ経済指標を見極めながら株価位置を探ることになりそうだ」と述べる。相場を占う上で輸出株の代表銘柄であるトヨタの株価動向にこれまで以上に注目が集まっている。 (ロイター日本語ニュース 伊賀 大記記者 編集 橋本浩)