広島女児殺害事件

2010-04-09 | 死刑/重刑/生命犯

広島女児殺害事件
2006年 7月 4日 (火) 16:01
 広島市安芸区で昨年11月、下校途中の小学1年、木下あいりちゃん=当時(7)=が殺害された事件で、殺人や強制わいせつ致死罪などに問われ、死刑を求刑されたペルー人、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(34)に対する判決公判が4日午後、広島地裁で開かれ、岩倉広修裁判長は無期懲役を言い渡した。凶悪犯罪に対する厳罰化の傾向が強まっているが、初公判から50日目の異例のスピード判決で、地裁では死刑判決に関する従来の判例を踏襲した。
  検察側は、ヤギ被告の犯行は極めて悪質で、反省の態度もみられないとして死刑を求刑したが、被害者が1人の殺人事件で死刑判決が言い渡されるのは、身代金目的や、殺人などで無期懲役となり仮出所中に再犯したケースなどがほとんどで、地裁は無期懲役を選択したとみられる。
  岩倉裁判長は判決理由で、ヤギ被告があいりちゃんに声をかけた後、わいせつ行為をするとともに首を絞めて殺害したと認定。さらに、法廷での供述などから被告の責任能力も認めた。弁護側は殺意やわいせつ目的を争っていたが、検察側の主張に沿う事実認定となった。
  公判では3年後までに導入される裁判員制度を見据えて、事前に争点を絞り込む公判前整理手続きを地裁が採用。5日間連続で証拠調べを行うなどして、審理の迅速化を図った。
  検察側は先月9日の論告で、全国で児童が犠牲となっている犯罪が多発していることを「異常な事態」としたうえで、「従前の判例の基準をあてはめるのではなく、厳罰化をもって臨む責務がある」として死刑を求刑した。
  ヤギ被告が否認した殺意については、遺体の鑑定結果などから「数分間にわたって被害者の首を強く絞めつけた」と主張。「確定的な殺意に基づく行為」と指弾した。
  また、争点の一つのわいせつ目的では、検察側が「児童を物色し、殺害行為と並行して生前の被害者の下半身を触るなどのわいせつ行為をした」と断定。ヤギ被告の「『悪魔がやった』との供述は罪を軽くするための弁解」として「完全な責任能力が認められる」とした。
  一方、弁護側は最終弁論で、「首などに手を置いただけで、殺意はなかった」と反論。殺害時のわいせつ目的についても「被害者の生存中に被告がわいせつ行為をした形跡はない」と否定した。
  また、「ヤギ被告は犯行時、心神喪失状態だった」として、殺人と強制わいせつ致死罪で無罪を主張していた。
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死刑に壁「永山基準」 ヤギ被告 無期判決 広島女児殺害
2006年 7月 5日 (水) 03:23
地裁「仮釈放慎重に」
  広島市安芸区で昨年11月、下校途中の小学1年、木下あいりちゃん=当時(7)=が殺害された事件で、殺人、強制わいせつ致死などの罪に問われ、死刑を求刑されたペルー人、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(34)に対する判決公判が4日、広島地裁で開かれた。岩倉広修裁判長は「極めて悪質な犯行だが、被害者が1人の事案であり、死刑をもって臨むには疑念が残る」として無期懲役を言い渡した。
  公判前整理手続きの適用により、初公判から50日のスピード判決となった。
  弁護側は殺人と強制わいせつ致死の罪について無罪を主張したが、判決は、内出血が生じるほど強い力で首を絞めた犯行態様から「殺意」を認定し、わいせつ目的や責任能力も認めた。
その上で、(1)被害者が単数(2)計画性がない(3)前科がない-ことなどから「矯正不可能なまでの反社会性と言い切れない」とした。
  岩倉裁判長は「罪の深さは決して許されず、一生をもって償わせるのが相当」として仮釈放に慎重な検討を求める異例の付言をした。
  判決によると、ヤギ被告は昨年11月22日午後、広島市安芸区の自宅アパート付近で、あいりちゃんにわいせつ行為をしたうえ、首を絞めて殺害。遺体を段ボール箱に入れて空き地に放置した。
■「新たな基準」必要
