能楽堂 貴重な舞台守れ つり天井修理 各地で休館  2023.12.16

2023-12-16 | 本/演劇…など

能楽堂 貴重な舞台守れ つり天井修理 各地で休館 休館中に能・狂言PR
 2023年12月16日 中日新聞  Culture 

能舞台の上に広がる特定天井=名古屋・三の丸の名古屋能楽堂で

能舞台の上に広がる特定天井=名古屋・三の丸の名古屋能楽堂で

 

 2024年4月から、名古屋・三の丸の名古屋能楽堂が10月末まで休館する。愛知県の豊田市コンサートホール・能楽堂も25年4月から1年2カ月間の休館を予定するなど近年、各地の能楽堂で改修工事による長期休館が相次ぐ。なぜ時期が集中しているのか。休館中の公演は。(堀井聡子)
 日本最大級の630席ある見所(客席)の中心に、名古屋城と同じ総木曽ひのき造りの能舞台がある名古屋能楽堂。1997(平成9)年に開館した。寺脇慎介館長は「舞台そのものが芸術品」と語る。各地で工事の中心となっているのは、そんな能舞台の上に広がるつり天井だ。

法改正で耐震工事
 背景には、東日本大震災をきっかけとした建築基準法の改正がある。地震発生時、屋根裏などから枠組みをつり下げる、大型のつり天井が落下して被害が拡大した。2013年の法改正で、高さや広さ、質量が基準を超え、日常的に人が利用する場所にあるつり天井を「特定天井」と定義し、脱落対策を取ることが義務付けられた。

 特定天井は、体育館や音楽ホールなどの大型施設にもある。各自治体が、築年数や防災拠点として使われるかなどを踏まえて順次対策工事を進める中で、同じような時期に能楽堂の順番が回ってきた。ただ、能楽堂は建物の中に屋根付きの舞台がある特殊な構造であることから、工事は舞台を保護しながら進めなければならない。寺脇館長は「能舞台を修理できる人は非常に少ない。傷つければ修繕費も大きい」と話す。
 中でも休館が24年1月から2年半に及ぶ横浜能楽堂(横浜市)の舞台は、1875(明治8)年に建てられた「旧染井能舞台」を移築したもので、関東最古。明治維新の影響で衰退していた能楽の普及に一役買ったことでも知られ、市有形文化財に指定されている。天井工事の足場を組むため、当初は舞台を一度解体することも検討されたが、市文化振興課は「舞台は温度や湿度の変化に弱い。復元する過程で傷つけるリスクがある」として、舞台を解体せずに養生しながら工事をすることにした。足場は床に作らず、天井からつるす。
 必須の改修工事だが、悩ましいのは休館中の代替施設が限られることだ。例えば、東海3県で屋内にある公設の能楽堂は、名古屋と豊田の2カ所。他は私設で小規模だったり、山あいにあったりする。1998(平成10)年に開館した豊田市能楽堂は458席と中規模サイズだ。豊田市文化振興課の担当者は「両方の休館時期が重ならないよう調整した」と話す。

公演休止や前倒し

 名古屋の休館を受け、宝生流シテ方能楽師の衣斐愛は自身の公演「逢(あい)の会」の会場を、来年は豊田に変更する。一方、狂言共同社は毎年7月に開いている「御洒落(おしゃらく)名匠狂言会」を、来年は3月に前倒し、代表の井上松次郎は「名古屋周辺のお客さんは、なかなか豊田まで足を運ばない。名古屋市内のホールを探すことも考えたが、やはり能楽堂独特の雰囲気とは異なる」と理由を説明した。
 能楽堂の主催公演も休止や別の会場での開催が求められる。名古屋は定期公演を休止し、横浜は市内のホールなどで上演する予定。老朽化で大規模改修している喜多流の喜多能楽堂(東京・品川)は、今月以降の主催公演を観世流の観世能楽堂(東京・銀座)で開く。

 豊田は未定だが、担当者は「能楽堂が閉まるからこそできることを考えたい」。休館を経て、伝統の芸と舞台をつないでいく。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用。及び書き写し(来栖)


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