【安倍晋三首相会見】 2013/6/26 今国会が閉会

2013-06-26 | 政治

【安倍晋三首相会見】
産経新聞2013.6.26 18:54
 安倍晋三首相は26日、今国会が閉会したことを受け、官邸で記者会見を行った。詳細は次の通り。
          ◇
 「本日、通常国会が閉会をいたしました。この言葉をこの場所で申し上げるのは2度目であります。1度目は6年前、その直後の参院選に大敗し、その後、総理の職を辞することになりました。あのときの挫折を私は深く胸に刻み込みました。来るべき参院選、いまの私の気持ちを率直に申し上げれば、チャレンジャーとしての緊張感、それに尽きます」
 「この半年間、全力で駆け抜けてまいりました。半年前を思い出していただきたい。長引くデフレ、経済の低迷、外交力を失い主権に対する挑発が相次ぐ事態、いじめなど教育の危機も叫ばれ、そして遅れる復興、『なんとかしてほしい』。その国民の声におされて、私たちは再び政権を取り戻すことができました。3本の矢の経済政策は昨年のマイナス成長を今年のプラス成長へ大きく反転させた。生産も消費も雇用も経済をあらわす指標はことごとく改善をしています。毎月、被災地を訪問し地道に一歩一歩、復興を加速させてきた」
 「さらに米国をはじめ東南アジア、ロシア、中東、ヨーロッパなどの重要な国々を訪れ、世界地図を俯瞰(ふかん)する外交を進めてまいりました。どうでしょうか、半年前、世の中を覆っていた暗く重い空気は一変したのではないでしょうか。政権発足から今日でちょうど半年。安倍内閣を強固な連立で支えてくれた自民党、そして公明党の関係者の皆様に御礼を申し上げます。そして何よりも温かい激励と支援をくださった国民の皆様に心から感謝申し上げたいと思います。先日のイギリスでのG8サミットでは、日本の経済政策に世界の関心が集まりました。日本は再び世界の真ん中に踊り出すことができる、そう感じたサミットでありました。G8各国がこぞって3本の矢の経済政策を高く評価してくれました。私たちの政策は間違っていない、この道しかない、そう確信しています」
 「しかし、まだ実感できていない。これが国民の皆様の正直な気持ちだと思います。景気回復を全国津々浦々に至るまで実感していただきたい。経済政策もこれからが正念場です。要はぶれることなく実行できるかどうか、私はとことんやり抜く覚悟です。ですから、この参院選は負けるわけにはいきません。必ずやねじれを解消しなければなりません、そう決意しています」
 「今国会においては、いくつかの重要な政策を前に進めることができませんでした。私の成長戦略を支える電力自由化や再生医療の促進のための法案、NSC法案など多くの重要な法案がねじれ国会のもので不成立となりました。まことに残念です。とりわけ裁判所で違憲とされた一票の格差の是正、いわゆる0増5減法案はねじれに翻弄されました。0増5減法案には昨年、民主党も賛成しました。にもかかわらず、区割り法案は民主党が第一党を占める参院で60日以上にわたって放置されてしまいました。可決も否決もしない。意思決定すらされませんでした」
 「定数削減の方が重要だという意見もありました。しかしそのことは、違憲状態を是正する0増5減をやらないという理由にはなりません。まさに決められない政治、そして迷走する政治。これがねじれです。そのため、今週、衆院の再議決を行いました。参院の意志が示されない以上、違憲状態を是正するためやも得ない、そう判断を致しました。定数削減を含む選挙制度改正についても与党案を提示し議論を積極的にリードしてきましたが、今国会で結論を得ることができませんでした」
 「民主主義の土俵である選挙制度は大政党だけで決めるのではなく、少数政党の意見も尊重することが重要です。しかし各党、各会派の立場が大きく異なるため議論が進まなかった。これが実態でありました。こうした膠着(こうちゃく)状況を何としても打開をしていかなければなりません。選挙制度について民間の有識者が冷静かつ客観的な議論を行う第三者機関を国会に設けることを提案致します。各党、各会派がその結論を尊重して改革を前に進めていくという仕組みです。各党、各会派に対してこうした提案を行うよう、すでに党に対して指示を致しました。選挙制度改革でも必ずや結果を出したい、そう考えています」