  「死刑の適用基準を満たしていると考えても不当とはいえない」。広島地裁の岩倉広修裁判長は、遺族の強い処罰感情に一定の配慮を示しながらも、死刑判決を回避した。外国人犯罪や幼児への性犯罪が続発する中で非人間的な犯罪への厳刑を求める世論が高まっていたが、判決は、従来の量刑基準を踏襲するにとどまった。
  今回の裁判では、検察側が論告で「子供が犠牲になる凶悪事件で、従来基準の形式的適用は妥当ではない」と主張。厳罰化の流れの中で、被害者1人でも死刑が適用されるかが注目されていた。
  最高裁によると、昭和58年の永山則夫元死刑囚への最高裁判決が、被害者数や動機、殺害方法などを死刑適用基準に挙げて以降、被害者1人の殺人事件で死刑が確定したのは19件で20人。すべてが再犯か、保険金や身代金など金銭目的だった。
  今回の判決も結局、この「永山基準」に照らし、被害者が1人で犯行に計画性がないことなどから死刑回避の結論を導いた。一方で、仮釈放に慎重な検討を求める付言をすることで、「永山基準」と「厳刑化」のバランスを取った形だ。
  また、今回の判決では、被告のペルーでの性犯罪の前歴が証拠として採用されなかったことも遺族に悔いを残した。
  今回の判決について土本武司・白鴎大学法科大学院教授(刑法、刑訴法)は、「幼い女の子を狙った性犯罪が多発する実態を見据えれば、予防的見地からも、裁判所は極刑を言い渡すべきだった」と話す。
  最高裁が6月、山口県光市の母子殺害事件で、無期懲役の2審判決を破棄したように、司法の潮流は確実に厳罰化に傾きつつある。裁判員制度の導入が近づくなかで、量刑の判断基準が変わる可能性も指摘されている。
  土本教授は「司法を取り巻く状況の変化の中で死刑判決の新たな基準が必要になっている」と指摘している。
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 トレス被告控訴審は11月8日
'07/10/12中国新聞
 広島市安芸区で2005年11月、小学1年木下あいりちゃん=当時(7)=が殺害された事件で、広島高裁は11日、殺人や強制わいせつ致死罪などに問われたペルー国籍のホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(35)の控訴審の初公判の期日を11月8日に決めた、と発表した。無期懲役判決となった広島地裁での1審判決以来、1年4カ月をへて再び審理が始まる。控訴審は死刑適用の是非が最大の争点。
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極刑求め7000人の署名提出 あいりちゃん父が高検に
'07/11/5 中国新聞
 広島市で二○○五年、下校途中に殺害された小学一年木下あいりちゃん=当時(7)=の父建一さん(40)が五日、殺人などの罪に問われたホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(35)の死刑を求める約七千人分の署名を、広島高検に提出した。
  高検は八日から始まる広島高裁での控訴審で証拠請求する方針。
  署名は支援者のインターネットでの呼び掛けなどを通じて集められ、既に提出したものも含めると約八千四百通になるという。トレス被告と同じペルー人ら海外から寄せられたものもあり、建一さんは「思った以上に集まり驚いている。後ろで支えてくれていると思い頑張っていく」と話した。
  一審の広島地裁は死刑求刑に対し無期懲役の判決を言い渡し、検察、弁護側双方が控訴している。
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命の重さとは 「被告の命にも意味があるのではないか」
   広島小1女児殺害3年 悩む父「それでも極刑を」
(朝日新聞2008/11/22)
 広島市安芸区で、小学1年生だった木下あいりさん(当時7)が殺害されて22日で3年になる。
  この夏、ペルー人の被告の控訴審が結審し、検察庁に保管されていたあいりさんの遺品が遺族のもとに戻った。懐かしさと悔しさが交錯するなか、これまで被告の極刑をひたすら望んできた父の建一さん(41)の心に、答えの見つからない迷いが生じている。(山田雄介)
  真新しい通学帽、学習ノート、国語と算数の教科書とドリル、筆箱、お守り・・・。下校途中のあいりさんが05年11月22日に持っていた約60点の遺品が8月、返還された。
