陸自元陸将らを書類送検 在日ロシア大使館の元駐在武官に内部文書渡した疑い 警視庁 2015/12/4

2015-12-05 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

陸自元陸将らを書類送検 内部文書渡した疑い
 NHK NEWS WEB 12月4日 17時16分
 陸上自衛隊の元陸将が、外部に持ち出すことができない自衛隊の訓練に関する内部文書を在日ロシア大使館の元駐在武官に渡していたとして、警視庁は元陸将ら7人を、職務で知り得た秘密を漏らすことを禁じた自衛隊法違反の疑いで書類送検しました
 書類送検されたのは、陸上自衛隊の東部方面総監だった泉一成元陸将(64)と、在日ロシア大使館のセルゲイ・コワリョフ元駐在武官(50)、それに泉元陸将の部下だった現職の57歳の陸将など合わせて7人です。
 警視庁の調べによりますと、泉元陸将はおととし5月、東京都内のホテルで、外部に持ち出すことができない自衛隊の訓練に関する「教範」と呼ばれる内部文書をコワリョフ元駐在武官に手渡したとして、職務で知り得た秘密を漏らすことを禁じた自衛隊法違反の疑いが持たれています。
 警視庁によりますと、これまでの調べに対し泉元陸将は容疑を認め、「違法だと分かっていたが、元駐在武官が勉強熱心だったので渡してしまった」などと供述しているということです。
 一方、コワリョフ元駐在武官はロシアの情報機関「GRU」=軍参謀本部情報総局の出身とみられ、すでに帰国していることから、警視庁は外務省を通じて出頭を要請しましたが、応じなかったということです。
 また、現職の陸将など5人は教範の入手に関わった疑いで書類送検され、調べに対し「教範の入手は手伝ったが元駐在武官に渡るとは思わなかった」などと供述しているということです。
 これについて中谷防衛大臣は「国民の自衛隊に対する信頼に背き、わが国の防衛に対する内外の不信を招きかねない誠に遺憾な事案で、陸上幕僚監部に調査委員会を設置して事実関係の調査や再発防止の検討を行わせる。防衛省としては引き続き、捜査当局による捜査に全面的に協力し、厳正に対処していく」というコメントを発表しました。
 一方、在日ロシア大使館報道部は、NHKの取材に対して、「この件に関してはコメントを控えたい」と述べるにとどまりました。
■自衛隊の「教範」とは
 陸上自衛隊の元幹部が在日ロシア大使館の元駐在武官に手渡した疑いが持たれている自衛隊の「教範」と呼ばれる冊子は、秘密の度合いが高いものから低いものまでありますが、いずれも部外者に渡すことは禁じられているということです。
 自衛隊の「教範」は、教育訓練のための教科書のような冊子で、部隊運用や武器の取り扱いなど、陸海空の各自衛隊などに合わせておよそ270種類あり、今回は陸上自衛隊の「普通科運用」という教範を手渡した疑いが持たれています。この教範は400ページ以上あり、小銃や迫撃砲が主な武器の「普通科」と呼ばれる部隊の、攻撃や防御の手順などが記されています。教範には秘密の度合いが高いものから低いものまでありますが、「普通科運用」の教範は、特定秘密に指定されるような文書ではないということです。
 NHKがこの教範を情報公開請求で入手したところ、黒く塗りつぶされた部分が多くありますが、手を加えずに公開された部分もありました。自衛官であれば上司の許可を得たうえで、駐屯地内の売店で購入することができますが、教育訓練以外の目的で使用してはならないことや、用済み後は確実に破棄することなどが記されています。
 防衛省によりますと、「普通科運用」を含むいずれの教範も、部外者に渡すことは禁じられているということです。
■元駐在武官の日本での活動は
 「教範」を受け取った在日ロシア大使館のコワリョフ元駐在武官は、これまでに3回の日本での勤務経験があり、日本語も堪能だったということです。
 関係者によりますと、元駐在武官は平成8年から10年、平成16年から20年、それに平成22年から25年の合わせて9年間、日本で勤務していました。
 自衛隊の駐屯地などをたびたび訪れ、2回目の勤務中の平成19年に訪れた陸上自衛隊広報センターでは、自衛隊の装備について「部品は国外の製造か」などと、さまざまな質問をしていたということです。平成22年に都内のホテルで行われた自衛隊の祝賀レセプションには招待されていないのに参加し、自衛隊の幹部と積極的に名刺を交換していたということです。ほかにも一般に公開されているアメリカ海軍横須賀基地の行事に家族と共に参加していたということです。
 コワリョフ元駐在武官と泉元陸将は平成20年、元陸将が東部方面総監だったときに知り合った可能性があるということです。その後3回目の勤務中の平成24年、ロシア大使館のレセプションで退職した泉元陸将と再会して交流を深めたとみられ、「教範」を受け取った直後のおととし5月、帰国したということです。
■元駐在武官 ロシアで自衛隊に関する本出版
 「教範」を受け取った在日ロシア大使館のセルゲイ・コワリョフ元駐在武官は、ことし10月、ロシアで自衛隊に関するロシア語の本を出版しています。「自衛隊」という題名の著作のなかで、コワリョフ元駐在武官は、自衛隊の組織や装備のほか、日本の防衛産業の現状などを詳しく紹介しています。この本は、国際情勢についての研究資料などを扱っている、モスクワにある出版社が1000部発行しており、おもにロシアの国防関係者を対象にしたものとみられます。
■同様の事件 これまで2回
 旧ソビエト時代を含む在日ロシア大使館関係者に自衛官が内部文書などを渡した事件は、これまでに2回ありました。
 35年前の昭和55年、陸上自衛隊の元陸将補が、在職時の部下を通じて手に入れた秘密扱いの内部文書を当時のソビエト大使館の駐在武官に渡したとして、自衛隊法違反の罪で有罪判決が確定しています。
 また平成12年には、海上自衛隊の3等海佐が在日ロシア大使館の駐在武官に秘密扱いの内部文書などを渡したとして、自衛隊法違反の罪で有罪判決が確定しています。
 これら2つの事件に関わった駐在武官は、いずれも情報機関「GRU」=軍参謀本部情報総局の出身とみられ、都内の飲食店などで飲食を共にしたり、数十万円から数百万円の現金を渡したりして情報を得ていたということです。

