「天皇陛下、中国副主席と会見」小沢氏が要請…政治利用、批判強まる

2009-12-12 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

特例会見、小沢氏が要請…「政治利用」批判強まる
 鳩山首相が14日に来日する中国の習近平国家副主席と天皇陛下との会見を特例的に実現するよう指示していた問題は、民主党の小沢幹事長が首相側に会見実現を要請していたことが明らかになり、「天皇陛下の政治利用だ」との批判が一層強まっている。
 政府関係者によると、小沢氏は9日、国会内で崔天凱・駐日中国大使と会談し、「何とかして習副主席が天皇陛下と会えるようにしてほしい」と要請を受けた。その後、平野官房長官に電話し、崔大使の要請を伝え、「しっかりやってほしい」と述べたという。これを受け、平野長官は10日夕、宮内庁の羽毛田信吾長官に電話し、「これは政府官邸としてのお願いだ」と強い口調で会見を実現するよう指示した。
 小沢氏は早くから首相側に中国の意向を伝えていたという。4日夜には首相公邸で首相と会談している。小沢氏としては、9日の時点になっても調整が進んでいないことを知って驚き、平野氏に直接働きかけたようだ。
 中国側が天皇との会見希望を小沢氏らに伝えたのは11月後半。11月20日には、中国の楊潔(ようけつ)チ外相が鳩山首相と首相官邸で会談したほか、小沢氏とも国会内で会い、習副主席の来日への協力を要請している。(「チ」は竹かんむりに「褫」のつくり)
 しかし、中国政府の会見申請が11月26日だったため、宮内庁は「1か月前までの申請」との慣行に従い断った。平野長官が羽毛田長官に電話で特例扱いを要請したのは12月7日で、平野長官もいったんは実現をあきらめていたものと見られる。
 今回の鳩山政権の対応について、野党から強い批判の声が上がっている。
 自民党の石破政調会長は12日、名古屋市内で記者団に「大国にも小国にも同じように接するというのが日本の皇室のあり方だった。首相、官房長官、小沢氏の意思が働いたとすれば、正しいやり方ではない。外交は皇室を利用しながらやるものではない」と語った。
 政治と天皇の関係については、10月に岡田外相が、国会開会式での天皇陛下のお言葉について「陛下の思いが少しは入ったお言葉をいただく工夫ができないか」と発言し、鳩山首相が「コメントすべきではなかった」とたしなめた経緯がある。再び問題視される状況が浮上したことで鳩山政権の「体質」を問題視する声も出ている。
 石破氏は「皇室を政治的に使うという越えてはいけない一線に対する警戒感に欠けている」と批判した。
 自民党中堅議員も「皇室への感覚が軽すぎる。宮内庁長官が懸念を表明したのはよほどのことだ」と指摘した。安倍元首相は12日付のメールマガジンで「(訪中した)小沢氏が胡錦濤主席から異例の歓待を受けるため、陛下を政治利用したことになる」と批判した。
 与党内も複雑な反応だ。
 民主党参院幹部は「内閣が決めて、宮内庁が会見を設定するだけの話で、何の問題もない。陛下の政治利用にはあたらない」と強調。社民党幹部も「日中関係がより深まるとの判断があったのだろう」と理解を示す。
 一方で、「小沢氏の仲介も間違った政治主導の印象を与え、イメージは良くない」(国民新党中堅)との声も出ている。
 ソウル訪問中の小沢氏は12日、この問題に関して同行記者団の取材を拒否した。(2009年12月12日20時20分  読売新聞)
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羽毛田宮内庁長官の説明要旨…「特例会見」
 宮内庁の羽毛田信吾長官が11日に行った説明要旨は以下の通り(日付は羽毛田長官による)。

