本気の安保論 「武器輸出三原則」と日本の安全保障 制定した時代と今日では背景が異なる

2013-02-14 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法/歴史認識〉

武器輸出三原則と日本の安全保障
NET IB NEWS 濱口和久「本気の安保論」2013年2月12日 10:38
拓殖大学客員教授  濱口 和久
 日本政府は2月4日、航空自衛隊の次期主力戦闘機となる最新鋭ステルス機F35に関し、日本企業が部品製造に参加した場合、国際紛争の助長回避を目的とした武器輸出三原則の例外として認める方針を固めた。F35の導入予定国には周辺国との軍事的緊張が続くイスラエルが含まれるが、近く官房長官談話として「武器輸出三原則に『抵触せず』」とする見解を示す予定だ。
<三原則の誕生と変遷>
  武器輸出三原則とは1967(昭和42)年に佐藤栄作首相が国会答弁で、「武器」の輸出は、外国為替および外国貿易法などにより経済産業大臣の許可が必要で、「(1)共産圏向けの場合、(2)国連決議により武器などの輸出が禁止されている国向けの場合、(3)国連紛争当事国またはそのおそれのある国向けの場合」の三例を示して武器を輸出しないと述べたことから、武器輸出三原則が生まれた。
 その後、1976(昭和51)年になって三木武夫首相が、対象地域以外への武器輸出も「慎む」、かつ、武器製造関連設備も武器に準じて扱うなど、より厳しい規制を設けたことで、事実上一切の武器輸出が禁じられた。1981(昭和56)年には衆参両院本会議が、政府に武器輸出三原則の実効ある措置を採るよう求める決議を全会一致で可決した。
 しかし1983(昭和58)年になると、中曽根康弘内閣は米国に対してだけは日米同盟上、武器輸出三原則を緩め、米軍向けの武器技術の供与を例外規定とする。2004(平成16)年には小泉純一郎内閣が、米国との弾道ミサイル防衛(MD)システムの共同開発・生産を武器輸出三原則の例外扱いとした。民主党政権下の2011(平成23)年、野田佳彦内閣が国際紛争回避の原則を維持しつつ、兵器の国際共同開発・生産に参加できるよう三原則を緩和し、第三国への売却も「厳格な管理」を前提に認めている。
<日本の防衛産業を守れ>
  世界の趨勢は、軍事技術のハイテク化、装備品の高価格化が進むなか、自国のみで研究開発を進めることが困難となりつつあり、複数の国が最新技術を持ち寄り、共同で生産するのが国際的な潮流となっている。
  ちなみに、日本の防衛産業は、規模として約1兆9,000億円、工業生産額に占める比率は0.7パーセントで自動車産業の20分の1に過ぎない。産業としても規模は小さく、防衛事業の占める比率が10パーセント以下という企業がほとんどであるのに対して、海外の軍需産業は事業規模自体が大きく、たとえばロッキード・マーチン社の売上は、日本の防衛産業最大手である三菱重工業の総売上げを超えている。
  武器輸出三原則が足かせとなって、F35への部品の製造・輸出を拒めば、日本は技術を向上させることもできずに割高な装備品を単純輸入することになる。逆に製造・輸出することができれば、防衛産業の育成にも繋がると同時に、日本の安全保障を考える上で有益となるだろう。
<時代に合わせた見直しを>
  武器輸出三原則を制定した時代と今日では背景が異なる。したがって見直すのは当然だ。F35への部品提供が武器輸出三原則の理念に抵触するかなどを議論するよりも、武器輸出三原則が時代に合致しているかを議論するべきではないのか。本来、部品であれ完成品であれ、製造・輸出するかは、国家にとって有益か否かで判断されるべきものだ。
 日本の防衛技術力の低下を防ぎ、日本の安全保障の新たな基盤を支える体制を構築するためにも、今回の安倍晋三内閣の方針は大きな前進である。
<プロフィール>
 濱口 和久 (はまぐち かずひさ)
 昭和43年熊本県菊池市生まれ。防衛大学校材料物性工学科卒業。陸上自衛隊、舛添政治経済研究所、民主党本部幹事長室副部長、栃木市首席政策監などを経て、テイケイ株式会社常務取締役、国際地政学研究所研究員、日本政策研究センター研究員、日本文化チャンネル桜「防人の道 今日の自衛隊」キャスター、拓殖大学客員教授を務める。平成16年3月に竹島に本籍を移す。今年3月31日付でテイケイ株式会社を退職し、日本防災士機構認証研修機関の株式会社防災士研修センター常務取締役に就任した。『思城居(おもしろい)』(東京コラボ)、『祖国を誇りに思う心』(ハーベスト出版)などの著書のほかに、安全保障、領土・領海問題、日本の城郭についての論文多数。5月31日に新刊「「だれが日本の領土を守るのか?」(たちばな出版、現在第4版)が発売された。 公式HPはコチラ
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武器輸出三原則 F35部品の輸出は当然だ/インテリジェンス・ブリーフィング 2013-02-05 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉 