  連絡帳の11月10日の頁には「どうぶつえん」の文字。この日、遠足で動物園に行った。
  あいりさんは朝、建一さんがつくった卵焼きやウィンナーを弁当箱に詰めながら、何度も「これでいい?」と聞いてきた。事件当日の頁には「音どく、かん字学しゅう」と覚えたばかりの漢字が書き込まれている。「事件がなければ続きがあった」。建一さんの胸にやり場のない怒りがこみ上げる。
  「今でも極刑を望みます」。今年5月20日にあった控訴審の第4回公判で、建一さんはそう陳述した。その思いは一度も変わらない。
  しかし最近、今までなかった感情が芽生え始めた。きっかけの一つは、意見陳述した公判で、被告がペルーで女児にわいせつ行為をしたとされる現地検察庁作成の記録が証拠採用されたことだ。1審では採用されなかった。「死刑判決に近づいた」と思うと同時に「世界に1つだけだったあいりの命と同じように、被告の命にも何か意味があるのではないか」と思い始めた。
  「一貫して極刑を望んできた自分は正しかったのか」。法廷での陳述や取材を受けることを通してあいりさんの命の大切さを訴えてきたことが、被告の命を奪うことになるかもしれないという「矛盾」が建一さんを苦しめるという。いくら自問自答しても、答えは見つからない。
  今年の命日、建一さんは熊本県八代市にあるあいりさんの墓に家族で参る。「判決が死刑でも喜ばしいことではない。しかし無期懲役のままでは、被告はいずれ社会復帰する。それは許せない」。整理のつかない思いを抱きながら、手を合わせる。広島高裁の控訴審判決は、来月9日に言い渡される。
  2008/11/26 up
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広島女児殺害殺害事件 高裁が破棄、差し戻し
 朝日新聞2008年12月10日
  広島市安芸区で05年11月、下校中の小学1年生木下あいりさん(当時7)が殺害された事件で、殺人、強制わいせつ致死、死体遺棄などの罪に問われたペルー国籍のホセ・マヌエル・トーレス・ヤギ被告(36)の控訴審判決が9日、広島高裁であった。楢崎康英裁判長は「一審は審理を尽くしておらず違法」と述べ、無期懲役とした一審・広島地裁判決を破棄して審理を地裁に差し戻す判決を言い渡した。弁護側は殺人などについて責任能力を争って無罪を主張しており、差し戻し判決を不服として上告する方針。
  一審は来年5月に始まる裁判員裁判のモデルケースとして、争点を事前に絞り込む公判前整理手続きを採用。証拠調べを初公判から5日間、計25時間で終える集中審理も実施した。
 高裁判決は一審の訴訟指揮や検察側の立証活動の不備を指摘しており、裁判員となる市民の負担軽減のための裁判の迅速化と、必要な審理を尽くすことの両立の難しさを強く印象づけた。
  06年7月の一審判決は、検察側が犯行場所を被告の「アパート自室内」から「アパート及びその周辺」と広げた訴因変更を認めた。高裁判決はこの点を問題とし、室内であれば「どのように連れ込んだか」で犯行形態が大きく異なる▽通行人に容易に見られるような場所での犯行であれば、刑事責任能力に疑問が生じたり、逆に悪質性が強まったりする――と指摘。
 刑事裁判には真相を明らかにする使命があることからも「あいまいなまま判断するのは相当でない」と一審を批判した。
  また、一審は被告本人の捜査段階の供述調書を証拠採用しなかったため、犯行場所について事実を誤認したのではないかと考えざるを得ないと指摘。ヤギ被告の自室から押収された毛布には被害女児のものと思われる毛髪と血が付いており、被告の「事件当日、毛布を部屋から外へ出していない」と受け取れる供述が信用できれば、犯行場所は室内と認定できたはずだと述べた。
  そのうえで、一審の訴訟指揮について、公判前整理手続きで被告の供述調書について弁護側が不同意と述べた際、検察側と弁護側に具体的な主張や釈明を求めず放置したことは「手続きの目的に反する措置」と非難。公判でも証拠調べの請求を却下したのは訴訟手続きの法令違反だと判断した。さらに検察側についても、犯行場所特定のために必要だとはっきり主張しなかった不手際があると述べた。
  被告がペルーで少女に性犯罪をした前歴を証拠採用したことについては「量刑や公判供述の信用性を判断するうえでも有用」とした。