 「そもそもねじれを生み出したのはこの私です。6年前の参院選で敗北をした。その敗北がすべての始まりでした。政治は迷走し、毎年、私を含めてコロコロ首相が代わり、日本の国力が大きく失われました。痛恨の思いです。日本のため、このねじれに終止符を打たねばなりません。その責任が私にはある、そう覚悟をしております」
 「昨年の総選挙において私たちは再び政権に戻り、世の中の雰囲気は一変しました。実体経済は明らかに好転をしています。国民の皆さん、皆さんの力で、政治は変わりました。皆さんの力で経済は変わりました。そして社会も変わっていきます。その力が、国民の皆さんにはあります。来るべき参院選でねじれに終止符を打って、安定した政治の下で、皆さんと一緒に新しい日本の未来を切り開いていこうではありませんか。誇りある国、日本を共につくっていこうではありませんか。そのことを最後にお願いをして、国会閉会にあたっての私の冒頭発言とします。私からは以上であります」

--半年間を振り返って成果と課題は。参院で可決された首相に対する問責決議の受け止めと、参院選の獲得議席の目標は
 「昨年の総選挙において私は長引くデフレ、そして経済の低迷。われわれはその中からデフレから脱却をし、そして日本の経済を成長させていく、そう国民の皆様に訴えました。同時に外交敗北によって日本の外交力、これは大きく失われたわけであります。その中において、日本のいわば領土・領海、主権が脅かされようとしていた。教育の危機の叫ばれていましたし、遅々として進まない復興、その中において、これを何とかしろ、それに対して私たちは責任を持って前に進めていきます。そのことによってわれわれは政権に復帰をしたわけであります」
 「昨年の7月、8月、9月、経済はマイナス3.6%。まさにマイナス成長だった。成長していくどころか、日本の富は、国民の富は失われていました。それを新たに三本の矢でもって、次元の違う政策でもって1月、2月、3月はプラス4.1%。マイナスからプラスに変えることができました。そして4月の有効(求人)倍率においては、まさにリーマンショック前に戻すことができました。ある意味、民主党政権時代、3年かかってできなかったことを半年間で、短い期間ではありましたが、しかし達成することができた。つまり、まさにもう成長していくことができないのではないかと自信を失っていた中であって、これから私たちは再びまさに日本を世界の真ん中で活躍する国にできるかもしれないという自信を回復しつつある。そこまで来ることができたと私は思っています」
 「しかし、まだまだ実感できていないという方々がおられるのも事実であります。まさに全国津々浦々までしっかりと景気は回復していく。日本は今年よりも来年良くなっていく。この地域も良くなっていくと実感していただくように、全力を尽くしていきたいと思います」
 「きょう(参院で)問責決議が可決をされました。まさに、これこそがねじれの象徴だと思います。このことによって、この問責決議によって、残念ながら電力改革のための法案(電気事業法改正案)など重要な法案が廃案となってしまいました。景気を回復させていくためにも、まさに日本はグローバルな競争をいま戦っているわけでありまして、その中で勝ち抜いていくためには、スピード感が必要です。このスピード感を取り戻していくためにも、景気回復を加速させていく。加速させていくためにも、ねじれを解消しなければいけない。その決意を新たにしたところであります」
--誇りある日本をつくるために、どのような政策を中長期的な政権運営の柱にすえるのか。憲法のどの条文、条項を改正、改正に向けた道筋を付けることが重要と考えるか
 「まず、はじめにこの参院選において、ねじれを解消して政治の安定を取り戻さなければ、日本の国力が回復しない。これは間違いないんだろうと思います。そのために私は全力を尽くしていきたいし、その責任が私にあります。そこでこの参院選でねじれを解消する。つまり与党で過半数を目指していきたいと、こう考えています。その上において、日本は15年間、デフレ経済が続いてきました。このデフレから脱却するために、次元の違う政策をいま行っています」
