2016.2.6 05:04更新
【産経抄】自衛隊の憲法解釈、率先して動くべきは誰か 2月6日
憲法学者の約7割が、自衛隊は違憲または違憲の恐れがあると判断しているという。この問題が国会で取り上げられ、安倍晋三首相は憲法改正によって「(そんな)状況をなくすべきではないかという考え方もある」と指摘した。
▼現在の政府解釈では自衛隊は合憲だが、憲法9条2項にはこう書かれている。「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」。条文を素直に読めば、確かに合憲と受け取るのは難しい。自衛隊を軍でも戦力でもないと言い張るのは、やむを得なくてもいっそむなしい。
▼「自衛権発動としての戦争も交戦権も放棄した」。昭和21年6月には、当時の吉田茂首相もこう答弁している。これがもともとの政府の9条解釈だった。「国土を防衛する手段として武力を行使することは憲法に違反しない」と大転換したのは自衛隊が発足した29年のことである。
▼「このままにしていくことこそ、立憲主義を空洞化する」。自民党の稲田朋美政調会長が、3日の衆院予算委員会でこう問いかけたのは道理にかなう。誰が見ても無理がある解釈の積み重ねで切り抜けるばかりでは、憲法自体の信頼性を損なうことだろう。
▼「今や自衛隊に対する国民の支持は揺るぎない」(安倍首相)。厳しい国際情勢を持ち出すまでもなく、もとより自衛隊の解消という選択肢は採り得ない。そうであれば、憲法を改正して自衛隊をきちんと位置付けるべきなのは当然である。
▼解せないのは、自衛隊違憲論を主張する憲法学者や、専門家の意見を尊重しろと声高に訴えてきた野党議員らの態度である。彼らこそ、憲法と自衛隊が矛盾したり、矛盾が疑われたりしないよう率先して改憲を求めていいはずだが。
◎上記事は[産経新聞]からの転載・引用です