神戸連続児童殺傷事件 元主任検事「笑わない。不気味」

2022-08-19 | 神戸 連続児童殺傷事件 酒鬼薔薇聖斗

「少年A」サカキバラの手は冷たかった 元主任検事「笑わない。不気味」 神戸連続児童殺傷事件
 2022/8/19(金) 6:35配信 神戸新聞NEXT

■14歳の顔

 「酒鬼薔薇聖斗」が、目の前にいた。
 その名で「ボクは殺しが愉快でたまらない」と記した挑戦状を遺棄現場に残し、真っ赤な字の犯行声明文を新聞社に送る「劇場型」の犯行。小学6年の土師淳君殺害事件で逮捕されたのは、中学3年生だった。その一報に社会は騒然となったが、兵庫県警の捜査本部が置かれた須磨署の取調室は様子が違った。同事件で神戸地検の主任検事だった男性(69)が対峙した「少年A」は、無表情だった。
 「14歳は14歳やな、と思ったけど、子どもらしさはなかった。僕の息子が偶然同じ年だったんだけど、同学年とは思えなかったね。まず、笑わない。ちゃんと受け答えはしますよ。でも、暗いっていうのかな、不気味だったね。ある警察官は雰囲気に耐えられなくて、途中で調べ室に入るのが嫌になったと聞いた」
 主任検事は、Aが犯人と確信した。だが神戸連続児童殺傷事件が発生した1997年当時は、少年法で16歳以上しか刑罰に問えず、起訴できなかった。詳細な調書は必要ないのではないかと悩んだ。それでも事件の重大さから、長期の取り調べに入った。地検によるAの調べは全て担当した。
 「普通の少年事件だったら、検察官は調べに行かない。成人の事件でも僕の場合は通常2回かな。でもこの事件は30日近く、連日4時間ほど調べました。それ以外の時間は、弁護士(付添人)の接見や警察による取り調べです。私が一番本人と直接会って話しているはず。それでも時間が全然足りませんでしたがね。
 公判請求(起訴)しなくていいから、プレッシャーはありませんでした。腹に落ちるかどうかは別にして、調べの段階でどういう発言をしたかが、矯正教育を検討する資料になると考えました。だから、僕が十分納得できないことを彼が言ったとしても、そのまま調書に残しました。彼は淡々と答えていましたね」

■心の旅路
 逮捕直前に初めて向き合った際、Aは一連の犯行を認めた。そしてその時、自ら作り出した「バモイドオキ神」などを持ち出し、突拍子もない理由を語った。だが調書には、犯行動機としては出てこない。

 「彼なりに、自分の犯行を理解しようとしていたと思いました。彼自身は、深層心理みたいなところには気付いていない。でも何らか動機付けないと、彼自身が納得できない。そこで勝手に空想を巡らせてストーリーを作った、という気がしました。私は、精神的な障害に起因したものではないと思いました」

 本格的な取り調べに入る際、「モンスター」と称された少年Aの手を握った。
 「『これから2人でね、なんでこんな事件を起こしたのか、一緒に心の旅路をたどっていこう』と言いました。きざな話ですがね。手は冷たかった。彼は平然としていました。14歳だから、自分がなぜこういうことをやったのか分かっていないし、それは捜査官も分からない。だから一緒に考えていこうと伝えたんです」
(霍見真一郎)

【神戸連続児童殺傷事件】 神戸市須磨区の住宅街で1997年2~5月、小学生5人が次々と襲われ、2人が殺害された事件。6月に殺人容疑で逮捕された中学3年の「少年A」は14歳で、当時は刑罰の対象年齢未満だった。事件を機に、少年法の厳罰化が求められ、2001年の法改正につながった。00年に乗客が殺傷された西鉄バスジャック事件で逮捕された少年=当時(17)=は「神戸の事件に影響を受けた」と話すなど、同世代にも影響を与え、「心の闇」は時代を映すキーワードとされた。兵庫県では心の教育を見直そうと、98年から中学2年での体験学習「トライやる・ウィーク」が始まった。犯罪被害者の支援に目が向けられる契機にもなり、08年施行の改正少年法は、重大事件の被害者や遺族に少年審判の傍聴を認めた。
 最終更新:神戸新聞NEXT 

 ◎上記事は[Yahoo!JAPAN ニュース]からの転載・引用です
  
  

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