 「しかし、15年間デフレが続いた国が、デフレから脱却をする。これは大事業なんですね。歴史的な大事業だといってもいい。そう簡単なことではないと私は認識をして、覚悟をしています。すぐにそれが達成されるという問題ではありませんから。まずはこの3年間、政治の安定を得た3年間、基本的にはそこに集中していく。経済の力を失った国は、国力を維持できませんから、外交・安全保障においても力を発揮することはできません。国の力をしっかりと確保していくうえにおいて、強い経済力を勝ち得ることが必要ですね。そこにまず基本的は集中していきたいし、そう簡単なことではないんだろうと思っています。同時にいまおっしゃった国の形をつくっていく、憲法改正、これは(自民党の)立党以来の理念です。当然この憲法の改正にも取り組んでまいります」
 「まずですね。憲法改正については私は先の衆院選で96条から始めたいと申し上げました。そのことによって、いわばわれわれが憲法の議論をリードすることができたことによって、憲法改正、これはあまりリアリティーを持った議論ではなかったんですね。初めてリアリティーを持った議論、現実に憲法改正というのは段々現実的に政治課題として、これはあらわれつつある。国民のみなさまにも認識していただいたという意味においては、まず第1段階の目的は私は達成できたと、こう思っているんです。その上において、次は国民投票法が先の第1次安倍政権において成立しましたが、この国民投票を実施するための投票権をですね、18歳の年齢に引き下げていくための法整備があります」
 「民法の権利義務との関係も含めてどう考えていくかということを議論していかなければならないし、あるいはまた国民投票に付するものを憲法のまさに逐条的な改正案だけに限るのかどうかということも含めて議論しなければいけませんし、公務員、この3つの課題が宿題として残っておりますが、これがまだ解決されていない。これを解決しない限り、国民投票できませんから、当然やっていく必要があるんだろうなと思います。その上において、憲法改正というのは、普通の法律は国会で2分の1の議員が賛成すれば、これで完結するが、憲法の場合、これはわれわれの改正案においてもそうなんですが、2分の1の国民のみなさまに賛成していただかなければ、投票数の2分の1、過半数がなければいわば憲法を改正できない。つまり決めるのは国民の皆さんなんですね」
 「これがいわば一般の法律とは基本的に国会で可決するものと、国民のみなさまが直接決めるもの。つまり国民のみなさまの中において、議論がどれぐらい深く、広く、この議論が深まっているか、広がっているか、あるいは変えていく方向について共有されているかということが大切なんだろうと思います。そういうものをよく見ながら、国民のみなさまの理解と平仄(ひょうそく)をあわせて、条文をどういうふうに変えていくか。それが果たしてどの条文なのかということを含めて、われわれ慎重によく議論していく必要があるんだろうと、このように思います」
--原発政策に関して聞くが、世論調査では将来的に脱原発だ。原発輸出に反対する有権者も多い。国民が向かいたい方向と、政府が向かおうとする方向にずれがあるが、どう思うか
 「今後、原子力政策を進めていく上において、あの過酷事故で、いまだに避難生活を強いられている方々がたくさんいらっしゃることを忘れてはならないと思います。その方々のお気持ちを常に念頭に置きながら政策は進めていかなくてはならないと私は肝に銘じております。当然、原発については安全第一が原則であります。その安全性については原子力規制委員会の専門家に判断を委ね、新規制基準を満たさない限り再稼働については再稼働しない。これが基本的な私たちの立場であります」
 「原発輸出についてはですね、東京電力福島第1原発事故の経験と教訓を世界で共有することによって、世界の原子力安全の向上に貢献をしていく。そのことがわが国の責務であるというふうに私は考えています。今般の中東や東欧への訪問においても、各国からわが国への原子力技術への高い評価があったのは事実であります。原子力輸出についてはこうした相手国の意向や事情を踏まえながら、わが国の技術を提供していく考えであります」
  (完)
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