「悪役の汚名を着せられ、鳩山首相に引導を渡される形で表舞台から消えるのは惜しい」山口二郎

2010-06-05 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア

【「どうせだめ」冷笑に陥るな】北海道大学教授(政治学)山口二郎
朝日新聞2010/06/03Thu.
 政権交代を実現した鳩山政権は、長くやることに意味があると思っていた。どんなに支持率が下がっても、最低3年は続ける。その間に、民主党が訴える政策を少しでも実現してほしかった。
 幹事長の小沢一郎氏とは2006年、彼が党代表になったころから何度も会い、政権交代に向けて話をしてきた。「悪役」の汚名を着せられ、鳩山首相に引導を渡される形で表舞台から消えるのは惜しいことだと思う。
 きょう私は、小沢氏と二人三脚で選挙を戦った連合の中央委員会で講演したが、連合の困惑ぶりが伝わってきた。全力で応援したのに政権を放り出してという、やり場のない怒りだろう。
 政権交代を果たす前、小沢氏と私は「生活が第一。」というキャッチフレーズで共鳴し合っていた。新自由主義的な考えで「日本改造計画」を書いた小沢氏は、社会民主主義路線になろうとした。彼が06年の代表選の演説で「まず私自身が変わらなければなりません」と言ったのは、うそではなかったと思う。雇用を守れとか、地域社会の荒廃に立ち向かおうとする民主党の姿勢には、小沢氏なりのリアリズムがあったと思う。
 内閣支持率が低落したなかでの退陣劇だけに、悪かったことばかりがクローズアップされるが、政権交代の意義や成果は、フェアな議論をしてあげなければいけない。
 外交密約の公開や事業仕分けは情報公開の成果であり、官の聖域に多少なりともメスを入れられたのは政権交代があったからと私は断言する。子ども手当の支給や高校無償化も、自民党的な利益配分から普遍的な福祉国家づくりに方向を転換したことであり、高く評価したい。
 小沢氏の選挙至上主義、つまりは選挙に勝って権力を握り、多数派が政治を行うのが民主主義という論理は、非難されるべきではない。
 ただ、小沢氏の最大の失敗は、すでに(総選挙で大敗して)死んでいる自民党を、さらに死なせようとしたことだ。この半年間、私は「亡くなった人は放っておいたほうがいい。やるべきことは別にある」と言ったが、彼は分かってくれなかった。
 土地改良の関連予算を減らしたり、自民党の支持組織を寝返らせようとしたり、小沢氏は自民党の「墓」の上でさらに自民党の息の根を止めようとした。自民党以上に自民党的な手法で、これが民主党らしさを失わせる大きな要因となってしまった。
 国民にとっては、民主党はこれから何をするのかが最も大事だったのに。国民がどう見ているか。それを意識し、どうすれば選挙の勝利につながるのかを、小沢氏ともあろう人物が、どうしてもっと広い視野で見通すことができなかったのか。小沢氏は、プロセスとしての民主主義を、最後まで理解できなかったのかもしれない。小沢氏の歴史的な使命は自民党の墓穴を掘ることで、役割は終わった。
 次の代表、首相選びに向けて党内が動き出している。まず、鳩山首相を支えてきた菅直人副総理兼財務省はじめ、閣僚たちはこの8ヵ月を徹底的に自己点検してほしい。なぜこんな惨めな崩壊に至ったのか、それぞれどういう責任を負っているのか、自分の問題として反省してほしい。そして次のリーダーはその総括を踏まえたところから出発することが重要だ。
 どうか国民もメディアも結論を急がないでほしい。政権交代は福沢諭吉が提唱し吉野作造が引き継いだ100年がかりのプロジェクトだ。
 最近、堀田善衛の著書を読んでいて出会った文言があります。「自由と解放の後に幻滅が来ないとしたら、その方が不思議だ」とか、「民主主義とは、これが民主主義か?という幻滅をあらかじめビルトインされている」という意味のことがあり、はっとさせられた。
 何度も幻滅させられながら、それでも民主主義を求める。そんな、あくなき挑戦の繰り返しだ。「どうせだめ」などと冷笑に陥ってはいけない。
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マル激トーク・オン・ディマンド 第477回(2010年06月05日)
鳩山政権は何に躓いたのか-新政権の課題

