まるで生き地獄 「家族が死んでも面会させない」後見人の驚愕実態 成年後見人制度の深すぎる闇⑩ 2017/10/25

2017-10-25 | Life 死と隣合わせ

 2017/10/25 現代ビジネス  
まるで生き地獄…「家族が死んでも面会させない」後見人の驚愕実態 成年後見人制度の深すぎる闇
 長谷川 学 ジャーナリスト
 本人も家族も、一切同意していないのに、家裁に勝手に後見人をつけられ、自由を奪われた母親と、その2人の娘が、後見人をつける手続きをした桑名市(三重県・伊藤徳宇市長)などを相手取り、2017年10月中にも損害賠償請求訴訟を起こす。
 国が推進する成年後見制度を巡って、自治体相手の国家賠償請求訴訟が起こされるのは全国で初めてだ。
 (法的問題などを詳述した関連記事はこちらから
 今回は、その家族の証言をもとに、桑名市や後見人に指名された弁護士が行った、驚くべき家族への対応について、詳しくお伝えしたい。
■母親を取り戻すため、仕事まで失って…
 行政の独善で、悲劇の年月を送ることになった一家。もともと、母親は次女と実家で2人暮らしをしていた。父親は病気治療のため、姉夫婦の家で暮らしていた。
 母親は、軽度の認知症はあるものの肉体的には元気で、散歩や身体を動かすのを好んでいた。そのため次女は、家の中では、できるだけ母親の好きなようにさせていた。
 活発に歩き回る母親は、時折、家の中で転んで手足や顔に軽いケガを負うことがあった。だが、この程度のことは在宅介護の現場ではよくあることだ。
 ところが2016年9月4日、母親がデイケア施設に出かけると、桑名市の職員が母親の身柄を無断で移し、どこかに連れ去ってしまったのだ。いったい、どういうことだったのか。次女が証言する。
 「母は、脳梗塞の予防薬(注・血液の凝固を抑制する薬)を飲んでいたため、ちょっとしたケガでも血が止まりにくく、アザやコブができやすかったのです。ところが、役所はそれを私の虐待だと決めつけ、母を連れ去ってしまいました。
 私は、母がケガをすれば病院に連れていって診察を受けさせていました。それに、母は外出が好きなので、積極的にデイケアにも通わせていたんです。
 もし本当に虐待をしていたなら、病院には連れていかないし、ケガを知られるのを恐れてデイケアにも行かせないのではないでしょうか。
 それなのに、役所は虐待と決めつけて、拉致するように母を連れ去り、施設に閉じ込めた上、勝手に後見人までつけてしまったんです」
 役所は次女に対し、「虐待だと認定しているわけではない」と説明したが、実際は虐待と決めつけ「一時保護」を名目に、2人の娘や父親の同意も得ず、後見人までつけてしまった。
 その後、2ヵ月間、家族は母親の居場所すら教えてもらえず、自分たちの力であてどなく施設などを探し歩いたという。
 「母を取り戻すために、私は仕事を辞めざるを得ませんでした」(次女)
 家族はのちに知ることになるのだが、母親を施設に入れた時点ですでに、役所は母親の「財産権」を奪おうとしていた。少々専門的になるが、役所は後見人をつけるよう家庭裁判所に申し立てる前段階、つまり後見開始審判前に、「保全処分」として母親の財産管理者の選任を申し立てたのだ。
 これに応じて家裁は、管理者となる弁護士を選任している。母親を施設に押し込めるとともに、母親の資産から施設費用を払わせるためだったとみられる。
 この弁護士は母親に、施設からの外出禁止と面会の制限を通告した。施設側も唯々諾々とそれに従った。
 だが法律上、財産管理者はもちろん、より強い権力を持つ後見人であっても、被後見人(後見を受ける人)の外出や面会を制限したり禁止したりする権限はない。
 認知症などで判断能力が衰えた高齢者が、誤った判断をしたり、他人に騙されたりして、生活に必要な資産を失ってしまわないよう、その財産権を肩代わりして管理するというのが、本来の後見人の職務なのである。
 その人の全行動、人格を支配し、命令しようなどというのは、明らかに越権行為だ。
強制的に「生活保護」まで受けさせられた
 無理やり施設に入れられた母親は、家族とは引き離されていたが、たった一人で孤独な闘いを始めた。母親は施設暮らしを嫌がり、「拉致された」「早く家に帰りたい」と抗議を繰り返し、施設費用の支払いも拒否したのだ。
 役所や弁護士の思惑では、財産管理者の言いなりにさせて、母親の資産から施設費用を支払わせるつもりだったのだろう。だが後見人より権限の弱い財産管理者は、本人の同意がなければカネを動かすことができない。
