〈来栖の独白〉
一昨日のことだったか、ピアノを弾いていて夫君の話を思い出し、「夫には頻繁でなくとも、季節の見舞いなどをする妹弟がいるが、私にはきょうだいがいないな」と感じた瞬間、「私が妹になってあげる」という大きな声が聞こえた。ピアノから出た「声」だった。びっくりし、妙に感激した。不意に聞こえたのだ。空耳に違いないが、妙にはっきりした「声」だった。
子どもの頃から母の言いつけでピアノを習ってきた。そのピアノは、実家にある。いま弾いているいるピアノは、結婚してからのもの。息子たちも、このピアノを弾いて、成長した。