産経ニュース 2016.7.11 03:00
【阿比留瑠比の極言御免・特別編】さあ、憲法改正への橋はかかった 総裁選出馬制限を撤廃し、山積した政治課題にじっくりと取り組め
当選確実となった候補者に花をつける安倍晋三首相(自民党総裁)=10日、東京・永田町の自民党本部(納冨康撮影)
「(憲法改正の国会発議に向けて)しっかりと橋はかかったんだろう。私の(自民党総裁)任期はあと2年だが、憲法改正は自民党としての目標だから落ち着いて取り組みたい」
安倍晋三首相は10日夜、TBS番組でこう述べた。「選挙で改憲の是非が問われていたものではない」とも指摘したが、11日未明には周囲にこうも語った。
「まあ、よかった。接戦区を落としたのは残念だったけど、改憲勢力で3分の2はとれた」
選挙戦を通じ、安倍首相は「3年前の前回参院選より聴衆の反応ははるかにいい」と手応えを感じ、一定の勝利を確信していたのだろう。接戦区での競り負けが目立ち課題は残したものの、「最初はもっと引き離されていた選挙区」(政府高官)であり、改憲勢力で3分の2の議席確保を実現できたのは大きい。
平成24年の衆院選、25年の参院選、26年の衆院選と安倍首相率いる自民党は大勝を重ねてきた。そして民進、共産など4野党のなりふり構わない共闘を突き破っての今回の結果である。首相はこう自負ものぞかせている。
「国政選挙で4連勝した首相は、戦後初めてじゃないかな」
今後は、より強固となった政権基盤をもとに何に取り組むかが問われる。アベノミクスの加速をはじめとする景気回復への諸施策はもちろん、拉致問題や北方領土問題の解決など重要課題は山積だ。何より、今回得た議席を直接的に生かせるのは憲法改正である。
「今回の参院選勝利による任期延長というより、自民党の党則を改正して総裁選の立候補制限(2期まで)をやめることならありえるだろう。それなら総裁選も開かれるから公正だ」
安倍首相の周辺からは、こんな観測も漏れている。中曽根康弘元首相は昭和61年7月に衆参同日選で圧勝した際には、党両院議員総会が任期1年延長を認めた。だが、そんな不規則な形ではなく、堂々と党則改正で3期目を目指すべきではないかとの見解だ。
これは、安倍首相の改憲戦略とも密接に関係する。首相の党総裁任期は平成30年9月までで、それまでに憲法審査会での論議を経て各党の意見をまとめ、国会発議に持ち込み、さらに国民投票を実施するというのはスケジュール的に困難だ。
だが、仮にもう3年の任期があれば、状況は一変する。問題は、30年12月までが任期の衆院をいつ解散し、総選挙に打ってでるかだ。安倍首相は、積み重ねた選挙実績と、手に握る「解散カード」で党内での求心力を維持しつつ、衆院での与党3分の2議席再確保をにらんでベストのタイミングを探ることになる。
(論説委員兼政治部編集委員・阿比留瑠比)
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です