判断ミス 首相自身が政権の危機に気づいていない 普天間問題先送り

2009-12-05 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉
日経新聞 社説1 普天間問題の決着先送りを憂慮する(12/5)
 鳩山由紀夫首相は、沖縄の米軍普天間基地の移設問題の決着を来年に先送りし、新たな移設先も探す考えである。岡田克也外相、北沢俊美防衛相ら安全保障当局の主張よりも、連立離脱の決意を述べた社民党の福島瑞穂党首に対する配慮を優先した結果とされる。
 判断ミスである。日米関係のみならず、鳩山首相の求心力にも暗雲が垂れ込める。経済運営にも影響しかねない。首相自身が政権の危機に気づいていない現状を憂慮する。
 岡田、北沢両氏が求めた年内決着を首相が断念した理由は何か。平野博文官房長官は「沖縄の負担軽減と、与党3党の合意を踏まえた結論を出すには、時間は必要であればかけなければならない」と述べた。
 平野氏は「私は年内と言ったことは一切ない。できるだけ早くとは話したが……」とも語る。それが事実にせよ、鳩山首相は11月13日のオバマ米大統領との共同記者会見で「時間がたてば、より問題の解決が難しい」と述べている。
 岡田、北沢両氏は2010年度予算編成と絡めて年内決着を当時から主張していた。首相発言を現場で聞いていたオバマ大統領が、首相が年内決着の決意を表明したと受け止めても不自然ではない。
 年内と越年決着の差が数カ月ならば本来はさほど深刻な問題ではないが、予算編成という節目を逃せば、来年は1月に名護市長選挙、11月に沖縄県知事選挙がある。越年は決着の無期限延期になりかねない。
 その場合、米側は鳩山政権を信頼に足る相手と考えるだろうか。約束の実行を無期限延期する相手を信頼できないと考えるのが普通だろう。平野氏は「これがこけるとすべてパーという議論ではない。そんな薄い日米関係ではない」とも語る。
 国と国との関係では、それは必ずしも間違いではないが、政権と政権との関係が首脳同士の行き違いで壊れた例は少なくない。現在の日米関係は、双方ともことし生まれた政権であり、首脳間に信頼の蓄積は実はほとんどない。日本国内でも、毎日揺れる鳩山発言をまともに受け止められなくなっている。
 首相は直視したくない現実を直視する必要がある。オバマ大統領と並んで立ち「時間がたてば、より問題の解決が難しい」と述べた瞬間を思い出せば、何をすべきかは明らかである。首相自身が調整に乗り出し、米側と一致できる結論を年内に見いだすことである。
 展望なき不作為のつけは、鋭い刃になって首相自身に返ってくる。

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