 陛下の外国賓客との会見については、希望日が迫って願い出が来ると、陛下の日程調整に支障を来し、繁忙を極める両陛下に想定外のご負担をおかけするため、1か月以上前に外務省から願い出をいただくルールを設けてきた。特に平成16年(2004年)以降はその前年に前立腺がんの摘出手術があり、ご負担軽減、ご高齢ということも考え、厳格に守ってもらいたいと徹底をしてきた経緯がある。
 しかし、中国副主席との会見の申し出が1か月を切った段階(11月26日)で外務省から宮内庁に内々にあり、ルールに照らして(翌27日に)応じかねるとの回答をした。外務省も了承していたのだが、その後(12月7日に)官房長官から、ルールは理解するが日中関係の重要性にかんがみ、内閣としてぜひ会見をお願いするという話があった。私としては、1か月というのは事務的に作ったルールにすぎないとの考え方もあるが、陛下をお守りするため政府内で重視されてきたルールであり、国の大小や政治的に重要な国であるかどうかにかかわらず尊重してほしいと申し上げた。
 しかし再度、総理の指示ということで(12月10日に)話があり、大変、異例ではあるが、曲げて陛下に会見をお願いした。
 陛下の国際親善の活動は、政府の行う外交とは次元を異にしている。相手国の政治的重要性とか、国の大小とか、関係なく行われてきた。憲法下における天皇陛下の務めや役割という基本的なあり方にもかかわる。今回のことはルールの理念と整合性が取れないし、残念なことをせざるを得なくなった。陛下を政治懸案の打開役にとなったら、今の憲法下での陛下のなさりようと大きく狂うことになる。
 こうした懸念を伝えたが、聞き届けられなかったのは甚だ残念。もう二度とこういうことがあってほしくない。
 (「天皇の政治利用に当たる懸念があるということか」との記者の質問に)大きく言えばそういうことだ。政治利用といったことを超えたところで外国とおつきあいするのが陛下の国際親善のありようで、それを政治的に重要だとか政治的懸案があるからだとかということでしたら、天皇陛下の役割について非常に懸念する状況になるのではないか。(2009年12月12日21時00分  読売新聞)
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天皇陛下、中国副主席と特例で会見 首相が実現指示
 政府は11日、中国の習近平国家副主席が14日から来日して鳩山由紀夫首相と会談するとともに、天皇陛下と会見すると発表した。15日を予定している。外国要人と天皇陛下との会見は1カ月前までに外務省が宮内庁に要請するのをルールとしており、今回は通常の手続きを経ない特例となった。宮内庁の羽毛田信吾長官は「たいへん異例のことだが、まげて陛下にお願いした。こういったことは二度とあってほしくない」と述べた。
 中国側が会見を打診したのは先月26日だったため、外務省はいったん断った。ただ中国側は胡錦濤国家主席が1998年の副主席時代に陛下と会見した例を引き合いに強く要望した。
 日中間の話し合いは平行線をたどり、鳩山首相が平野博文官房長官に「非常に大事な話だ」と会見の実現を指示した。首相は記者団に「諸外国と日本の関係を好転させるための話だから、政治利用という言葉は当たらない」と語った。(日経新聞2009/12/12)
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新S 「くらべる一面」編集局から
朝日新聞
 宮内庁トップが、首相の指示に対して公然と批判しました。来日予定の中国の習近平国家副主席が15日に天皇と会見することになり、経緯について羽毛田信吾長官が報道陣に説明。陛下と外国要人との会見設定に関するルールに反して、官邸側が実現を迫ったことを明らかにして「二度とあってほしくない」と訴えました。「天皇の政治利用」を防ぐ慣例を鳩山内閣が破った異常事態の背景、影響などを手厚く報じました。(圭)
日本経済新聞
 天皇陛下の会見がいつ、どのように、どんな基準でセットされたのか、明らかにされることはめったにありません。相手が外国要人となると、なおさら外交儀礼や前例が考慮されるのは当然でしょう。14日から来日する中国の習近平国家副主席との会見は、経緯が異例だったこともあって、詳細が明らかにされました。本格的な政権交代によって誕生した鳩山内閣は、日米安保の密約、予算編成の仕組みなど、多くの「パンドラの箱」を開けようとしています。今回は宮内庁によって開けられたのかもしれません。(M)
読売新聞
 大勢の国会議員を引き連れて訪中した民主党の小沢幹事長は得意気でした。そこにおごりを感じたのは私だけでしょうか。鳩山首相は宮内庁に対し、14日に来日する習近平・中国副主席と天皇陛下との会見を要請しました。高齢の陛下を気遣う宮内庁は1か月前までの申請をルールにしており、ごり押しした政府に、同庁長官は「政治利用」と懸念を表明しました。これも政治主導なのですか。おごりの心はなかったと言えますか。(三沢)
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小沢訪中団 握手とツーショットだけでは(12月12日付・読売社説)
 民主党国会議員が大挙して中国を訪問し、胡錦濤・国家主席と次々に握手をして、ツーショット写真に納まる。そんな光景に首をかしげた人は少なくないだろう。
 小沢幹事長を名誉団長とする訪中団の参加者は、先の衆院選で当選した新人をはじめ、衆参国会議員143人。各議員の支持者らを含めると600人を超えた。
 今回の訪中は、小沢氏が自民党時代から進めてきた日中交流「長城計画」の一環だ。
 同時に、民主党と中国共産党との定期協議の場「交流協議機構」の政治家交流も兼ねている。これは、小沢氏が党代表を務めていた2006年7月、胡主席との会談で提案し、設置が決まった。
 日中の政治家同士のパイプが細くなる中で、政党間交流を活発化させる意義は大きい。
 しかし、新政権にとって初の予算編成が本格化しているこの時期に、これほど多数の与党・民主党議員が一斉に訪問する必要性はあったのか。
 小沢氏は10日、胡主席と会談した。しかし、日中2国間の懸案は素通りしたという。
 中国製の冷凍ギョーザ事件は依然、未解決のままだ。東シナ海のガス田開発問題で、中国側は、日本との条約交渉を拒むとともに、「白樺」ガス田では一方的に掘削開始の態勢を整えつつある。
 読売新聞などが11月に実施した日中共同世論調査によると、日本では中国を「信頼できない」と答えた人が7割に上った。これらの問題が中国への信頼感に大きな影を落としているのは確実だ。
 小沢氏は、胡主席との会談の中で、「政府間では、どうしても形式的な議論に陥る。党と党のレベルでは、あらゆる問題を話し合えるように」と語っている。
 小沢氏には早速、自ら実践し、胡主席と率直な意見交換をしてほしかった。ただ、11日の梁光烈国防相との会談では、中国の軍事力増強に懸念を示した。こんな忌憚(きたん)のない対話が必要だろう。
 鳩山内閣は、普天間問題の混乱で日米首脳会談も実現できず、日米関係は危機的な状況にある。
 心配なのは、小沢訪中団が、民主党政権の「対中傾斜」を内外に印象づけ、対米関係に悪影響をもたらしかねないことだ。
 むろん、日中の友好関係は大切だ。だが、両国間には友好だけでは解決できない複雑な問題が多数存在する。政党間交流は、その点を踏まえ、もっと少人数の相互訪問で実務的に進めるべきだ。(2009年12月12日01時14分  読売新聞)

天皇の天皇制(天皇制利用主義)からの解放 「個としての天皇、皇后を解放せよ」


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