ゲスト:松井孝治氏(内閣官房副長官)、長谷川幸洋氏(東京新聞・中日新聞論説委員)、福山哲郎氏(外務副大臣)、山口二郎氏(北海道大学教授)
 民主党政権発足から8ヶ月余り。社民党の連立政権離脱の激震も収まらないうちに、今度は鳩山首相が辞任、そして小沢幹事長も辞任した。鳩山首相は2日の辞意表明演説で政権交代の成果を訴える一方、それでも「国民に聞く耳を持たれなくなってしまった」原因として、政治とカネの問題と普天間移設問題の二つを挙げた。
 辞任表明の前日、鳩山首相から直接辞意を伝えられたという松井官房副長官は、辞任の理由として特に首相が強調したのが政治とカネの問題だったと明かす。クリーンな政治を目指して自民党を飛び出し、民主党を結党したはずだったのに、自分と小沢幹事長が抱える政治とカネの問題で国民の指弾を受け、党を窮地に立たせている。このままでは民主党も自民党と同じように見られ、政策の実行もままならない。もう一度民主党の原点を取り戻し、党の再生を図るためには、小沢幹事長と共に辞任するしかない。そう述べた鳩山首相は、スピーチライター役の松井氏が用意する演説原稿を持たずに辞意表明の演説に臨んだという。
 確かに政権与党のトップ2人が政治とカネの問題を抱えたことが、政権の求心力にボディブローのように効いていたことはまちがいないが、鳩山政権を退陣に追い込む決定打となったのは、普天間飛行場の移設問題だった。なぜならば、これが政権のガバナンス(統治)能力を問う問題にまで発展してしまったからだ。
 「鳩山首相は普天間問題に関して、日米安保体制をアジアとの信頼関係の中に位置づけてより深化させるという大きなビジョンの中でが県外・国外を模索していた」。松井氏はこう言って首相を弁護する。そもそも先進国が自国の安全保障を他国任せにした上に、駐留基地を永続的に国内に配置させておくのはおかしいというのが首相の持論。戦後初の政権交代を成し遂げた以上、基地問題の解決を一歩でも前に進めるのが使命であるとして、民主党がマニフェストで落とした「県外移設」をあえて個人の思いとして公言したのが「最低でも県外」という言葉だったという。
 しかし、鳩山政権迷走の内実を追いかけた『官邸敗北』の著者で、東京新聞・中日新聞論説委員の長谷川幸洋氏は、マニフェストにないことを首相が公言したことで政権が迷走するのは目に見えていたと言い切る。長谷川氏によれば、政治とは政策という目標を決定し、その実行に至るまでの工程管理であるという。そのプロセスで対立が生じたり、それを調整するのもまた政治だが、マニフェストという党全体で共有されたものから首相が勝手に踏み出してしまえば、最初から内閣としてのゴールが定まらず、迷走するのも当たり前だというのだ。
 しかし松井氏は、最終的に鳩山政権がつまずいた本質的な原因は、マニフェストを忠実に実行することを優先し、政策を遂行するための制度改革を後回しにしたことだと言う。具体的には、当初は民主党政権の鳴り物入りだったはずの国家戦略局が全く機能しなかったことだ。政権交代とは本来ならば、統治構造の変革を可能にするほどインパクトのあるものであるにもかかわらず、民主党議員の多くが、システム変革に関心を持たなかった。
 首相辞任後わずか2日で菅直人氏が新首相に選出されたが、どのような組閣を行うにせよ、鳩山政権の轍を踏まないために、新政権は真っ先に制度改革に着手すべきだと松井氏は提案する。
 今週はまず、首相の片腕として鳩山政権を支えた松井氏を迎え(Part1)、鳩山政権がどこでつまずいたのかを検証した上で、長谷川氏とともにその議論をさらに深めた(Part2)。
 その上で、福山哲郎外務副大臣をゲストに迎え、鳩山政権の政治主導のあり方などについて議論をした。(Part3)
 さらに、結党時以来民主党のブレーンを務める山口二郎北海道大学教授を迎え、今回の鳩山辞任劇のもう一人の主役である小沢氏に焦点を当て、鳩山政権がなぜ破綻したのかを検証した。
 山口氏は、民主党の政権交代には、自民党的な政治のあり方を変えるという命題と、自民党的な手法に訴えてでも自民党を徹底的に潰すという2つの命題が存在しており、その矛盾を、小沢氏を政権与党内に抱えた鳩山首相が乗り越えられなかったことが政権の破綻につながったと指摘する。
 小沢氏が民主党に何をもたらしたのか、ひいては日本の政治においてどのような役割を果たしたのかについて山口氏と議論した。(Part4)
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〈来栖の独白〉
 鳩山さんは大きな過ちを犯した。
 「政治とカネ」の問題である。鳩山さんの「カネ」の問題は元秘書も認め、有罪が確定している。が、小沢氏の陸山会に絡む政治資金規正法の件は、小沢氏自身起訴すらされていない。なのに、鳩山さんは小沢氏を有罪と決め付け、「引いてください」と辞任を迫った。検察が起訴もせず(できず)、裁判所の机上にも載っていないものを鳩山さんは有罪と決め付け、辞任を迫った。八方美人の鳩山さんらしく「空気」を読んでの先走りである。
 小林千代美議員に対しても然りである。辞任を迫ったが、北教組事件について小林議員の関与は何ら解明されていない。
 この罪責は重大だ。もしも小沢氏が強制起訴され、審理の末、無罪となったなら、鳩山さんはどう責任をとるのだろう。
 鳩山さんに限らず、事情聴取或は逮捕・起訴だけで、犯罪者・有罪のごとくに受け止め、辞任を迫る国会議員のお気楽、「市民感覚」にもあきれるばかりである。推定無罪もなにも、あったものではない。
 このようにダーティな印象を醸成させる検察の手法自体、罪深い。そのお先棒を担ぎ、実像とはおよそ懸け離れたイメージを蔓延させるのが、巨大メディアである。
 7月には、恐らく石川知裕議員の公判が始まるだろう。真実は、これから明らかにされる。
 議員のセンセイたちも、国民も、メディアも、ほとぼりを冷まし、現象の奥にある真実を見、その先に視野を広げてほしい。
 「悪役」の汚名を着せられ去ってゆく小沢氏の無念を思うとき、胸が痛む。「鳩山さん、最後の最後で、とんでもない事実誤認をされました」。

