「コロナに打ち勝った後で、憲法改正にしっかり挑戦したい」菅義偉首相 2021/07/30

2021-07-31 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

五輪熱に便乗、改憲狙う?
  菅首相「コロナ後挑戦発言」の背景は  
 中日新聞 朝刊 2021年7月30日 金曜日 特報
 菅義偉首相が保守系月刊誌のインタビューで「コロナに打ち勝った後で、憲法改正にしっかり挑戦したい」と明言した。首相は五月の憲法記念日にも改憲推進団体へのメッセージで同様の発言をしていたが、緊急事態宣言下で前代未聞の無観客五輪強行に追い込まれた末に、再び言及した背景には何があるのだろうか。 (中沢佳子、榊原崇仁) 
 「憲法改正に向けて取り組む。その方針は全く変わらない」。月刊誌「Hanada」九月号に掲載された「菅義偉総理大臣 国民の疑問に答えます」と銘打ったインタビューで、菅首相は明言した。 
 発言は「コロナ対策でも浮かび上がったように、改憲して緊急事態条項を創設するのが急務だと思われる」と取材者から水を向けられた際に飛び出した。首相は憲法九条への自衛隊の明記など自民党の改憲四項目に触れ、党是として掲げた自主憲法制定の考えに変更はないと主張。「コロナに打ち勝った後、国民的な議論と理解が深まるよう環境を整備し、挑戦したい」と宣言した。 
 他にも、携帯料金値下げ、改憲手続きを定めた改正国民投票法の成立、そして新型コロナ禍のさなかの五輪開催など、自身の「功績」を披露。「自分がやっていることは間違っていないという自負がある」と自信たっぷりに言ってのけた。

 🔶緊急事態条項
 首相は5月の憲法記念日に会見推進派が開いた集会に寄せたビデオメッセージでも、改憲に言及している。感染拡大を踏まえ「国家と国民がどんな役割を果たし、国難を乗り越えていくべきかを、憲法にどう位置付けるかは重く大切な課題だ」と語り、大規模災害時などに政府の権限を強化し、私権を制限する「緊急事態条項」の新設に意欲を示した。改正国民投票法についても、「改憲議論を進める最初の一歩」と語り、早期成立を訴えた。
 結局、同法は6月に成立。自民党などは改憲原案づくりに向けた動きを本格化させる構えだ。とはいえ、人々の意識は目下、五輪に傾いている。このタイミングで再び出た改憲挑戦発言の狙いは何か。
 「五輪の後には自民党総裁選と衆院選が控えている。菅首相は改憲推進派の支持を集めている安倍晋三前首相に向け、自分の後ろ盾となるようメッセージを送ったんだ」とみるのは政治ジャーナリストの野上忠興氏だ。

 🔶弱い党内基盤
 自民党内では総選挙をにらみ、安倍氏、麻生太郎副総理、甘利明党税調会長の「3A」が結束を強めて勢力を広げている。野上氏は「菅政権の支持率は低迷している。無派閥出の首相は党内基盤も弱く、表向きは首相を支えている3Aも、自分たちの言いなりになる人間を『ポスト菅』に据えようと画策している。菅首相は政権維持に危機感を募らせている」と解説する。
 感染収束が見えない中、自民党内には緊急事態条項の新設を求める意見が根強い。「改憲は安倍氏の悲願。自身の手で改憲を実現できなくても、せめて道筋はつけたいと考えている。菅首相はその執念に応えるとアピールし、安倍氏とその岩盤支持層となっている改憲推進派を取り込んで、政権の難局をしのごうとしている」と野上氏。さらに、菅首相が無観客でも五輪開催にこだわったのも、改憲との絡みとみる。「開催して日本の選手のメダルラッシュが起きれば、国民は盛り上がる。五輪後もその余熱は続き、冷え込んでいた政権支持率が回復すれば、改憲し易い環境が整う」
 五輪に改憲を絡める手法は安倍氏がかねて採ってきた。そんな意図を明確にしたのが、現行憲法施行70年に当たる2017年5月3日だった。
 読売新聞の同日付朝刊には、首相だった安倍氏のインタビュー記事が掲載され、「日本で五輪が開催される2020年を、日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ。新しい憲法が施行される年にしたい」という言葉が紹介された。この日、東京都内であった改憲集会でも安倍氏は記事と同じ趣旨のビデオメッセージを寄せた。
 同月9日の参院予算委員会では、民進党(当時)の蓮舫氏が「施行時期をなぜ20年に区切ったのか」とただすと、安倍氏は「東京五輪・パラリンピックも予定されている。新しい日本を始めようという機運がみなぎっている」と述べた。
 政治ジャーナリストの泉宏氏は「五輪前の国会で改憲発議まで進めた上、五輪そのもので国民の高揚感を高めて右派以外の人たちも改憲賛成派に取り込み、国民投票につなげるというのが安倍氏の描いたシナリオの一つだったはず」と背景を説明する。
 しかし19年7月の参院選の結果、改憲勢力が参院で3分の2を割り、改憲発議の要件を満たさなくなったため、「五輪イヤーに改憲」は遠のいた。20年になるとコロナ禍で東京五輪は1年延期になった上、安倍氏自身も退陣。五輪も改憲も世間の関心が薄れていたのは明らかだった。

 🔶独特の高揚感
 ただ、いざ五輪が開幕してみると、安倍氏が待望していたような「機運」が盛り上がっている感も。23日夜の開会式を生中継したNHK総合の平均視聴率は、関東地区で56.4%で、夏季五輪の開会式では1964年東京五輪に次ぐ高視聴率を記録した。テレビの番組編成も五輪一色で、独特の高揚感が広まりつつある。
 元日本テレビディレクターで上智大の水島宏明教授(メディア論)は「五輪が始まってみると、日本勢の活躍が目立つ上、卓球の混合ダブルスのように手に汗を握る好勝負もあった。そうした様子が緊迫感のある生中継で見られるし、視聴しやすい時間帯に放送されている。これらの要素が絡み合い、見る側を引きつけているのではないか」と話す。
 一方では、五輪開催に慎重な姿勢を示してきた人に対するバッシングも起きている。前出の蓮舫氏がツイッターで金メダリストに向けて「素晴らしいです!」と書き込むと「手のひら返し!」「オリンピック開催してよかったでしょ?」といった皮肉の投稿が殺到した。緊急事態宣言下の五輪という重い現実を隠すようなこうした雰囲気に、危うさはないか。
 千葉商科大の田中信一郎准教授(政治学)は「アスリートの頑張りと五輪を巡る政治的な問題は全くの別問題。切り分けて考えるべきだ」と話す。
 駒沢大の山崎望教授(政治学)は「今は浮かれてばかりいられない状況。コロナの感染状況は深刻さを増すばかりで、私たちの日常生活を脅かし続けている。五輪の出場選手たちを感染から守れるのか、五輪を続けていいのかという問題もある。そんな状況で『改憲に挑戦したい』という話が表に出てくるのは全く理解できない。目の前の問題を直視できない首相でいいのか、私たちが冷静かつ厳しくたださなければならない」と訴えた。

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)
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〈来栖の独白 2021.07.31〉
 左翼紙らしい文章。
 私も改憲を望む者だが、コロナ禍での五輪は危うすぎる。季節的にも、7月下旬から8月前半は猛暑の時期ではないか。
>コロナに打ち勝った
 政治家らしい「美しい」言い回し。


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