臨時国会 不毛の早期閉幕 首相の「政治とカネ」追及逃れを優先

2009-12-05 | 政治
毎日新聞 社説:臨時国会終えて 「3課題」逃げずに対処を
 不毛な幕引きである。鳩山内閣発足後初の与野党論戦の場となった臨時国会が閉会した。鳩山由紀夫首相と谷垣禎一自民党総裁による党首討論はついに一度も行われず、自民党が審議を拒否する異常な状況のまま、日本郵政グループの株式売却を凍結する法律は成立した。
 早期閉幕に固執した民主党の対応は「政治とカネ」をめぐる首相への追及逃れを優先したと言われても仕方ない。政治献金の虚偽記載問題、沖縄基地問題、来年度予算編成など年末にかけ首相が対処を迫られる課題は多い。6割を超す内閣支持率にあぐらをかかず、首相は逃げずに局面打開に動かねばならない。
 4日だけの会期延長は結局、国民新党がこだわる郵政株式売却凍結法のスピード処理だけが目当てだったようだ。小泉政権で多大なエネルギーを費やした民営化の見直しにつながる重要法案だが、衆参委員会の実質質疑はわずか2日というお粗末さだった。
 与党時代は野党の審議拒否戦術を批判していたはずの自民党の打って変わった対応は、無責任との指摘を免れまい。だが、自民党が求めた党首討論に事実上応じず、日程攻防を激化させた民主党の姿勢はなおさら、理解できない。小沢一郎幹事長が国会改革に意欲を示す同党だが、そもそも言論の府を尊重する心構えにすら疑念を抱いてしまう。
 首相の対応も合点がいかない。党首討論開催に消極的でないとしきりと強調したが、ならばなぜ、実現に指導力を発揮しなかったのか。自らの献金問題や米軍基地問題を抱え、討論よりも追及によるダメージをおそれたとすれば、為政者としての気概を問われよう。
 年末にかけ、鳩山内閣は三つの試練に直面する。政治献金問題で捜査当局は近く元公設秘書らの処分を決める見通しだ。首相自身への聴取は見送られる模様とはいえ、新たに判明している実母からの資金提供疑惑も含め、どう国民に説明し、責任の所在を明らかにするのか。政権の存立基盤にかかわる問題である。
 米軍普天間飛行場の移転問題も年内決着は見送られるが、首相は「新たな移設先」の検討を指示する一方で、沖縄県名護市辺野古に移設する現行案も選択肢と言う。解決への展望をより具体的に示さなければならない。
 年末の予算編成も、財源不足に直面する中でデフレ対策とマニフェスト実現をどう両立するかの手腕が問われる。なお高い水準にある内閣支持率とは裏腹に、首相を取り巻く諸状況は厳しい。国会が終われば逃げ切り、というわけにはいかない。国民の失望を招かぬためにも、自らが火中のクリを拾うべきである。

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