夕歩道(夕刊コラム)
中日新聞 2019年10月16日
「天災は忘れた頃に…」という警句は寺田寅彦の作と伝えられるが、近年はむしろ「天災は忘れる間もなくやってくる」か。結果、彼の残した災害論考も、忘れる間もなく頻繁に引用される次第。
「文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその激烈の度を増す」とは『天災と国防』での指摘。自然の暴威を封じ込めたつもりになるなという昭和初期の警鐘は、令和の世にますます重い。
浸水とは無縁に見えるタワーマンションが地下の電気施設への浸水に屈す。停電に断水。真っ暗な非常階段を上層階まで歩いて上らねばならぬとは、さすがの寅彦の洞察力も及ばぬ事態だろうが。
◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用です