「米国の新しい時代の幕開けだ」 米一般教書演説の要旨
トランプ1年 2018/1/31 16:43
トランプ米大統領が30日夜(日本時間31日昼)に実施した一般教書演説の要旨は以下の通り。
一般教書演説をするトランプ米大統領=AP
■総論…安全で強く、誇り高き米国を建設
私が最初にこの演台に立ち、米国民の代表として話して1年近くになる。政権は迅速に行動を起こし、新たな希望の潮流が全米に広がった。以来、我々は日々、米国を再び偉大にするため、明確なビジョンと正しい使命を持って前進してきた。 今夜はまず、この国が強いのは国民が強いからだという点を認識しようではないか。我々は力を合わせ、安全で強く、誇り高き米国の建設に取り組んでいるところだ。
(大統領)選挙後、製造業の20万人を含む240万人の雇用が新たに生み出された。長年停滞していた賃金もようやく上がり始めた。失業保険申請件数は45年ぶりの低水準となり、アフリカ系とヒスパニック系の米国人の失業率は過去最低水準になった。中小企業の景況感は史上最高に達し、株式市場も次々に記録を破って8兆ドルもの価値が増した。
11カ月前に私がこの演台から皆さんに約束した通り、史上最大の減税と税制改革を実現した。この大幅な減税で、中間所得層と中小企業の負担は大きく軽減される。来月から大勢の人々の手取り額が増えるだろう。悲惨なオバマケア(医療保険制度改革法)の支柱は撤廃され、個人の保険加入義務はなくなった。
法人税は35%から21%に引き下げられ、米企業は世界で競争し、勝利できるようになった。中小企業も大幅な減税を享受した。減税法の成立以来、約300万人の労働者がすでに減税ボーナスを受け取っている。アップルは米国への3500億ドルの投資と2万人の新規雇用計画を発表した。
これは米国の新しい時代の幕開けだ。「アメリカン・ドリーム」を生きるのに今ほどよい時はない。演説を聴いている皆さん、どのような生い立ちであろうが、どこの出身であろうが、今がチャンスだ。懸命に働き、自分を信じ、米国を信じるなら、どんな夢も抱くことができ、何にでもなれる。力を合わせれば、我々は何でも実現できる。
今夜は、どのような未来、どのような国を目指すのかを語りたい。我々は皆、1つのチーム、1つの国民であり、米国という家族だ。ともにアメリカ流のやり方を再発見しているところだ。
■経済政策…歴代政権で最多の規制を緩和
連邦政府の公正さを高めるために、就任後の初年度に歴代政権で最も多くの規制を緩和した。国産のエネルギーに対する戦争をやめた。クリーンな石炭に対する禁止をやめた。エネルギーの輸出国になった。
自動車産業の足かせとなってきた規制を廃止した。そして、車の街デトロイトは再び息を吹き返すことができた。多くの自動車企業が米国内で工場を拡大し始めた。過去十数年にわたってみることのできなかった現象だ。(欧米自動車大手)フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)がメキシコからミシガン州に主力工場を移転すると表明した。トヨタ自動車とマツダはアラバマ州に工場を新設する。企業や雇用は米国を去っているといわれてきたが、今は違う。戻ってきているのだ。
最新の治療法や安価な後発薬が、より迅速に国民の手に届くようにするために昨年、米食品医薬品局(FDA)はかつてない数の新薬や医療機器を承認した。不治の病に苦しむ患者は、実験的な治療法を試す権利があると信じている。ほかの国を渡り歩く必要はない。米国内で治療を受ける機会を与えたい。議会は、米国人に対して「(治療を)試す権利」を与えることを検討すべきだ。
私にとって、医薬品の価格を下げることは優先課題のひとつだ。他の国では、多くの医薬品が米国より大幅に安い。政権のメンバーに不当に高い医薬品の問題を正すように命じた。医薬品の価格は今後下がる。
米国の繁栄を犠牲にした不公正な貿易協定を転換する。経済的な敗北の時代は終わった。これからの貿易関係は互恵的で、公平なものになる。悪い貿易条約を破棄し、新しい条件で交渉する。米国の労働者と知的財産を守る。
破壊寸前のインフラも建て直す。米国は建築者の国だ。エンパイア・ステート・ビルディングを1年で建てた。単純な道路を敷設する許可を得るのに10年もかかるような現状は不名誉だ。
議会に対して、少なくとも総額1.5兆ドルのインフラ投資法案を作成することを求める。許可や承認の手続きを簡単することも必要だ。2年、もしくは1年で物事が完了するようにする。
■内政…移民政策見直し、国境の壁建設へ