 ◎上記事は[NHK NEWS WEB]からの転載・引用です
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 産経ニュース 2015.12.4 15:48更新
【陸自元幹部情報漏洩】ロシア武官に情報漏洩した陸上自衛隊将官は常在戦場の「野戦軍司令官タイプ」 パーティーでも迷彩服姿

    

   陸上自衛隊の泉一成・元東部方面総監
 警視庁公安部がロシア大使館の元駐在武官に情報漏洩(ろうえい)した容疑で書類送検した泉一成・元陸将を、防衛省関係者は一様に「野戦軍司令官」に例える。容貌だけでなく、その指揮・統率スタイルがイメージを強めたようだ。
 刈り上げた髪形は自衛官に大勢いるが、他官庁の官僚や経済人と頻繁に接する将官では珍しい。しかも無類の迷彩服好き。駐屯地は言うに及ばす、日常的に防衛省内を迷彩服姿で闊歩(かっぽ)。防衛省関係のパーティーでは、他幹部の通常制服を横目に、迷彩服に半長靴の「実戦態勢」で臨むことも。
 退官直前、東部方面総監の重責を担った。この配置は帝国陸軍でいえば宮城と帝都を守護する「近衛」に連なる。総監時代は短い指揮杖を携行し、隷下部隊を督励してまわったエピソードも有名だ。ちなみに、指揮杖は自衛隊の装備にはなく、私物。乗馬ズボンに騎兵用長靴姿、乗馬鞭を持ち、象牙のグリップを備えたマグナム拳銃を携行…。まさか、オリジナルな外見にこだわった米陸軍のパットン将軍を慕っていたわけではなかろう。
 何よりも、執務室の「会議テーブル」は伝説にさえ成っている。朝鮮戦争時代まで見られた米陸軍の旧型ジープのボンネットなのだ。喫煙はもちろん、幕僚や部下との会議も立ったままで、ボンネットを囲む。ボンネットを開ければ、しゃれたサイドボードに化ける。何より自慢の一品で、転勤先に不可欠な引っ越し荷物だった。
 「第一線に在る」といった信念を掲げていたのか、作戦に対する決心や事務処理の決済が早いのが常であった、という。
 一方で、情報畑の部署に就いた経験も有り、それならそれで脇の甘さが際立つ。「情報を1つ差し出し、2つを得よう」としたかもしれぬ。「情報を2つ差し出し、1つ得る」のであればスパイだが、逆は情報従事者として当然ではある。ただ、防衛省では情報従事者の本格的育成を手掛けてはいない。外国の情報機関員への基本的接触法や機密情報漏洩防止策は習うが、情報の取り方は世界の水準には到底及ばぬレベル。組織内で帝国陸海軍のOBが活躍していた時代には、諜者を育成した中野学校や民間組織を装って東南アジアなどの独立運動を支援した特務機関の経験者が教壇に立ったが、現在はまったくお寒い状況だ。ノウハウがなければ→教官も育てられぬ、悪循環から脱せられないでいる。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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陸自情報漏えい:元陸将ら7人書類送検 自衛隊法違反容疑 「そそのかされた」
 毎日新聞 2015年12月05日 東京朝刊
 陸上自衛隊の元陸将が元在日ロシア大使館付武官に内部冊子「教範」を渡し、情報漏えいしたとされる事件で、元陸将が「武官は研究熱心で、そそのかされて渡してしまった」と供述していることが、捜査関係者への取材で分かった。警視庁公安部は4日、自衛隊法(守秘義務)違反の教唆容疑で泉一成・元陸将(64)とセルゲイ・コワリョフ元武官(50)を書類送検した。【堀智行】

