死刑絶対肯定論―無期懲役囚の主張[著]美達大和 [掲載]週刊朝日2010年10月8日号
[評者]青木るえか■死刑の話なのに“軽い”という不思議
日本犯罪史上もっとも危険な男は「警官から奪った拳銃で人を殺しまくった勝田清孝」だろう。1人殺すたびに毎回深く反省しつつまばたきをするように再び人を殺してしまう、というんだからとんでもない。ぜったいにシャバに出してはいけない男だ、と思った。では、うまくそういう人物を逮捕できて、絶対にシャバに出さない、となった場合、どのようにするか。2つの選択肢がある。殺してしまう。一生閉じこめとく。
一生閉じこめるのは無期懲役となるが、現在の日本ではそれは「死ぬまで絶対刑務所の中」を意味しない、のはよく言われることで、「仮釈放で、30年ぐらいたつとあの凶悪犯があなたのおそばに!」と、ある種の人々が煽る。そして「獄中で無実を叫んで何十年の死刑囚」とかもいる。袴田事件なんて最近映画になったし、菅家さんの事件も記憶に新しい。あなたもいつ無実の罪で処刑されるかもしれない、とある種の人々が耳元でささやく。
どっちにも問題を言い立てる人がいるわけだ。で、この本は「自身が無期懲役囚」である著者が「いかに刑務所の中の凶悪犯人が無期でも反省してないか」を説き、だから死刑のほうがいい、と主張している。今までにない視点からの主張だ。とにかく犯罪者は死刑を逃れるためならどんなウソでも言うし死刑を逃れたら実にテキトーに暮らしているそうだ。こういう連中には、死刑判決によって死と向き合わせなければ反省なんかしない、と。まあ、この著者がウソを言う必要もなく、実情はそんなもんなんだろうと思う。不思議なのは、読んでいて重い気持ちに全然ならないところで、この「軽さ」と「(ある種の)ノンキさ」はなんなんだろうという、そっちの興味がすごくふくれてきて、読んでいて死刑のことがどうでもいい気分(=死刑でもいいよ)になってくる。
一つ勉強になったのは、欧米だって「終身刑」はほとんど「ほんとの終身刑じゃない」という話。なんだ、欧米だってそうなのか。
・死刑絶対肯定論―無期懲役囚の主張 (新潮新書)
著者:美達 大和
出版社:新潮社 価格:¥735
◎上記事は[ dot. ]からの転載・引用です
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〈来栖の独白 2010.10.7 〉
いやはや、上記「書評」……このような拙劣な文章が果たして「書評」と云えるものか疑問だが(綴り方の基本もご存じない)……を一読、びっくりしてしまった。
実は今週10月5日、拙ホームページ『勝田清孝と来栖宥子の世界』へ、ウィキペディアからのアクセスが急に膨らんで不審に思っていた。通常は、死刑関連サイトや事件、ニュースからのアクセスである。上記「書評」に接し、ウィキペディアからという現象の所以が理解できた。
それにしても、お粗末な文章である。言葉を選んでもおらず、モノを書こうというときに、対象を調べることすらしていない。
警官から奪った拳銃で人を“殺しまくった”というが、拳銃による殺害は1件、1名である。1人に重傷を負わせている。
モノを書くに当たって、調べることは不可欠の作業であり、その上で、無闇と誇張した表現は避けるべきだ。この評者は、ポピュリズムの最中にいる人と思われる。悪戯に人心を煽ることは慎みたい。
◇ 「22名殺害」という誤った流布 勝田事件 被害死者数について
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◇ 美達大和著『死刑絶対肯定論―無期懲役囚の主張』に思う。 2010-07-25
>噂では、実在しない無期懲役囚と言われています。わかりませんが。
>本当に無期囚なのかということまで疑われてしまう、信用ならない本
私は立ち読みしただけですので何も言えないのですが、私の知る無期懲役者のS君とはまるきり違う人間観なので戸惑いましたし、「この本に書かれているような受刑者ばかりではないよ」と言いたい気分です。
>本に影響されてか、書評も、軽いノリ・・・
>重い問題を軽くして喜んでいる
重いテーマを、面白半分、エンタメにしてしまってはいけないと思います。先ごろ無罪判決の出た村木さんのことも、メディアは、安っぽいエンタメ、美談みたいにしてしまったと思います。