米国人の労働者と家族を中心に考えた移民政策は、移民社会のような脆弱なコミュニティーにとっても役に立つ。警備の甘い国境が麻薬とギャングの流入を許した。流入した安い労働力が貧困層の米国人と職と賃金を争った。悲惨なことに犯罪で命を失う人も出た。犯罪者・ギャングの流入を許した「抜け穴」をふさぐよう議会に求める。
米国の大統領として、私の最高の忠誠と最大の思いやり、不断の関心は米国の子供たち、米国の苦闘する労働者たち、米国の忘れられたコミュニティーにある。私はあらゆる生い立ち、肌の色、宗教、信条の市民を守るため、民主、共和両党と手を携え協力する。
両党との協議に基づき、公平な妥協策として両党に支持されるべき提案を議会にした。第1の柱は、幼少時に親に連れられて来た180万人の不法移民に市民権獲得への道を寛大に提供することだ。
第2の柱は国境の警備を完全にすることだ。南の国境に壁を建設し、我々のコミュニティーの安全を保つため、より多くの英雄を雇用する。
第3の柱はビサ(永住権)抽選制度の廃止だ。技術を持ち、働く意志があり、社会に貢献し、我が国を愛し敬う人々を受け入れる「メリット・ベース」の移民制度への移行を始める時だ。
第4の柱は「チェーン・マイグレーション(連鎖移民)」の終結による核家族の保護だ。(永住権の)保証を(移民の)配偶者と未成年の子供に限定する。テロの時代に、これらの制度はもはや見過ごすことのできない危険をもたらす。
こうした改革は(鎮痛剤)オピオイドやドラッグ中毒の危機への対策も支える。ドラッグのまん延と戦い、必要な人々に治療を提供する。
■国防・安保…核戦力を近代化、テロ組織や北朝鮮などに対峙
我々は世界中でならず者政権、テロリスト組織、我々の利益や経済、価値観に挑戦する中国やロシアのようなライバルに直面している。こうした脅威に対峙する中で、弱さは紛争につながる最も確かな道であり、比類のない力こそが防衛の最も確かな道であると我々は知っている。危険な国防予算の強制削減を終わらせ、我々の素晴らしい軍に十分な予算を提供するよう議会に求める。
防衛の一部として、我々は核戦力を近代化・再建しなくてはならない。核戦力を決して使用せずにすむよう望むが、いかなる侵略行為をも抑止するほど強力にする。未来のいつか、世界の国々が結束して核兵器を廃絶する素晴らしい時が来るかもしれない。残念ながら、我々はまだそこには至っていない。
昨年、私は過激派組織「イスラム国」(IS)を地球上から根絶するために同盟国と協力すると約束した。1年たち、IS掃討の連合はイラクとシリアでIS支配地域のほぼ100%を解放した。だが仕事はまだ残っている。ISを打ち負かすまで戦いを継続する。
民間の病院に爆弾を仕掛けるようなテロリストは悪だ。可能な限り、壊滅させる。必要であれば拘束し、尋問できなければならない。きょう、私はマティス国防長官に対して米国の軍事拘禁政策の再検討と、グアンタナモ収容所を維持することを指示した。議会に対し、ISとアルカイダに対する戦いにおいて、テロリストを拘束するために必要な全ての権限を維持することを要請する。
先月、私は上院の全会一致の支持のもと、エルサレムをイスラエルの首都に認定した。その直後、数十カ国が国連総会の決議で、米国の決断に反対票を投じた。米国の納税者は一部の国に毎年数十億ドルを送っている。私は米国の海外援助が米国の利益にかなう形で、米国の友好国にだけに充てられるような法律を策定するよう議会に求める。
米国が世界中で友好を強めるなか、敵対国についても明確にしている。イランの人々が腐敗した独裁政権に対して立ち上がったとき、私は沈黙を保たなかった。米国は自由のために戦う人々とともにある。私は議会に対し、イラン核合意の根本的な欠点を改善するよう要請している。また私の政権はキューバとベネズエラの共産・社会主義の独裁政権に対して厳しい制裁を科した。
だが、北朝鮮よりも自国民を残忍に抑圧する政権はない。北朝鮮の無謀な核ミサイルの追求は、我々の故郷を脅かす可能性がある。最大の圧力をかけ、そういった事態の防止に努めている。過去の経験は、現状への満足と譲歩が攻撃と挑発を招くだけであることを教えた。私はこの危険な状況をもたらした過去の政権の過ちを繰り返さない。
勤勉な学生だったオット・ワームビア氏は北朝鮮で逮捕されて重労働を課され、帰国の数日後に死去した。今夜、彼の記憶にアメリカの決意をささげることを誓う。
◎上記事は[日本経済新聞]からの転載・引用です *強調(太字)は来栖
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◇ 『ユダヤとアメリカ 揺れ動くイスラエル・ロビー』立山良司著 中公新書