ともかくもあなた任せのとしの暮 2022年12月31日「中日春秋」

2023-01-03 | 文化 思索

中日春秋
 2022年12月31日 土曜日
 <ともかくもあなた任せのとしの暮(くれ)>。江戸期の俳人小林一茶が年の瀬に詠んだ。故郷の信州・柏原で暮らし五十六歳になった年で、一歳の長女さとを天然痘で六月に亡くしていた
▼「あなた任せ」は他力本願を旨とする浄土真宗の言葉で阿弥陀(あみだ)の力にすがり、おまかせするとの意。つらさを抱えつつ、仏の慈悲で生きようとする悲哀がにじむ句である
▼二〇二二年が暮れる。思い返せば、多くの子が天に召された
▼認定こども園の園児が通園バスに取り残され、熱中症で亡くなった。親が幼い子を車に残したままにし、死なせてしまったこともあった。遠くウクライナでは、戦争で多くの子どもが犠牲に。防空壕(ごう)の中で「死にたくない」と泣きじゃくる子どもの映像もあった。一茶ならずとも、仏や神にすがりたくなることは多かった
▼若くして江戸に出た一茶は貧しくとも俳諧に生き、諸国も遍歴した。父の死後、遺産相続で継母らと長く争ったことはよく知られる。その問題を片付けて郷里に住み、遅まきながら所帯を持って子どもにも恵まれた五十代半ばのころは、一応の安定を得た時期とされる。さとが元気なころの正月の句が有名な「目出度(めでた)さもちう位也(くらいなり)おらが春」
▼解釈には諸説あるが、手元の解説書に従い「ちう位」を上中下の中位と解せば、ほどほどの幸せに安らぐ心境であろうか。それが続く新年であればと思う。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し


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