「小沢無罪で疑惑深まる」という大メディアの奇妙な論理
NEWSポストセブン2012.05.07 16:01
週刊ポストは小沢一郎・民主党元代表が4月26日の裁判で無罪でも大メディアは“有罪扱い”を続けるだろうと指摘してきた。そのとおりに、まさに知性と品性をかなぐり捨てた剥き身の権力派メディアが、なおも国民を欺き続けようとしている。
党内ではいよいよ小沢氏の党員資格停止処分を解除する手続きが始まる。だが、国会では野党と一部の与党議員が小沢氏の政治的復権阻止にスクラムを組んだ。後押ししているのが大メディアの“無罪で疑惑が深まった”という奇妙な論理だ。
速報のテレビは、判決直後からエキセントリックな報道を展開した。
〈微妙な判断 なぜ無罪〉(TBS『Nスタ』)
〈報告・了承を認定 なぜ無罪?〉(フジテレビ『スーパーニュース』)
――と、「なぜ」を連発した。『スーパーニュース』のキャスター・安藤優子氏は「私たち素人の感覚」と断わったうえで、「真っ白けの無罪だとは到底いえないといっていいんですよね」と不満を叫んだ。素人ならそんなところで偉そうにしゃべらないほうがいい。
さらに各ニュース番組は街頭インタビューを行ない、「無罪はおかしい」という声を一斉に流した。都合よく選んだ“国民の声”を使ったネガティブキャンペーンである。
判決を「黒に近いグレー」と表現したのはテレビ朝日『報道ステーション』にコメンテーターとして出演した元特捜検事だ。それを受けて解説者の三浦俊章・朝日新聞解説委員は、
「(無罪判決は)疑わしいけれども断定まではできないから。(小沢氏には)説明責任を果たしてもらいたい」 と、無罪の被告に説明責任を求めた。裁判で真実が明らかになるといって強制起訴を支持したのはどこの誰だったか。
それに呼応して自民党や公明党が証人喚問要求を突きつけるという、これまで何度も繰り返された「政・報一体」の小沢叩きの連携プレーを見せつけた。
朝日新聞は翌日の社説で〈政治的けじめ、どうつける〉と題し、小沢氏の復権を許さないと書いた。
〈刑事裁判は起訴内容について、法と証拠に基づいて判断するものだ。そこで問われる責任と、政治家として負うべき責任とはおのずと違う。政治的けじめはついていない。きのう裁かれたのは、私たちが指摘してきた「小沢問題」のほんの一部でしかない〉
「裁判は無意味だった」と言い放った。無罪が言い渡された今、“刑法ではセーフだが、政治家としてはアウト”という新論理を創作したのだ。つまり、裁判などどっちでもよく、自分たちがあらかじめ決めていた結論こそすべてなのだ。
読売新聞も同じ日の社説で〈政治家としての道義的責任も免れない〉と書き、小沢復権阻止で一致しているが、理由はもっとわかりやすい。こう主張した。
〈党内には、小沢氏を要職で起用する案もあるが、疑問だ。「政局至上主義」的な小沢氏の影響力拡大は、消費税問題を混乱させるだけで、良い結果を生むまい〉
小沢氏が問うているのは、増税や原発再稼働の是非である。なぜそれが「政局至上主義」なのか。“小沢だから悪”とか“財務省がいうから増税”とか、挙げ句には“増税のためには大連立”などと書く大新聞こそ政局至上主義である。
無罪判決ははからずも大メディアの危険な本質を国民に浮き彫りにした。メディア社会学が専門の服部孝章・立教大学教授が語る。
「判決後の報道をつぶさにみてきたが、各メディアとも本来は切り離して論ずるべき判決報道と消費税法案がどうなるかという政局報道をゴチャ混ぜにして報じている。これはメディアが司法判断をもとに自分たちの政治的主張を述べているようなもので、報道として公正ではありません」
※週刊ポスト2012年5月18日号
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◆小沢無罪で、「新しい排除」が始まった/森英介元法相「大久保秘書逮捕=あれは私が指示した事件だ」 2012-05-07 | 政治/検察/裁判/小沢一郎/メディア
「日本一新運動」の原点―107
日本一新の会・代表 平野貞夫妙観
◯「小沢無罪」でも排除を続ける日本支配層の愚劣さ!
