イスラエルとUAEが国交正常化で合意 2020/8/13 米 イラン包囲網強化へ パレスチナ自治政府「パレスチナへの裏切り行為 残忍な宣言 他のアラブ諸国には追随しないよう警告する」

2020-08-15 | 国際

イスラエルとUAEが国交正常化で合意 米国が仲介 
 東京新聞 2020年8月14日 13時55分  
 【カイロ=蜘手美鶴、ワシントン=岩田仲弘】アラブ首長国連邦(UAE)とイスラエルは13日、米国の仲介で国交正常化で合意したと発表した。パレスチナ問題を巡って対立するイスラエルとアラブ諸国が国交を結ぶのは異例で、今後の和平交渉への影響は必至とみられる。 
 国交正常化はエジプト、ヨルダンに続き3カ国目で、湾岸諸国では初。イスラエルのネタニヤフ首相、UAEのアブダビ首長国のムハンマド皇太子、トランプ米大統領が同日に電話協議し、国交正常化で合意した。 
 3カ国の共同声明によると、イスラエルはパレスチナ自治区ヨルダン川西岸の併合を凍結。「歴史的な合意が中東地域の平和を促進するだろう」と強調し、安全保障や投資開発、医療分野などで協力するとした。近く正式合意する。 
 ネタニヤフ氏はテレビ演説し「アラブ諸国と和平合意ができることを証明した」と述べた上で、併合計画の凍結はトランプ氏の要請だと明らかにした。 
 仲介したトランプ氏はホワイトハウスで会見し「誰もが不可能と言っていた。他のアラブ諸国も国交正常化することを期待する」と述べた。11月の大統領選前に自らの外交成果を強調したい考えだ。 
 一方、イスラエル、米国と敵対関係にあるイランにとっては、湾岸諸国にイスラエルと外交関係をもつ国が現れたことは、手痛い打撃となりそうだ。 
 UAEとイスラエルは経済的な結び付きが強く、新型コロナウイルス対策や科学技術分野でも協力を深めてきた経緯がある。

■パレスチナ「裏切り行為」
 【カイロ=蜘手美鶴】パレスチナ自治政府は13日、イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化合意について「パレスチナへの裏切り行為で、国交正常化は残忍な宣言だ。他のアラブ諸国には追随しないよう警告する」と強く反発した。一方で、既にイスラエルと国交があるエジプトなどはヨルダン川西岸併合の一時凍結を評価した。

■英国首相「歓迎すべき一歩だ」
 【ロンドン=藤沢有哉】イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)による国交正常化の合意を受け、ジョンソン英首相は13日、ツイッターで歓迎を表明した。イスラエルによるパレスチナ自治区ヨルダン川西岸の一部の併合計画の凍結について、「より平和な中東への歓迎すべき一歩だ」と評価した。 
 ジョンソン氏は7月、イスラエル紙に寄稿して併合の自制を求めていた。ラーブ英外相も声明を出し、国交正常化の合意を「歴史的な一歩」と表現。さらにパレスチナとイスラエルの直接対話により、両者の共存と平和が構築されることを望んだ。

 ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です


米 イラン包囲網強化へ イスラエルとUAEの国交正常化合意で 
 NHK 2020年8月14日 21時29分 トランプ大統領 
 長年対立してきた中東のイスラエルとUAE=アラブ首長国連邦が国交を正常化することで合意したことを受けて、両国を仲介したアメリカは、これをきっかけにイスラエルとアラブ諸国との関係の正常化につなげ、敵対するイランの包囲網を強化したい考えです。 イスラエルとUAEは13日、アメリカを仲介にして国交を正常化することで合意に達しました。
 長年対立してきたイスラエルとUAEが合意に達した背景には、近年、中東地域で影響力を増しているイランに対抗するという共通の利益があったとみられています。
 仲介したアメリカにとっても、イスラエルと歴史的に対立してきたアラブ諸国との関係の正常化が進めば、敵対するイランへ圧力を強めることができます。
 アメリカのイラン政策を特別代表として統括してきたフック氏は合意の発表に際し、「アラブ諸国とイスラエルが和平を結ぶことはイランには最悪の悪夢で、イランへの圧力を最大化する政策によって、この歴史的な偉業が達成された」と述べ、今回の合意がイランへの包囲網の強化につながると強調しました。
 アメリカのトランプ大統領は、ことし11月の大統領選挙をにらみ外交成果をアピールしようと、アラブ諸国に対しイスラエルとの関係正常化を働きかけていくとみられ、これまでの「イスラエル対アラブ」という対立の構図が変わるきっかけになるのかに関心が集まっています。

