悔しさ「今も変わらず」 小1女児殺害4年で父
2009年11月20日 06時10分
広島市で小学1年木下あいりちゃん=当時(7)=が殺害された事件から22日で4年。父建一さん(42)が20日までに共同通信の取材に応じ「悔しさや切なさは変わらない。事件をふと思い出すと今でも悲しく、つらくなる」と胸中を語った。
同年代の子どもたちを見かけるたび「5年生か。あいりもあれくらいの背丈になって、大人っぽくなっていたのかな」との思いが込み上げる。
少林寺拳法の教室に喜んで通っていたあいりちゃんだが、正式な入会願書を提出する日に事件が発生。現在は小学3年の弟(8)が7級に進み、練習に励む。「技のレベルはあいりを超えたかもしれない。本来ならきょうだい一緒にやっていたのにと思うと…」と無念さをにじませる。
ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(37)に対する10月の最高裁判決は、広島高裁への審理差し戻しだった。「死刑の可能性が低くなったのではないか。次で終わると、もう後がない」と不安を口にした。2006年に始まった裁判も3年半。「ここまで長引いたのは、極刑を望み続けた自分にも責任があるのでは」と悩むが、「検察側がもし無期懲役を求刑していれば、一審で終わってしまっていたはず」と思い直した。(共同)
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〈来栖のつぶやき〉
被害者のお父様の苦しみ、極刑を望む心と「被告の命にも意味があるのではないか」とのあわいで揺れる苦しみがいたましくてならない。最高裁は裁判員制度を成功させることに躍起になっている。これに逆らう判例(精密司法を求めて差し戻し・・・)を出したものは「厳罰」に処す。
被害者遺族の苦しみなど、官僚司法からは遙かに遠い。
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光市母子殺害事件(差戻し)・広島女児殺害事件控訴審裁判長だった楢崎康英氏が山口家裁所長・・・
山口家裁:楢崎所長、着任会見 「市民に利用しやすく」 /山口
10月14日14時1分配信 毎日新聞
山口家庭裁判所(山口市)に今月1日着任した楢崎康英所長(60)が13日、着任会見を行った。山口での勤務は16年ぶり2回目で、「市民に利用しやすい裁判所になるよう努める。山口での生活も楽しみたい」と語った。
広島県出身。大阪家裁などで主に少年事件を担当し、88年から93年まで山口地家裁宇部支部で支部長などを歴任。06年から広島高裁判事部総括となり、光市母子殺害事件にもかかわった。
市民の司法参加が進む中、「市民への対応が裁判所のイメージを作る。適正で迅速な裁判と司法サービスを提供したい」と話す。趣味は音楽鑑賞と読書。「一の坂川や瑠璃光寺をまた見られてうれしい」と笑顔を見せた。【藤沢美由紀】
〔山口版〕
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〈来栖のつぶやき〉2009/10/14
家裁とは・・・。しかも、広島家裁ではなく、(広島管区)山口とは。何があったのだろう。60歳ということだが、定年は65歳だ。光市事件差し戻し控訴審・広島女児殺害事件控訴審判決では、メディア・世論に評価されたと私は受け止めていたが。
〈来栖のつぶやき〉追記 2009/10/16Fri.
本日、広島女児殺害事件上告審判断があった。高裁へ差し戻しということである。
楢崎さんには、相手が悪かった。裁判員参加という不合理な制度を推進する大本山に立てついたような格好になった。楢崎さんは精密司法(1審へ差戻し)に「死刑」を展望していたのかもしれないが、最高裁の拙速志向(核心司法)とは相容れなかった、ということか。核心司法によって本件のように、今後いのちを得ること(死刑回避)になるのならいいけれど。
今回の上告審判決報道に際付随して、おやっと感じたことがあった。2審判決をあれほど自信もって論評(多くは好評)した評論家さんたちだったが---但し、肝心の判決内容、被告人にもたらすであろう不利益(死刑)については、欠落した論評---今回は私の見たところ黙して語っておられないようだ。最高裁の権威、無謬性をひたすら信じ安心しておられるのか。こんなことでは司法改革などできはしない。
昨年だったか、東海テレビ「裁判長のお弁当」に登場した元裁判官下澤悦夫さん。若い頃、「青年法律家協会」に所属し、退会・退官勧告に従わなかったので、地方の家裁・簡裁を転々とさせられ、生涯一裁判官で終わった。「そりゃぁ、上に行きたいって気持はありましたよ。だけど・・・」と語っていた。ご自分の信念を曲げてまで・・、ということだろう。清廉な人格でいらっしゃると感服した。
楢崎さんの場合、高裁刑事部で裁判長まで務めた人である。所長ポストであれ、家裁への異動はどうなのか・・・。存分に腕が振るえるとは思えない。簡裁であっても、同様である。
「裁判官の独立」につき憲法は“良心に従い独立してその職権を行い、日本国憲法及び法律にのみ拘束される”と、謳っている。が、新藤宗幸著『司法官僚』〔裁判所の権力者たち〕(岩波新書)の中に、次のような文脈があった。
“司法官僚は全国の判決や訴訟指揮の情報を集める。それをもとに行使される人事権は全国3500名の裁判官たちに絶大な影響力をもつ。10年ごとの再任の有無、昇級、転勤を司法官僚が決める。事務総局が召集する「合同」と呼ばれる研究会も下級審の裁判内容を遠隔操作する結果を生む。
裁判とは社会で周縁においやられた人々の、尊厳回復の最後の機会である。必死の訴えをする人々に遭遇したとき、裁判官は全人格的判断をもって救済に当たるべきだ。しかし、人々の目にふれぬところで、裁判官の内面までゆがめ、その存在理由をあやうくしているシステムがあるのだとすれば大問題である。
政権交代とは闇を打破る時代のことであろう。本書の提言にかかる裁判所情報公開法などによって司法の実態にも光が当てられ、真の改革が着手されるべきだ。”
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産経ニュース2009.10.16 18:12
【広島女児殺害】高裁で改めて量刑など判断 最高裁が差し戻し
広島市で平成17年、小学1年の木下あいりちゃん=当時(7)=を殺害したとして、殺人や強制わいせつ致死などの罪に問われたペルー人、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(37)の上告審判決で、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)は16日、2審広島高裁判決を破棄、審理を高裁に差し戻した。差し戻し控訴審の場で、改めて量刑などが審理される。
1審広島地裁は検察側の死刑求刑に対し、無期懲役を選択。高裁は犯行場所が特定できる可能性のある被告の供述調書を地裁が証拠として調べなかった点などについて、「審理が不十分で、裁判の手続きに法令違反がある」として、地裁に審理を差し戻したため、弁護側が上告していた。
また、地裁が裁判員裁判を想定し、争点と証拠を絞り込んで速やかな審理を目指す「公判前整理手続き」を取り入れて、集中審理を実施したことについても、高裁は「裁判の予定を優先するあまり、争点をはっきりさせないまま公判前整理手続きを終えたことは、その目的に反する」などと非難していた。
同小法廷は「公判前整理手続きなどが導入されて以来、合理的期間内に充実した審理を終えることがこれまで以上に強く求められる」と述べた。その上で、当事者が立証しようとしていない点まで、説明を求めて立証を促す義務はないなどとして、1審の手続きは適法と結論づけた。