4月26日(木)、定刻の午前10時すぎ、東京地裁は「小沢無罪」を判決した。食事以外では一緒にテレビを見る機会のない妻と2人して、珍しく画面に食い入り安堵した。いろんな人がいろんな立場でコメントした。 その中でこれでは駄目だ、こんな人物が内閣総理大臣をやっていては国が滅びると確信したのは、野田首相のコメントだ。「司法の判断を受けとめます」とは何ということか。人間の心を持っていない。このコメントは「有罪を想定していた」、もしくは「期待していた」ことをにじませる心理状態がよく出ている。判決理由は有罪にも使える内容だ。そう受けとめるという意味のコメントと私は理解する。
その理由は2週間ぐらい前に、「小沢は有罪だ。小沢グループの貴女は来年の参議院選挙で公認するわけにはいかない」と、最高裁長官と昵懇な政治家弁護士から引導を渡された、気の毒な政治家がいたという話があるからだ。見当違いのコメントを出した政治家は野田首相だけではない。自民党の谷垣総裁に石原幹事長、公明党の山口代表らは、口を揃えて小沢氏の政治的道義的責任を国会で明らかにすべきと発言した。そして証人喚問を要求する方針を表明した。何を考えているのか、頭の中がどうなっているのか、覗いてみたい衝動に駆られた。
陸山会問題が、政治捜査すなわち政権交代のため麻生自公政権で仕掛けられたこと、さらに菅民主党政権で、小沢排除のため「検察審査会」で非合法に強制起訴に持ち込んだ状況証拠などがある。証人喚問を云々する前に、国会としてこの問題を究明するのが先ではないか。これは議会民主政治の根幹に関わることである。政治資金収支報告の「虚偽記載」をこの重大問題に利用したのが小沢問題の本質である。
私はそれを証明できると、このメルマガでも再三採りあげ、テレビでの「爆弾発言」も含めて、読者諸兄はご承知のはずであろう。
◯森英介法相「大久保逮捕は私が指示した」との話を聞いていた財界人の懺悔
4月26日(木)小沢無罪判決の夕刻、参議院議員会館で「真の民主主義を確立する議員と市民の会」が開かれた。集会は興奮の内に終わった。私が廊下で市民の人たちと懇談していると旧知の財界人が話しかけてきた。私は久しぶりの遭遇に驚いて「どうしてここに?」と問うと、「実は小沢さんのことが気になって、ずっと心が痛んでいたのです。無罪となって、やっと心の刺がとれました」とのこと。この人物こそ、平成21年3月3日の大久保秘書逮捕について、麻生内閣の森英介法法務大臣から「大久保秘書逮捕は私が指示した」と直接に聞いた人である。この件の詳報は「メルマガ・日本一新」を創刊する直前、The JOURNALの平成22年5月22日に掲載されたが、以下要点を採録する。
私は大久保秘書逮捕の2日前、「堂本知事さん、この平野という人物は平成になって日本の政治を混乱させた人で、小沢一郎も問題があり悪人だが、この人が小沢さんよりもっと悪人なんですよ」などと、陸山会事件を予告するかのような警告を受けていた。その後、この財界人は「こんなことがあって、真っ当な政治ができるはずはない」と、激しく森法務大臣を批判していた。私は、日本の民主政治のためにも、2人で森法務大臣の言動を公表するよう協力を要請した。がしかし、財界人の立場もあり実現しなかった。この人物の「心に刺さった刺」とはこのことであった。私はしかたなく、朝日ニューススターで森法相へ抗議したことがあり、この映像は、有志の手により「爆弾発言」として今でもネットに流されている。
陸山会事件で、小沢氏の政治的道義的責任を問うなら、まずは私とこの財界人を国会に招致し、証言をさせることが喫緊の国会の責務ではないか。さらに、森元法務大臣をはじめ、当時の検事総長や特捜部の責任者など、すべての関係者の証人喚問を行い、真相の究明を行うべきである。政権交代という国民主権の行使を担保した憲法の基本権を、検察権力を悪用して犯罪を捏造し、阻止しようとしたことは許されることではない。
私や財界人の証言だけではなく、東京地検特捜部で捜査に当たった前田元検事も、小沢氏の裁判で検察の不条理な捜査を証言している。その背後に政治権力の指示があったことは容易に推定できる。
わが国の議会民主政治を崩壊させたのは麻生自公政権であり、そのための責任をとるのは自公両党である。それを解明し国民の目に晒すことが国会の権能である。さらに検察が二度も不起訴にした小沢氏を、強制起訴にもっていった菅民主党政権の「法曹マフィア」たちの疑惑も議会民主政治の問題として究明すべきことである。
◯どこまで狂うのか日本の巨大メディア。そのねらいは「亡国の消費税増税」か!