  一審判決は、確定的な殺意に基づくわいせつ目的の犯行と断定。被害者が1人で前科がないことなどから「矯正不可能な程度までの反社会性、犯罪性があるとは言い切れず、死刑をもって臨むには疑念が残る事案と言わざるを得ない」と判断し、検察側、弁護側双方が量刑を不服として控訴していた。
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 父、あいりさんに「結論出ず残念だね」
 「死刑か無期懲役以下の刑か、どちらか言い渡されると思っていたが、差し戻しとは……。非常に残念です」。公判終了後、記者会見したあいりさんの父、木下建一さん(41)は予想外の判決に無念さをにじませた。
  一審では、殺人などの罪に問われたペルー国籍のホセ・マヌエル・トーレス・ヤギ被告(36)の死刑を望み、無期懲役判決に強い衝撃を受けた。この日は、「無期懲役以下でも受け入れよう」と覚悟を決め、両手で元気いっぱいにピースするあいりさんの遺影をひざの上に置き、妻と一緒に傍聴した。「結論が出なくて残念だったね」。そう心の中で語りかけ、法廷で遺影を抱き直した。
  会見では、「苦しみがさらに長引くのかと、つらい思いになりました」と漏らした。判決文の朗読中に何度も取り乱したヤギ被告については「苦しんでいるのだろうが、それ以上にあいりと遺族は苦しんだ。最後まで判決を聞いてほしかった」と憤った。
  来年5月の裁判員制度スタートを想定し、異例の早さで進んだ一審。「遺族の心の負担を考えれば、非常に良かったと思っていた。ただ、今回のように複雑な事件では、争うべき点が審理で漏れることもあるのだとつくづくわかりました」と語った。
  裁判員制度については、「いい制度だと思うが、事件によっては限られた時間では審理できない。裁判所が(事件を)選別していかないと、今回のような差し戻しがあり得る」と指摘した。
 (加戸靖史)
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 ヤギ被告、激しく動揺
 「原判決を破棄する。本件を広島地裁に差し戻す」。楢崎康英裁判長が読み上げる主文を、ヤギ被告は両手を胸の前に合わせて聞いた。裁判長に着席を促されると、ぼうぜんとした表情でうつむいた。顔は紅潮し、「ハァハァ」と速い呼吸で肩を揺らした。
  判決理由の朗読を聞いていたヤギ被告が急に動揺し始めたのは、犯行場所に関する一審の事実誤認を指摘する部分にさしかかった開廷から2時間20分後。突然涙ぐみ始め、拳で自分の顔を殴ったり、「シー」と唇に指を当てたりした。
  裁判長が注意したが、ヤギ被告は「そこに誰かいる」「あいりちゃん。あなた、あいりちゃんですか」と繰り返し、朗読は数回中断した。
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 「1審批判に終始」弁護団が不快感---高検「予想外」
 判決後、ヤギ被告の弁護団が記者会見した。井上明彦弁護士は「判決は1審の検察官と広島地裁の批判に終始し、裁判所の職権のことしか言っていない。ここまで極端な判決は例がないのでは」と述べ、弁護側の主張にほとんど言及しなかった点に不快感をあらわにした。
  さらに、「被告を有罪にするために、足りない証拠を付けろと(検察側に)アドバイスしているようなもの」と判決を批判し、近く上告する意向を示した。
  山舖(やましき)弥一郎・広島高検次席検事は「予想外の判決。内容を検討のうえ、適切に対応したい」との談話を出した。
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 渡辺修・甲南大法科大学院教授(刑事訴訟法)の話
 捜査段階供述 切捨て疑問
  1審は、審理の充実をはかるためにある公判前整理手続きを急ぎすぎた。捜査段階の被告の供述を証拠から切り捨てたのは疑問で、取り調べ状況を解明し、証拠にふさわしいかどうか検討すべきだった。控訴審が審理不尽と批判したのは当然だ。被告の本国の性犯罪歴さえ取り寄せる時間を取らなかったのも、公判前整理手続きの趣旨に反する。「準備は丁寧に、審理は迅速に」というのが司法改革の精神だ。
  ラフな審理では被害状況も解明されない。今後、市民の代表となる裁判員も証拠が不十分だと分かれば、本来死刑以外にないと思っても死刑を選択することが不可能になってしまう。
