相撲協会理事選 安治川親方、貴乃花親方への投票認める 退職の意向

2010-02-03 | 相撲・野球・・・など

安治川親方、貴乃花親方への投票認める 退職の意向
朝日新聞2010年2月3日
 大相撲の安治川(あじがわ)親方(36、元幕内光法=こうぼう)が2日深夜、東京都内で会見し、日本相撲協会の理事選挙で、所属する立浪一門の候補者ではなく、初当選した貴乃花親方(元横綱)に投票したと公表した。安治川親方は「一門に迷惑をかけた」として、3日に協会に退職届を出す意向を示した。
 安治川親方は立浪一門の伊勢ケ浜部屋の現役関取安美錦から年寄株を借りており、宮城野部屋で部屋付き親方として指導していた。事前の会合では立浪一門の現職理事だった大島親方(元大関旭国)に投票する約束だったと見られ、この票が貴乃花親方に流れたことが大島親方の落選につながった。立浪一門からはもう1票が、貴乃花親方に流れた模様だ。
 安治川親方はこの日開かれた一門会で、貴乃花親方に投票したことを一門内の親方らに伝えたという。安治川親方は「角界を変えて欲しいと思った」と報道陣に支持した理由を説明。選挙前には貴乃花親方を含め、誰にも伝えていなかったといい、「最後まで迷った。自らけじめをつける覚悟だった」と、退職覚悟で投票したことを明らかにした。
 1日の理事選挙では、当初貴乃花親方の持ち票は7票で苦戦が予想されたが、3票が上積みされた結果、貴乃花親方が当選した。
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「天声人語」2010年2月3日(水)付
 一門といい破門といい、相撲界の言葉は古めかしい。伝統を守るための古めかしさならいざ知らず、古いこと自体が伝統になっては時代からこぼれる。日本相撲協会の理事選挙を見ていて、昔ふうに「入れ札(ふだ)」と呼びたくなる気分にかられた▼作家の菊池寛に「入れ札」という話がある。上州から信州へ落ちていく国定忠治の一党の話だ。誰もが忠治について行きたいが、大勢では目立ってしまう。やむなく3人に絞る投票をする。子分の葛藤(かっとう)を巧みに描いた好短編である▼小説ではあるが、その入れ札とて無記名で行われた。だが相撲協会の理事選では、立会人に票を見せるよう求める声が出たそうだ。退けられたが、その古さに驚く。そもそも3期連続で無投票だった。苔(こけ)むしたイメージが協会を包んでいる▼劣勢とされた貴乃花親方の当選は「奇跡が起きた」のだという。「誰の一票」まで勘定できた村社会だが、「一門栄えて相撲廃(すた)る」では本末転倒になってしまう。危機感から流れた票もあったように聞く▼古い角界には謀反と映るかもしれない。だが「謀叛(むほん)人となるを恐れてはならぬ。新しいものは常に謀叛である」という徳冨蘆花の言葉もある。新しいものを期待していいのか、親方自身の言葉をもっと聞きたいものだ▼鯨に呑(の)まれたのに気づかず安穏(あんのん)と泳ぐ小魚のたとえがある。巨漢ぞろいの角界だが、これまでの危機への鈍感はその小魚を思わせた。朝青龍の件もあってファンの目はいよいよ厳しい。新風を呼ぶ志のある謀反人が、本当ならもう2、3人は欲しい。

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