単独の攻撃者「ローンオフェンダー」 対策強化もするも…警備に限界 2023.04.22

2023-04-22 | 死刑/重刑/生命犯

単独の攻撃者「ローンオフェンダー」 対策強化もするも…警備に限界
 中日新聞 2023年4月22日 土曜日 

岸田首相が応援演説に訪れた和歌山市の雑賀崎漁港で、取り押さえられる木村隆二容疑者=15日午前11時31分
  
岸田首相が応援演説に訪れた和歌山市の雑賀崎漁港で、取り押さえられる木村隆二容疑者=15日午前11時31分

 和歌山県で15日に起きた岸田文雄首相への爆発物襲撃事件。現場で取り押さえられ逮捕された男は、今のところ組織や団体との関係はうかがえない。警察当局は、昨年の安倍晋三元首相銃撃事件から、こうした「ローンオフェンダー(単独の攻撃者)」への警戒を強めていたが、限界を露呈した格好だ。孤独や社会への絶望を背景にした暴発は、要人テロだけではない。なぜ発生するのか、どう防ぐか。 (山田祐一郎、宮畑譲)
岸田首相が応援演説に訪れた和歌山市の雑賀崎漁港で、取り押さえられる木村隆二容疑者=15日午前11時31分
 演説現場で岸田首相に向けて爆発物を投げたとして、威力業務妨害容疑で逮捕・送検された木村隆二容疑者(24)=兵庫県川西市。共犯者や特定の組織の関与をうかがわせる情報はなく、自宅の家宅捜索では、金属製とみられる管や火薬の可能性がある粉末が見つかっており、爆発物を自作した疑いがある。一人で武器を製造するなど準備して犯行に及ぶケースは、安倍元首相銃撃事件で、逮捕・起訴された山上徹也被告(42)と同様で、ローンオフェンダーである可能性が高い。
 松野博一官房長官も十七日の会見で、今回の事件について「いわゆるローンオフェンダーによる違法行為の発生は懸念されるところだ」と言及。その上で、「発生を防ぐため、政府として情報収集活動を強化し、警戒警備に万全を期すべく、関係機関が一丸となって対応していく」と述べた。
 テロとかかわりがなかった個人が、インターネットなどを通じて過激化してテロを引き起こすケースは、かつては「ローンウルフ(一匹おおかみ)」型とも呼ばれ、警察白書では2000年代以降、各国で危険性が認識されていると指摘。13年4月の米ボストン・マラソンを狙った爆弾テロ事件などが該当するとされる。
 国内では、安倍元首相の事件を受け、警察などは警備力の強化を進めていた。交流サイト(SNS)への書き込みを収集・分析するため、都道府県警で要人の安全に関する情報に特化したサイバーパトロールを開始。今回の統一地方選に際しても予兆となる投稿がないか、監視と把握を進めていた。
 また5月に先進7カ国首脳会談(G7広島サミット)を控え、テロ事件発生に警戒を強めている。今月、東京都小平市ではバス車内で不審な男が液体をまいて乗客を負傷させる想定の訓練を実施。21年に小田急線や京王線の電車内で相次いで発生した刺傷事件も「ローンオフェンダー」であり、対策が求められている。
 そんな中で今回の事件は起きた。テロ対策に詳しい公共政策調査会の板橋功研究センター長は「自分で計画し、準備をして犯行を実行するのがローンオフェンダー。探知することは難しく、実行されてから気付くケースが多い」と指摘する。「インターネット上で犯行につながるような書き込みなどを丹念にリサーチするしかないが、過去の事件でもすべて犯人が事前に書き込みをしているわけではない」

 犯行に使用する銃器や爆発物も、製造方法がインターネット上で検索でき、殺傷能力があるものを誰でもつくることができる。「警察も削除依頼を出すなど対応しているが、海外のサイトには情報があふれている。防ぐことが難しいのが現実で、諸外国も同様だ」と訴える。「今回の事件で、警察の対応を見ると、やることはやっていた。それでも警備には限界がある」

(以下略)

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用、書き写し(=来栖)です


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