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諸沢英道・常盤大大学院教授(被害者学)の話
 不備指摘続けば 制度が混乱
  広島高裁は、地裁が実施した公判前整理手続きの問題点を明確に指摘した。高裁が指摘するように、1審段階で検察側が用意周到に証拠価値を精査していれば差し戻しという事態は避けられたはずだし、広島地裁も検察側のミスに気づくべきだった。公判前整理手続きは、裁判員が審理するための土俵を造る役割を担う。控訴審でその不備を指摘されるケースが続けば、裁判員制度自体が混乱し、候補者となった市民に不安が広がるだろう。
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 〈元最高検検事の土本武司・白鴎大法科大学院長(刑事法)の話〉
 量刑を不当として検察、弁護側が控訴した裁判のはずが、広島高裁はそれらに見向きもせず、手続きの違法性を指摘した。
  重要な調書も採用してもらえず、犯行現場の立証すら不十分だとして高裁から批判を受けるとは一審の検察官は何をやっていたのかと思う。
  かつて大変な時間がかかった刑事裁判の反省に立ち、裁判員制度などの司法制度改革が進められてきた。しかし、審理を早く片づけることを重視して中身が粗雑になってしまうのは問題で、公判前整理手続きで証拠を過度にそぎ落としてしまうことの危険性を指摘した判決と言える。迅速化のみを図るのではなく、スピードを緩めて、刑事裁判の目的である真相の解明を追求すべきだ。
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 〈解説〉
 9日の広島高裁判決は、審理の迅速化が求められるとしても、粗雑になることは許されないと警鐘を鳴らした。
  裁判員制度に向け、裁判所は事前に公判の骨格をつくる公判前整理手続きと集中審理の準備を進めてきた。重大事件の審理は2~3年かかるのも当たり前だったが、市民を長くは拘束できないからだ。
  だが、高裁判決は一審の公判前整理手続きで、重要な争点が見過ごされたと批判する内容だった。 また、市民が大量の記録を読むことは難しいため、裁判員裁判では口頭審理が重視される。しかし、公判での供述は捜査段階と変わることもある。この点について高裁判決は、捜査段階の供述調書を証拠採用しなかった一審を批判。供述調書が重要な内容を含む場合、取り調べる必要があることを強調している。
  公判前整理手続きはその後、多くの事件で採用され、手続きに1年以上費やす例も珍しくなくなった。ただ、高裁判決が求めた点に対応すれば、公判前整理手続きだけでなく、裁判員が参加した審理に想定以上の日数がかかることもありうるだろう。
  一審で調べられる証拠が不十分であってはならないのと同時に、審理に長い時間もかけられない。高裁判決は克服すべき課題を突きつけている。(鬼原民幸)
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最高裁、上告申立てを受理 2009/02/13
  広島の女児殺害で上告審弁論 公判前整理手続き、初判断へ
 産経ニュース2009.9.11 19:29
 広島市で平成17年、小学1年の木下あいりちゃん=当時(7)=を殺害したとして、殺人や強制わいせつ致死などの罪に問われたペルー人、ホセ・マヌエル・トレス・ヤギ被告(37)の上告審弁論が11日、最高裁第2小法廷(古田佑紀裁判長)で開かれた。弁護側は2審判決の破棄を求め、検察側は上告棄却を求めた。判決期日は後日指定される。
  2審広島高裁は、1審広島地裁が犯行場所特定につながる可能性のある被告の供述調書を証拠として調べなかった点を「審理が不十分」と指摘し、検察側の死刑求刑に対して無期懲役を言い渡した地裁に審理を差し戻した。弁護側が上告し、最高裁が弁論を開いたため、争点や証拠を整理する「公判前整理手続き」のあり方について、初判断が示される見通し。
  弁論で弁護側は「最高裁は調書中心の精密司法を維持するのか、裁判員裁判が目指す法廷中心の核心司法に転換するのかが問われている」などと主張。検察側は「検察官の対応に問題はあった」などと述べた上で、上告棄却を求めた。
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