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偽装献金、首相元秘書の有罪判決が確定
(2010年5月7日00時22分  読売新聞)
 鳩山首相の資金管理団体「友愛政経懇話会」の偽装献金事件で、政治資金規正法違反(虚偽記入)に問われた同会の元事務担当者で首相の元公設第1秘書・勝場啓二被告(59)について、検察、弁護側とも控訴期限の6日までに控訴せず、東京地裁で言い渡された禁固2年、執行猶予3年の有罪判決が確定した。
 判決によると、勝場被告は鳩山首相やその母親から提供された資金を、実際には寄付していない個人からの献金として記載するなどし、同会の2004~08年の政治資金収支報告書に総額約3億5900万円の虚偽記入を行うなどした。
 この事件では、東京第4検察審査会が先月26日、同法違反容疑で刑事告発された鳩山首相を東京地検特捜部が不起訴(嫌疑不十分)としたことを「相当」とする議決を公表した。
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民主・小林千代美氏、北教組事件で議員辞職へ 首相、小沢氏の問題再燃も
産経ニュース2010.5.20 10:53
 北海道教職員組合(北教組)による民主党の小林千代美衆院議員=北海道5区=陣営への不正資金提供事件をめぐり、小林氏が国会閉会後の6月中に議員辞職する方向で検討していることが分かった。複数の民主党関係者が20日、明らかにした。
 陣営に資金を提供し、政治資金規正法違反罪に問われた北教組委員長代理、長田秀樹被告が、19日の札幌地裁での初公判で起訴内容を認めたことから、小林氏は「自らの政治責任は重い」と判断したようだ。長田被告への地裁判決は6月中に出るとみられている。

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保釈された石川議員「頭からウソ話に乗り、取調べをした検事もとんでもない」 秘書らに保釈条件  
小沢が良い悪いは別で、検察とそのポチに成り下がったマスコミはひどい 「マスコミは検察の犬」 2010-02-05 | 政治/検察/メディア/小沢一郎


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