米国、電気いすでの死刑執行 「残酷」か「妥当」か 薬物入手が困難になり…(産経ニュース 2016.1.12)

2016-01-13 | 死刑/重刑(国際)

 産経ニュース 2016.1.12 19:46更新
米国、電気いすでの死刑執行 「残酷」か「妥当」か 薬物入手が困難になり、伝統的な措置に回帰か
 薬物注射による死刑執行が普及している米国で、国際的な死刑制度反対の動きを受けて薬物の調達が困難になっていることに伴い、昔ながらの電気いすで執行しようという州が出てきた。昨年秋には、薬物注射か電気いすか死刑囚本人が選択できる州で、あえて電気いすによる執行を希望する死刑囚も現れ、伝統的な執行方法への関心が高まっている。(米南部テネシー州メンフィス 黒沢潤)
 「残酷だ。高圧電流を使って体を“調理”するのが電気いすなんだぞ」。周囲を威圧するメンフィスのマーク・ラットレル刑務所近くで、近隣住民の男性会社員、テドリック・ワシントンさん(44)が青ざめた表情で語った。
 テネシー州では一昨年5月、ビル・ハスラム知事が電気いすによる死刑執行法に署名した。死刑で使う薬物を入手できない場合、電気いすでの処刑を優先させる州法だ。約15年前から死刑囚は、「比較的苦痛が少なくて“人道的”」という触れ込みの薬物注射か、電気いすのいずれかを選択でき、ほとんどの死刑囚が薬物注射を選んできた。
 テネシー州が同法を制定した背景には、死刑制度に反対する欧州各国が薬品会社に米国への薬物輸出を禁じ、入手が困難になっているという事情がある。州側が他の国々から輸入しようとしても、米食品医薬品局(FDA)から許可を得るのも容易でない。
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 テネシー州で最後に電気いすが使用されたのは07年。それまで47年間使われていなかったが、息子3人と元妻の娘を1997年に射殺した死刑囚が薬物か電気いすかの選択を与えられた後、電気いすを望んだ。
 「バン、という大きな音とともに死刑囚の体が暴力的なまでに宙に浮いた。手は20秒間、肘掛けを硬くつかんだまま真っ赤になった。15秒後に再びバン、という音とともに、体が1回目より高く宙に浮いた…」
 死刑に立ち会った人物の描写について、デイビッド・レイビン弁護士は「非人間的であり、司法制度の『尊厳』を損ねているとしか思えない」と語る。
 米メディアによれば、電気いすを使用した場合、体を固定する装置と接触する皮膚から煙が立ち上って体全体の筋肉がけいれんし、関節もガタガタになる。フロリダ州では90年代、体が燃え上がった例もある。
 テネシー州で89年に電気いすを製作したフレッド・ルヒター氏は2006年、地元紙テネシアンに「電気いすは、火刑柱で(囚人を)焼くのと同じだ」と説明。同州では今、66人がこの極刑を待ち受ける。
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 米国で初の電気いすによる死刑執行は1890年、ニューヨーク州のオーバーン刑務所で行われた。現在、米国内で電気いすでの死刑を採用しているのはテネシーに加え、アラバマ、アーカンソー、フロリダ、ケンタッキー、オクラホマ、サウスカロライナ、バージニアの7州だ。いずれも原則として薬物か電気いすかの選択を認めている。
 米民間団体「死刑情報センター」のリチャード・ディーター事務局長は「(電気いすの使用は)野蛮で尋常ではない」と批判する。ニューヨーク・フォーダム大のデボラ・デノ教授(法学)も「百年前に逆戻りする刑であり、死刑囚が受ける痛みと精神的苦痛は計り知れない」と指摘する。
 これに対し、テネシー州の男性住民(65)は「極悪犯罪の歯止めとして電気いすの使用は妥当だ。無念にも命を落とした犠牲者の苦しみを顧みず、犯罪者の苦痛を考慮するのは本末転倒もはなはだしい」と強調した。
 ただ、薬物注射についても、針を刺すのに失敗するなどして死刑囚に多大な苦痛を与える事例も続発。フロリダ州では薬物注射も「残酷」として違憲訴訟が提起されたが、最高裁は昨年、薬物注射は「合憲」との判断を下している。
【用語解説】米国の死刑制度
 死刑情報センターによれば、2015年に死刑を執行されたのは28人、死刑判決が下されたのは49人。それぞれ1990年代後半から減少傾向にある。15年7月時点の全米の死刑囚の数は2984人。内訳は白人43%、黒人42%、ヒスパニック(中南米)系13%。

 ◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です
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注射された薬物が効かず、死刑は中止 43分間悶絶して死んだ死刑囚 / 米国で再燃する死刑議論 2014-05-24 
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死刑とは何か~刑場の周縁から 新潮社刊『宣告』 中公新書『死刑囚の記録』 角川文庫『死刑執行人の苦悩』
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元連合赤軍死刑囚坂口弘氏の歌 “後ろ手に手錠をされて執行をされる屈辱がたまらなく嫌だ” 2008-08-01 
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