シェワルナゼ氏 グルジア紛争「背後に露民族主義者」
9月11日22時14分配信 毎日新聞
【トビリシ杉尾直哉】旧ソ連最後の外相で、グルジア前大統領のエドアルド・シェワルナゼ氏(80)が11日、トビリシの自宅で毎日新聞と単独会見した。ロシアが8月にグルジアに侵攻した問題について、「ロシアと戦って勝とうと思ったサーカシビリ大統領の判断は誤りだ」と述べる一方、「モスクワの民族主義者、ショービニスト(狂信的愛国主義者)の存在が背後にある」と述べ、ロシア側が入念に攻撃を準備していたとの考えを強く示唆した。
ロシアが南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立を一方的に承認したことについては、「今後、ロシア国内のチェチェン、イングーシ、ダゲスタン、タタールスタンなどの共和国の独立運動に火が付く。ロシアは大きな過ちを犯した」と指摘した。
シェワルナゼ氏は、南オセチアとアブハジアの民族問題の起源について、「(旧ソ連指導者の)フルシチョフ時代にさかのぼる。彼はグルジア指導部に対し『モスクワに従わないのならアブハジアを反抗させるぞ』と脅した」と指摘。グルジアを支配するためロシアが故意に作り出した問題との認識を示した。
また「90年代にアブハジア独立紛争が起こった当時、アブハズ人の人口は17%、グルジア人が50%だった。少数派のアブハズ人がグルジア人を追い出すことができたのはロシアの強い軍事支援があったためだ。当時と比べ、今のロシアのショービニストはさらにひどくなった」と述べた。
この日、7年目を迎えた米同時多発テロに触れ「テロリズムは最悪だ。だが、同等にひどい問題が分離主義だ。世界には3000の言語があるが、すべての民族の独立を認めれば無政府状態となる」と述べた。
今回の紛争をきっかけに欧米諸国や日本がグルジア支持を強く打ち出し、ロシアの孤立が深まっていることについては、「新たな冷戦が始まろうとしている。だが、ロシアは大国であり、いつまでも孤立を強いるのは不可能だ」と述べた。
日露間の北方領土問題については、「(60年以降)ソ連は一貫して『領土問題は存在しない』との立場だったがゴルバチョフ時代に初めて問題があると認め、私も外相として解決に取り組んだ」と述べた。その上で、「個人的には日本の領土だと思う。スターリンが対日参戦した際、日本は事実上敗戦状態にあり、参戦の必要はなかった」と述べた。解決法については、「ロシアは太平洋艦艇を太平洋側に出す海路を確保するために島(北方領土)が必要だと考えている。日露両国の交渉による解決しかない」と述べるにとどめた。
03年11月の「バラ革命」で大統領辞任に追い込まれたことについて、「私は軍を統括する最高司令官だったが、流血の悲劇を避けるために辞任を決意した。今でも誇りに思っている」と話した。
シェワルナゼ氏は、米ソ核軍縮や欧州の通常兵器削減、米ソのパートナー関係構築に努めた。こうした実績について、「これがドイツ統一や、温暖化問題の対策などへの国際的な協力を実現する素地となった」と述べた。