 合意文書 主な内容  
 アメリカとイスラエル、それにUAE=アラブ首長国連邦の間で交わされた合意文書の主な内容は次のとおりです。
▽イスラエルとUAEの国交を完全に正常化する。
▽数週間のうちに大使館の設置や投資、技術協力、それに直行便の就航などについて2国間の合意に署名する。
▽イスラエルがヨルダン川西岸のユダヤ人入植地の併合を一時停止する。
▽イスラエルとパレスチナとの間の中東和平問題の包括的で永続的な解決に向けて努力する。
▽両国の関係改善をイスラエルと対立しているほかのアラブ諸国などにも拡大していくよう努める。

イラン外務省「愚行で危険な行為」
 イスラエルとUAEの国交の正常化の合意について、イラン外務省は声明を発表し、「愚行であり危険な行為だ」と強く非難しました。
 イランは、イスラエルを国家として認めておらず、中東地域の武装勢力への支援などを通じてイスラエルと敵対しています。
 イラン外務省が14日に発表した声明では、「合意は戦略的な愚行だ。非合法で非人道的な政権と関係を正常化するというUAEの恥ずべき試みは、危険な行為だ」と述べ、非難しました。
 また、「抑圧されたパレスチナの人たちは、犯罪政権との関係正常化を決して許すことはないだろう」と述べ、合意はパレスチナの人たちの反発を招くだけだと強調しました。
 そのうえで、声明では、「シオニストの政権がペルシャ湾地域の均衡を崩そうと介入することに警戒しなければならない。UAEやそれに追随する政府はみずからの行動がもたらす結果に責任を持たなければならない」と述べて、周辺のアラブ諸国が敵対するイスラエルと関係を深めイランの孤立化を図ろうとする動きに警戒感を示しました。

トランプ政権の中東政策は
 アメリカのトランプ政権は、政権が発足してから一貫してイスラエルを擁護する政策をとり続け、イスラエルが敵視するイランに対しては圧力をかけて封じ込め政策を進めてきました。
 3年前の2017年5月、トランプ大統領は就任後の初の外国訪問先に中東のサウジアラビアを選び、オバマ政権時代に冷え込んだ同盟関係の立て直しをはかるとともに、50を超すイスラム諸国の首脳を集め、イランを孤立させるべく連携を呼びかけました。
 パレスチナとイスラエルの間で帰属をめぐって対立していたエルサレムについて、トランプ大統領はイスラエルの首都であると認め、おととし5月に、大使館のエルサレム移転を強行しました。
 また、同じ年の5月には、イランの核合意から一方的に離脱したうえで、過去最大級の経済制裁を行うと発表し、圧力を一層強めました。
 そして去年3月には、イスラエルが占領するゴラン高原についてイスラエルの主権を認める考えを示し、
去年11月にはヨルダン川西岸でイスラエルが行う入植活動は国際法違反とはみなさないと表明するなど、アメリカが40年にわたってぶれることのなかった政策を次々と覆しました。
 ことし1月に入ると、トランプ大統領の指示のもと、アメリカ軍がイランの精鋭部隊、革命防衛隊のソレイマニ司令官を殺害し、アメリカとイランが衝突する懸念が高まりました。
 さらに、ことし1月にはトランプ大統領がイスラエルによる占領を追認した独自の中東和平案を公表。パレスチナ側は強く反発していました。
 一方、トランプ大統領による和平案の公表の場に、今回国交を正常化させたUAE=アラブ首長国連邦のほか、バーレーン、それにオマーンの大使が出席していて、このうちアメリカにあるUAEの大使館は「アメリカ主導の国際的な枠組みの中で和平交渉に戻るための重要な出発点になる」として歓迎する姿勢を示していました。

