「凶悪犯罪とは何か」光市事件の最高裁口頭弁論欠席理由の模擬裁判

2007-11-24 | 光市母子殺害事件

村上 ちょうど安田先生が例の光市の事件の最高裁の口頭弁論欠席の理由に日弁連の仕事を挙げておられましたので、話題になったのが実はこの模擬裁判です(笑)。そのときの司会が僕で、安田先生には解説していただきました。弁護士が裁判員裁判を迎えて、死刑事件にどうやって取り組むかというのを、実際我々がやってみたんですね。
 そのやり方として、本来あるべき刑事弁護人がやらなければいけないことを体現する弁護人と、今一般に見られる弁護士の死刑に対する取り組み、つまり、陥りがちな弁護活動の二つを対比して、実際に捜査段階で被疑者に対してどういう対応をするか、あと公判前整理手続きが始まったときにどういうような方針でどうやって取り組んでいくか、それから裁判員裁判になったときに被害者遺族への尋問のあり方だとか弁論に対してどういうふうにやるかというのを実際に生でやってみたんですね。ですから、午前11時から午後5時まで、ぶっ続け状態で準備しました。その前日のリハーサルも朝から晩までぶっ続け状態で準備しました。これはもう日弁連の取り組みとして半年前から決まっていて、日弁連としては全国の弁護士に衛星中継で流しますので、お金もものすごくかかる大事業だったんですね。
 そういう状況でやってみまして、そこで1番感じたことは何かといいますと、やはり弁護士の活動が良い意味でも悪い意味でも大きく影響するということですね。
 そのときに取り上げた事件が名古屋であった女子大生誘拐事件を参考にさせていただいたんですが、あれはまさに死刑か無期かの限界領域の事件でして、そこでたとえば弁護人が細かい事実を逐一問題にしていくという弁護士の活動をやりますと、公判前整理手続きは争点を整理するという場なんですけど、非常に時間がかかってしまうんです。そして弁護士の検討の仕方は、さっき加藤先生がおっしゃったように、実際に現場へ行って、被告人が自白でやったとされることを実際にやってみて、そこで弁護人が気がついたことがあったら被告人に対して、ほんとにそうだったかということを自分たちが体験しながら検証していくのです。
 こういう事件の場合はマスコミはすごいですし、被告人は人を殺してしまったということで自責の念にとらわれていますので、なかなか真実を言わないんですね。そうすると弁護人がちゃんとそれを追体験することによって批判・検証していくということが、本来あるべき弁護人だと。それで実際にやってみますと、公判前整理手続きは非常に時間がかかってしまう。何回もやらなくちゃならない。同時に検察官には大変な負担をかけることがわかりました。あと裁判員裁判で実際に市民の方が判断を下したのですが、みんな無期だったんですね。そうしますと、弁護人の使命を達成することによって、この被告人の行ったことは、我々とあまり変わらない部分がある、こういう状況に置かれていると誰だって陥るかもしれないという部分が、この研修で示すことができたかなという感じがしました。
 一方で、よく我々弁護人が陥りがちなことなんですけど、やったことは間違いないから、細かい事実については本人はあまり語りたがらない、それで自分は悪いことをやったんだから死刑にしてくれと言う、死刑にしてくれと本人が言っていると弁護人のほうも事実を引き出そうとしない、そうすると情状だけで闘うという形になります。そうしますと争点が多くありませんので、公判前整理手続きは非常に短くなってきます。そして裁判員裁判でやることは情状だけですので、この人が本当に事実を語っていないところでは、この人自身の状況が裁判員になかなか伝わらないんじゃないかというような意見が出されました。ただ結果的に、6人の裁判員の方がいらっしゃいまして、1人の方が死刑という選択をされましたけれど、それ以外は無期にされました。 http://www.k4.dion.ne.jp/~yuko-k/kiyotaka/kyouaku4.htm


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。