「小沢無罪」の判決に対する巨大メディアの反応が、異常を通りすぎて狂っている。まず、「小沢問題」の本質は政権交代を阻止するための「政治捜査」であったことを意図的に無視していることだ。このことが国民主権を冒涜した「権力の犯罪」であることは、国民のほとんどが承知していることである。「虚偽記載問題」は、特捜検察が従来の法運用をねじ曲げて犯罪とした、いわば「つくりだされた」事件である。あの記載方法は適法だというのが、会計専門家のほとんどの意見であった。
巨大メディアの「小沢無罪」報道は、これが近代国家?と慄然とするものだ。テレビでいえば、読売テレビのウェークアップ!ぷらす(4月28日(土))で、森ゆうこ参議院議員が「小沢問題は議会民主政治の根本に関わること」と発言すると、司会の辛坊治郎氏は強引に発言を妨害した。大多数の巨大メディアが談合したように「権力の暴走・議会民主政治の危機」という基本問題をまな板に挙げようとしない。
唯一の例外は、テレビ朝日のワイドスクランブル(4月27日(金))だった。私に生出演の機会があり「陸山会事件の始まりが、麻生政権の政治捜査で、国民主権・議会民主政治を冒涜するもので国会で究明すべきことだ」との発言をすることができたくらいだ。各紙の社説も、おそらくは申し合わせをしたとしか思えない、相も変わらずの「小沢灰色」の大合唱であった。そして小沢氏の無罪で政局の混迷が深まり、政治の決定が行えなくなるとする「小沢排除」の第二幕が開いた感じだ。
民主政治の原点は、政党が国民と契約したマニフェストの基本を尊重することである。しかし、国際問題を含む状況の変化もあり、個々の契約の修正があることも至極当然だ。しかし、民主党政権がやってきたことの根本は、時間を経るに従って「国民の生活が第一」という政権交代の原点を崩壊させてきた。その最大の問題が「消費税増税法案」だ。国民の生活を苦しめ、国家財政を悪化させることが確実といえる野田政治に反省を求めることは、民主党所属国会議員なら当然のことである。
この活動の頂点に立つのが小沢一郎という政治家である。小沢氏を陸山会事件という政治捜査と政治裁判で排除しようとする勢力は、政権交代の原点である「国民の生活が第一」という政治を排除しようとする勢力と同根である。自民党など野党側ならまだしも、同じ民主党内の内閣総理大臣となる人物とその仲間たちが、「小沢排除」の中心勢力なのだから、議会民主政治が機能しないのも道理である。さらに巨大メディアが、裁判中にも増して口を揃えて小沢排除を強化している実態は、完全に「情報ファシズム」の時代に入ったといえる。
事象の本質を考察しようとせず、「虚偽記載」という捏造した抹消部分で小沢氏を攻撃し、反論を許さない巨大メディアの姿勢は、狂った巨大コンピューターだ。何故こんなことになるのか。「情報ファシズム」の使命は、「消費税増税」の実現にある。彼らは財政当局に身を売り、政府広報費という税金で自分たちの経営を少しでも楽にしようと、自分だけ良ければそれでよいという、人間社会にあるまじき集団に堕落したことが、「小沢無罪」判決後の巨大メディアだ。社会の木鐸は死滅した。
野田首相が、その軽い生命をかけるという「消費税増税」が実現すれば何が起きるか。生活保護者・年収200万円以下の人、そして倒産・廃業する零細中小企業を合わせて約4千万人(総人口の3分の1)の日本人が、命と身を削る暗黒の時代となることが、私の心眼には見える。それを支えるのが巨大メディアがつくりだす「情報ファシズム」だ。恐ろしい時代になったことを国民はよく知るべきだ。彼らには、この流れを食い止めようとする小沢一郎が邪魔になるので、「新しい排除」が始まったといえる。
2012年05月06日
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