UAE 合意に理解示したエジプトとの連携を強調
 イスラエルとの国交正常化の合意を受けて、UAE=アラブ首長国連邦のムハンマド・アブダビ皇太子は13日午後、日本時間の14日未明、エジプトのシシ大統領と電話で会談しました。
 UAEの国営通信によりますと、会談でシシ大統領は「イスラエルとUAEの歴史的な進展が、中東の和平交渉や安定化に貢献する。イスラエルによるヨルダン川西岸の併合を停止させ、パレスチナとイスラエルの2国家共存を目指すという方針を維持し、平和のためのチャンスをよみがえらせることができる」と述べました。
 これに対し、ムハンマド皇太子は「UAEとエジプトは、地域の問題について一致する見解を持っている」と応じ、合意に理解を示したエジプトに謝意を伝えたということです。
 UAEとしては、地域の大国であるエジプトとの連携を強調することで、長年対立してきたイスラエルとの国交正常化への批判をかわそうというねらいがあるものとみられます。

トルコ外務省「歴史はUAEの偽善を許さない」
 今回の合意についてトルコ外務省は14日、声明を発表し「パレスチナからの強い反発はもっともだ。歴史はUAE=アラブ首長国連邦の偽善を決して忘れず、許さないだろう」と非難しました。
 トルコ政府は、アメリカのトランプ政権が打ち出したイスラエル寄りだと言われる中東和平案をめぐっても、パレスチナを支持する立場を鮮明にしていて、今回の動きがほかのアラブ諸国へと広がることに警戒感を示しました。

専門家“ほかの湾岸諸国も国交正常化に動く可能性”
 イスラエルとUAE=アラブ首長国連邦の国交の正常化について、専門家からはこれまで水面下で関係のあった両国の現状を追認したものだと指摘したうえで、今後、ほかの湾岸諸国も国交正常化に向けて動く可能性があると指摘しました。
 中東情勢に詳しい放送大学の高橋和夫名誉教授はイスラエルとUAEの国交正常化について「事実上、両国は水面下で同盟関係にあったがこの関係が表に出てきたのがいちばん大きい」として、これまで非公式だったイスラエルと湾岸諸国の関係を明らかにしたものだとと指摘しました。
 そのうえで「UAEに続いて、バーレーンやオマーン、そして最後はサウジアラビアがイスラエルとの国交を正常化することをアメリカは期待している。しかしサウジアラビアはイスラム教の盟主を名乗っているためUAEでの反応を様子見をしている段階だ」として、UAEで目立った反発がなければサウジアラビアも含めて国交正常化に動く可能性があるとしました。
 一方で「パレスチナにとっては寝耳に水の話だ」として中東和平交渉が完全に行き詰まる中で、パレスチナが置き去りにされている現状を指摘しました。
 このほか、トランプ政権が今回の国交正常化を歴史的な外交上の成果としたことについて「敵対するイランへの圧力が何の成果を生んでいない中で、国交正常化はこうした失敗を覆い隠す煙幕の役割を果たしている」として一定の評価はしたものの、強調するほどのものではないとの見方を示しました。

オマーンも支持表明
 イスラエルと国交がないオマーンの外務省は14日、今回の合意について「支持を表明する。中東地域での包括的で、公平で、恒常的な平和の実現に貢献することを願う」とコメントを発表しました。
 オマーンをめぐっては、2018年にイスラエルのネタニヤフ首相がオマーンを極秘訪問して当時のカブース国王と異例の首脳会談を行い、双方の接近を印象づけました。
 今回の合意の発表のあと、イスラエルと国交がないアラブ諸国のあいだで支持を表明したのはバーレーンに次いで2か国目です。

ヨーロッパの国々からは歓迎の声
 ヨーロッパの国々からは、今回の合意で、イスラエルがヨルダン川西岸でのユダヤ人入植地の併合を一時停止すると決まったことについて歓迎する声が上がっています。
 このうちイギリスのジョンソン首相は13日、ツイッターに「国交を正常化するというUAEとイスラエルの決定は、非常にいいニュースだ。ヨルダン川西岸での併合が進まないよう強く望んできただけに、併合を一時停止させる今回の合意はより平和な中東に向かう歓迎すべき一歩だ」と投稿しました。
 またフランスのルドリアン外相も13日、声明を発表し、併合の一時停止について「前向きな一歩だ」と評価しました。
 そしてイスラエルと将来のパレスチナ国家が共存する「2国家共存」の実現を視野に入れたイスラエルとパレスチナの交渉が再開することに期待を示しました。
 さらにドイツのマース外相は14日、イスラエルのアシュケナジー外相と電話会談し「歴史的な一歩だ」と伝えたことを明らかにしました。
 そのうえで「この合意が中東和平プロセスに新たな弾みをつけることを期待している。われわれは『2国家共存』のみが、中東に永続的な平和をもたらすことができるという立場だ」と強調しています。