 武器輸出三原則 F35部品の輸出は当然だ
 産経新聞2013.2.5 03:35[主張]
 航空自衛隊の次期主力戦闘機となるF35戦闘機の部品の共同生産をめぐり、部品を輸出した場合に「国際紛争の助長を回避する」という武器輸出三原則の理念に抵触しないかとの議論が政府内で起きている。
 武器輸出三原則は日本の武器輸出をほぼ全面的に禁止し、防衛技術の競争力低下や関連産業の停滞をもたらした。その弊害の大きさから、一昨年に野田佳彦内閣で国際共同開発への参加や人道目的での装備品供与を解禁する三原則の緩和が行われた。
 だが、緩和後も「紛争の助長回避」という理念を曖昧なままに残してしまった。
 共同生産相手の米国ですら「紛争の助長」が適用されかねず、共同開発の実効性を損なうものだと指摘せざるを得ない。
 その意味で「日本の安全保障に資する」という緩和の目的から、F35部品の輸出は当然、認められるのが筋だろう。
 菅義偉官房長官は「三原則との関係をどう調整するか検討している」と語っている。部品輸出の正当性を明確に主張し、三原則の緩和が日本の防衛に現実に役立つものとなるよう政府の見解を示してもらいたい。
 敵レーダーに捕捉されにくいステルス性を持つ「第5世代」戦闘機は、尖閣諸島への攻勢を強める中国もJ20(殲20)などの開発を急いでいる。日本の現在の主力であるF15は第4世代で、防衛費の削減が続けられた中、改修などによって使われ続けている。
 このままでは太刀打ちできないのは明らかで、東シナ海の空軍力のバランスを崩さないためにF35の導入は不可欠だ。ただ、1機あたり約150億円と高額で、将来の調達コストを下げる上でも部品の共同生産が重要となる。
 部品輸出をめぐる議論では、F35の導入予定国に周辺国との緊張が続くイスラエルが含まれていることが指摘されている。外務省が紛争の助長につながるとの懸念を主張しているようだが、まだ日本が共同生産にも入っていない段階で、参加を見送るような議論は極めて問題である。
 最新の防衛技術が第三国に渡った後、自国の安全保障にどのような影響が生じるかを探ることは当然だ。同時に、国民の平和と安全を守ることは、国家が最優先すべき責務である。
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日米外相会談で米、日本側を破格の待遇 F35も初めて議題に
産経新聞2013.1.19 16:19【ワシントン=佐々木類】
 18日の日米外相会談で米側は、アルジェリア人質事件に関し、軍事機密情報についての説明を行う国務省内でのインテリジェンス・ブリーフィングに岸田文雄外相を招待した。
 日本の民主党政権下で首脳や外相訪米時にこうした米側の配慮はなかった。極秘情報に関する会議に初会談の相手を招待したのは安倍政権を厚遇する姿勢を示したものといえ、沖縄県・尖閣諸島で挑発行為を活発化させる中国に向け、緊密な同盟関係をアピールする狙いが背景にある。
 実際、インテリジェンス・ブリーフィングへの参加だけでなく、米側は尖閣諸島に関する従来の政府方針から大きく踏み込み、中国のいかなる挑発行為について「反対する」(クリントン国務長官)姿勢を初めて示したのも、中国を牽制(けんせい)する狙いがあったからだ。
 会談の中身とは別の形で日米同盟の緊密さをアピールした形だが、両国に影を落とす懸案問題も初めて議題となった。日本政府が導入を決めたが、開発の遅れと価格高騰が問題化した次期主力戦闘機F35の契約についてだ。複数の外相同行筋が議題になったことを否定しなかった。
 同盟国で共同開発国のカナダやオーストラリア、英国、イタリア、トルコが導入の先送りや導入計画の見直しを決めており、日本だけが2017年3月に最初の4機を完成した形で導入するとしている。
 日本政府は民主党政権時代に2013年度概算要求でF35を1機約150億円で2機、日本国内での最終組み立て費として1168億円を計上。安倍政権下で見直しの有無が注目されている。日米関係筋は、「開発の遅れと価格高騰が日米の契約違反となることが明らかになったため、米側から状況の説明があったようだ」としている。
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クリントン米国務長官「日本脅かす、いかなる行為にも反対」/日米首脳会談、2月17日の週に 2013-01-19 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉
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関連; 真剣に日中軍事衝突を恐れる米国 米国の同盟諸国への共同防衛の誓約が全体として崩れてしまう事態も 2013-02-13 | 政治〈領土/防衛/安全保障/憲法〉 
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