【感染症と格差】新型コロナウイルスの被害が経済的および社会的弱者に対して より深刻にあらわれる 2020.4.19

2020-04-20 | 文化 思索

感染症と格差

  2020.4.19 中日新聞朝刊

 「中日新聞を読んで」 武田宏子
 「4月は最も残酷な月」というのはT・S・エリオットによる『荒地』の出だしのフレーズである。実際、新型コロナウイルスの被害の拡大で、2020年4月は世界的に特に残酷な月になっている。7日以来、緊急事態宣言が複数の都市で出された。通常であればこの時期、新入生で混み合う大学の広いキャンパスは静まりかえっていて、そんな様子に『荒地』のフレーズをつい何度もつぶやいてしまう。
 今回のパンデミックの被害が特に残酷であることの一端は、9日朝刊の記事「米 感染者にじむ経済格差」からも読み取れる。米国の新型コロナウイルス感染者・死亡者数は3月以来、「指数関数的」に増加し、現在では最も甚大な被害が発生した国になっている。記事ではそうした米国での感染者・死亡者数において黒人の比率が明らかに高いことを指摘して、その背後に黒人が「低い社会経済的地位に置かれやすい」ことや「心疾患や糖尿病の罹患率」の高さから高リスクの者が多いという事情が存在していると説明している。
 新型コロナウイルスの被害が経済的および社会的弱者に対してより深刻にあらわれることは、米国のみではなく、現在、世界的に議論されている。例えば、皇太子と首相が感染した英国では、一時期、誰しもが「平等に」ウイルスへ感染するという言説が出回ったが、実際のところは、スーパーのレジ係などの接客業や公共交通機関の職員、ケアワーカーなど、実際に職場に行って作業をしなければならない労働者の間で感染が多発している。これらの職種では、一般的に、人種的マイノリティに属する労働者の割合が高く、しかも賃金水準が相対的に低い。したがって、感染拡大は社会的・経済的格差をもって進行しており、だからこそ、「コロナ後の社会」を構想するためには経済的不平等の問題への取り組みが不可欠であると議論されている。
 類似の状況は日本でも観察できるように見える。日本の文脈では具体的にどのような取り組みが必要なのか。ぜひ、中日新聞の記事で読んでみたい。(名古屋大教授)

 ◎上記事は[中日新聞]からの書き写し(=来栖)


【新型コロナウイルス】想起されるペスト(黒死病)=欧州、2500万~3000万人が亡くなった ユダヤ人への迫害が激化


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。