 ◎上記事は[NHK]からの転載・引用です


イランけん制で思惑一致 イスラエルとUAE、米仲介で国交正常化 置き去りのパレスチナは猛反発 
 東京新聞 2020年8月15日 05時50分
 13日、米ホワイトハウスでイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化合意を発表するトランプ大統領(中)=ロイター・共同 
 イスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)が、米国の仲介で電撃的に国交樹立を表明した。3カ国はイランをけん制する思惑で一致、特に11月の米大統領選で劣勢を強いられているトランプ大統領は外交成果のアピールに躍起だ。一方、置き去りにされた形のパレスチナは猛反発、和平はさらに遠のきそうだ。(ワシントン・岩田仲弘、カイロ・蜘手美鶴)

■贈り物
 「『ドナルド・トランプ合意』と呼んでもらいたかったな」。トランプ氏は13日、ホワイトハウスの大統領執務室で政権幹部を従え終始満足そうだった。オブライエン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は記者団に「大統領はノーベル平和賞の最有力候補だ」とまで言い切った。 
 トランプ政権が自画自賛するのは、11月の大統領選で民主党のバイデン前副大統領に劣勢を強いられる中、イスラエル寄りのキリスト教右派や福音派など自身の支持基盤に外交成果として訴えたいからだ。 
 イスラエルのネタニヤフ首相も、新型コロナウイルス対策や自身の汚職事件など綱渡りの政権運営が続くなか、アラブ諸国との国交樹立は大きな成果としてアピールできる。米アメリカン大のガイ・ジブ助教(外交政策)は「合意はそのタイミングからもトランプ、ネタニヤフ両氏への贈り物になった」と指摘する。

■脅威
 イスラエルとUAEが手を結んだ背景には、シリア内戦などを通じて地域で影響力を増すイランへの対抗意識がある。イスラム教スンニ派が多数の湾岸諸国にとって、イスラム教シーア派のイランが各地で支援する武装組織は大きな脅威。特にUAEは、ペルシャ湾を挟んで対イランの最前線に位置する。 
 イスラエル問題に詳しいエジプトの評論家モハンマド・ナイム氏は「(イスラエルとUAE)両国を結んだのはイランへの脅威だ。現時点でトランプ氏の勝利が確信できず、国交樹立というカードを切って(トランプ氏を)支援したのだろう」と分析する。 
 両国は、オバマ米前政権が結んだイラン核合意を「最悪の取引(ディール)」として離脱したトランプ氏の再選を強く望む。トランプ氏も13日、「私が再選したら、30日以内にイランと新たなディールをしてみせる」と意欲をみせた。

■追随
 パレスチナ自治政府は、イスラエルとの和平合意がない状態で国交樹立されたとして、UAEに対し「裏切り行為だ」と反発する。 
 ただ、イスラエルと国交があるエジプトは「地域に安定をもたらす合意に感謝する」(シシ大統領)と歓迎。国交がないアラブ諸国でも、ヨルダン川西岸の併合凍結を評価するなど、パレスチナに冷ややかな姿勢が目立つ。米オクラホマ大のジョシュア・ランディス教授は「UAEはアラブ諸国の中枢。追随して国交正常化を目指す国が出てくるだろう」と指摘する。 
 アラブ諸国は経済低迷など内政問題を抱える国が多く、パレスチナ問題に力を割けない事情もある。レバノンの中東政治評論家サルキース・アブゼイド氏は「この合意はアラブ諸国がパレスチナ問題の解決を放棄したと言うに等しい。中東和平の進展には寄与しないだろう」と話す。

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 ◎上記事は[東京新聞]からの転載・引用です
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