    

 公安部はまた、陸自富士学校長兼富士駐屯地司令の渡部博幸陸将(57)ら40〜58歳の現役陸上自衛官やOBの5人について、泉元陸将の依頼に応じて教範を提供したなどとして同法(守秘義務)違反容疑などで書類送検した。
 泉元陸将の送検容疑は、2013年5月中旬、コワリョフ元武官から部隊の運用方法についてまとめた資料の提供を要求され、現役陸自隊員やOBに「普通科運用」と呼ばれる教範を入手するように依頼。数日後に陸自隊員ら5人を通じて提供された4冊の教範のうち、渡部陸将から譲り受けた新品1冊を東京都千代田区内のホテルでコワリョフ元武官に渡したとしている。
 泉元陸将は容疑を認めている。5人も容疑を認め、「ロシア側に渡るとは思わなかった」と供述している。公安部は外務省を通じ、既に帰国していたコワリョフ元武官の出頭をロシア大使館に要請したが、大使館側から「応じられない」と回答があったという。
 捜査関係者によるとコワリョフ元武官はロシアの情報機関「軍参謀本部情報総局(GRU)」の所属とされ、日本に計9年間勤務した。12年2月にロシア大使館主催のレセプションで泉元陸将に近づき、1年3カ月にわたって都内の飲食店で計8回接触。帰国直前に内部資料の提供を求めたという。泉元陸将は教範の他、陸自習志野駐屯地(千葉県)を紹介するパンフレットや、贈り物の生活家電をコワリョフ元武官に渡したという。
■露元武官、巧みに接近
 ロシア情報機関員の関与が疑われる情報流出事件が7年ぶりに検挙された。今回の事件でコワリョフ元武官は泉元陸将に「(専門だった部隊の運用方法について)教えを請いたい」と接近。「師」と持ち上げて自尊心をくすぐり、懐に入り込んだとみられる。元陸将の「講義」を受ける形で自衛隊や米軍の情報入手を試み、帰国直前の2013年5月には「今まで教えてもらったことをまとめたマニュアルはありませんか」と要求し、教範の入手に成功したという。
 ロシアは近年、情報機関員による活動を強化しているとされ、捜査関係者によると世界各地で年間50件近いスパイ事件が検挙されている。国内の過去の事件でも、外交官などの身分で入国した機関員が防衛情報や最先端技術など多様な情報を集めていた。捜査幹部は今回の事件について「好き放題にさせないというロシアへの警告でもある」と話す。
 ロシアの情報機関はソ連国家保安委員会(KGB)の流れをくむ対外情報庁(SVR)と、戦前に日本の機密をロシアに通報し「世紀のスパイ」と呼ばれたリヒャルト・ゾルゲで有名な軍参謀本部情報総局(GRU)の二つが知られている。
 日本で00年に摘発された事件では、海上自衛隊3佐が在日ロシア大使館付海軍武官に防衛に関する内部資料を要求され、資料を渡し58万円を受け取ったとして逮捕され、有罪が確定した。
 3佐と武官は安全保障に関するシンポジウム会場で知り合い、東京都内のレストランなどで十数回接触。武官はGRU機関員とされる。
 06年、ロシア通商代表部員に社外秘の光学機器を提供したとして会社員が窃盗容疑で書類送検された(起訴猶予処分)。この通商代表部員もGRU機関員とみられ、先端科学技術の展示会で会社員に接触し、酒や現金を提供して要求をエスカレートさせていったという。
■渡部陸将を転属 防衛省
 防衛省は4日、書類送検された渡部博幸陸将を、同日付で陸自富士学校長兼富士駐屯地司令から陸上幕僚監部付に異動させる人事を発表した。事件を受けて同省内に設置された調査委員会の調査対象となり、現在の職務をまっとうできないことを異動の理由としており、実質的な更迭人事。【町田徳丈】

 ◎上記事は[毎日新聞]からの転載・引用です
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『防衛省と外務省 歪んだ二つのインテリジェンス組織』 福山隆著 幻冬舎新書 2013年5月30日 第1刷発行 
◇ インテリジェンスに関わる専門家の育成 / 日本の情報収集の弱さ 中日新聞 《特報》 
国際情報戦の裏側 大使館など対象「公然の秘密」 盗聴反発--実はポーズ? 中日新聞 《特報》
◇ 『動乱のインテリジェンス』著者(対談) 佐藤優×手嶋龍一 新潮新書 2012年11月1日発行 
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