 このため、問題となったのが施設費用の支払い方法だった。そこで弁護士と役所は、驚くべき手に出る。なんと、後見人が選任されるまでの2ヵ月間、母親に生活保護を受けさせ、そこから施設の費用を捻出したのである。
 さらに開いた口がふさがらないことに、この費用について役所側はのちに、こんな要求をしてきたという。
 「生活保護費から出た、この施設利用費用については、あとで市から『立て替えたものであるから返すように』と言われて、返済させられたんです」(次女)
 自分たちの勝手な思い込みで母親を施設に押し込み、本来は不要だった施設費用を、役所が動かしやすい生活保護から勝手に支払っておいて、「立て替えてやったのだから、家族が払え」というのである。
 こうして、施設に押し込められた母親は、慣れ親しんだ自宅から突然、見知らぬ施設に連れ去られ、精神的ストレスから一時的に認知症が悪化した。環境の急激な変化が認知症を悪化させる大きな要因であることは、よく知られている。
 役所は母親がそのような状態になってから医師の診察を受けさせ、「後見相当」「日常的に介助を要する」との診断を得た。それに基づいて、津家裁四日市支部に後見開始を申し立て、家裁は後見開始の審判をしたのだ。
 だがこの審判では、法律上、本来は必要だとされている専門医による精神鑑定の過程がスキップされてしまっていた。
 「医師の診断書には、母が判断力をなくしていると書かれていましたが、自宅にいたときはそんなことはありませんでした。家族から引き離され、施設に入れられて、一時的に精神のバランスを崩したのは間違いないと思います」(次女)
 この家裁の審判に対し、長女が名古屋高裁に即時抗告。その結果、高裁は専門医の鑑定を行わなかった審判の手続きには「違法があった」と認定、母親の状態は「高度の認知症を示すものとまでは言えない」として家裁の判断を退け、審判を取り消す判決を出した。2017年1月10日のことだ。
 その後、桑名市が渋々、申請を取り下げたことは前回、お伝えした通りである(現代ビジネス2017年10月13日掲載「『悪夢のような成年後見制度』役所を訴えた、ある娘の告白」)。
■「家族が死のうが会わせない」
 だが、今回お伝えしたいのは、その過程で、役所や後見人となった弁護士がとった対応だ。
 長女が特別抗告を提出した2016年10月末、母親と暮らしていた次女が、後見人弁護士に母親との面会を求めた。このとき、後見人は驚くべき発言をしたと次女は明かしてくれた。
 「弁護士はこう言ったんです。『もし家族に不幸があったとしても、外出など一切認められない。会えないままで家族が死んでも致し方ない』と」
 その後、長女と父親が、一連の騒動が起きてから初めて、母親と面会することができたのだが、面会の場所はなぜか入所している施設ではなく、市役所の一室だった。
 虐待していると決めつけられていた次女は、このときも同席を許されていない。
 「父と姉は、このときの会話を録音していましたが、母は終始、しっかりとしていました。記憶も鮮明で、話の筋道も通っていたんです。この録音を書き起こした文書を証拠として名古屋高裁に提出したことが決め手となって、後見不要という判決が出たのだと思います。
 面会の場には、後見人の弁護士や、市役所の出先機関の地域包括センターの担当者が同席していました。姉と父は、母への面会を許可する条件として、一時保護の経緯や私の『虐待』について母に質問することを禁じられていました。
 でも母は、自分から進んで『無理やりに連れていかれたの。家族が迎えに来てくれるのは待ち焦がれていた』と話し、私の姿が見えないことについても『なぜいないの』と心配していました」(次女)
 それから2週間ほどして、長女が一時的に母親を自宅に連れ帰ったため、次女は役所に母親が突然、連れ去られて以来、初めて会うことができた。この時点でも、役所側は虐待を主張し、次女が単独で母親と会うことを拒んでいたのだ。この一時帰宅の際も母親は「施設には何度も『帰りたい』と言っているが、ずっと無視されている」などと話したという。
 そうこうするうち、2016年も年末を迎えた。母娘は「正月くらいは自宅で家族一緒に過ごしたい」と強く求めた。だが、包括支援センターの担当者は不条理にも「1泊しか許可しない。無理を言うなら外泊そのものを許可しない」と強硬な態度を崩さなかった。
■徒党を組んで家に押しかけ警察沙汰に
 そして年が明けた1月10日には、名古屋高裁が審判取り消しの判決を出したのだが、あきれたことにその後も役所や後見人(この時点では、まだ役所や後見人側は争う姿勢を見せており、引き続き後見人として振る舞っていた)は、家族への干渉を続けたのである。
 たとえば、1月30日。次女と母親は外泊許可を取り、温泉施設に行った。すると母親の身体に打ちみのような新しいアザがあったという。
 「母に聞いたら、施設にいる他の利用者から暴力を振るわれたというんです。そんな話は、弁護士や市からは一度も聞いていなかったので驚きました。それで姉と相談して母を施設に戻さないと決め、後見人や市役所にもそう伝えた上で、母と自宅に帰りました。
 ところがその日の夜、包括支援センターの担当者2名と後見人弁護士が自宅に押しかけてきて、ずっと呼び鈴を連打し、大声で母の名前を連呼しながら、ドアを激しく叩き続けました。
 特別抗告の裁判のときにお世話になった、こちら側の弁護士さんに電話で相談すると、『警察を呼んだほうがいい』ということだったので、そうしました。
 パトカーが来て、私が警察の方に事情を説明すると、警察が後見人や役所の方々を説得してくれて、ようやく彼らは引き上げました。彼らが家に押しかけてきてから、引き上げるまで4時間ほどかかりました。
 私たちとしては、もうこれ以上、役所や弁護士後見人の不当な介入に我慢できないと思って、役所の手が届かない三重県内の別の市に母を移しました。姉が住んでいるところです。
 引っ越し先の市役所の担当者の方は、桑名市と後見人のやり方をお話しすると、『うちの市ではそんなことはしない。やりすぎだ』と目を丸くしていました」(次女)
■最後の最後までカネをむしり取る
 名古屋高裁の判決に加え、被後見人である母親が遠方に引っ越したことを受け、弁護士も後見人を辞任せざるを得なくなった。
 ところが、それでも愕然とする事態が家族を襲う。高裁判決による審判取り消し以降、この弁護士は後見人として何の仕事もしていなかったにもかかわらず、「(家裁に後見人として選任された2016年12月から)2017年6月分までの7ヵ月分の後見報酬14万円を、母の口座から引き出していたんです」(次女)。
 たしかに、表向きこの弁護士は2017年7月になるまで、「後見人」ではあり続けたのである。高裁による審判取り消し、および津家裁への差し戻し判決後も、役所側は後見制度を利用させることに執着していた。
 そして今年6月に認知症の専門医が「後見不要」「後見制度を利用するにしても一番症状の軽い人の向けの『補助相当』」という鑑定を出すと、なんと役所側はそれを逆手に取り、6月9日に今度は後見人ではなく補助人をつけさせるべく、補助開始の申請を家裁に出したのだ。
 だが、後見人とちがって補助人は、本人の同意がなければ強制的につけることができない。母親に一貫して補助利用を拒否され、役所側は結局、今年7月になってから申請を取り下げた。弁護士は、この取り下げまでの報酬を取っていったのだ。
 次女は、突然、役所や弁護士と闘わざるを得ない状況に追い込まれた、この10ヵ月間を振り返って、「生き地獄だった」と話す。
 認知症や精神障害を抱えて、判断力の衰えた人を「守る」ために作られたはずの、成年後見制度。だが、その運用の実態を見ると、思い込みや独善、ときには悪意も疑われるような動機から、自分の立場を利用して高齢者や家族の自由を奪い、その命さえも軽視する発言をしてはばからない、横暴な弁護士や役所の人間の存在が浮かび上がってくる。
 急速に高齢化が進むこの国で、ほんとうに高齢者を守るためには、何が必要なのか。成年後見制度を続ける道を選ぶならば、せめて、その運用が適切に行われているかをチェックする、第三者的な機関を創設するべきではないのだろうか。とにもかくにも、このままでいいはずがないのだから。 

 ◎上記事は[現代ビジネス]からの転載・引用です
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裁判官らが成年後見制度を説明 26日に岡山弁護士会館
 岡山地裁、岡山家裁と岡山弁護士会は26日、判断能力が十分でない人たちの財産や権利を守る「成年後見制度」の説明会を岡山市北区南方の岡山弁護士会館で開く。
  裁判官と弁護士が制度の概要をはじめ、利用促進に向けた取り組みを解説する。消費者被害など弁護士会が開設する各種法律相談窓口の紹介もある。
  午後1時半~4時。定員は先着50人。問い合わせ、申し込みは岡山家裁総務課文書係(086―222―6771)。
(2017年10月24日 21時47分 更新) 

 ◎上記事は[山陽新聞]からの転載・引用です 
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