成人年齢が引き下げられ、満十八歳は「大人」 新大学生らが親元を離れる春は、カルトなどが勧誘を活発化させる時期  2022/4/4

2022-04-04 | 社会

18歳の隙を狙ってくる

 成人年齢引き下げでカルトを警戒  
   2022年4月4日 中日新聞
 今月から成人年齢が引き下げられ、満十八歳は「大人」と見なされるようになった。新大学生らが親元を離れる春は、カルトなどが勧誘を活発化させる時期。長男が大学時代にオウム真理教に傾倒した経験を持つ東京都世田谷区の永岡弘行さん(83)=オウム真理教家族の会会長=は「不安定さを抱えた大人と子どものはざまの時期。親や周囲は若者の不安や悩みに寄り添い続けてほしい」と願う。(奥村圭吾)
 一九八七年のある日、自宅に一通の郵便物が届いた。オウム真理教の前身「オウム神仙の会」のゴム印が押された茶封筒。オウムの本を読んだ大学一年の長男がはがきを送り、道場への案内が届いた。
 「地下鉄サリン事件が起きる約八年前。私たちも息子も変な団体とは思っていなかった」と永岡さんの妻英子さん(74)は振り返る。
 だが、道場へ通い始めた長男の様子は一変した。大学を休んで自室で布教用のビラを折り、長期休みは合宿で家を空けた。
 「おやじ、うちは何坪あるの」。遠回しに資産を尋ねられ、永岡さんは不信感を強めたが手遅れだった。八九年秋、長男は「あなたは人のために何ができるか考えたことはありますか」と言い残して出家した。
 脱会させるため、永岡さんは道場に通って教義の矛盾を訴えた。翌年に長男を取り戻した後も、長男とともに他の信者の脱会を支援。教団の恨みを買い、信者から猛毒ガスのVXを衣服にかけられ、生死をさまよった。
 「一度のめり込むと、マインドコントロールを解くのは非常に難しい」と永岡さん。英子さんは「18歳の頃は物事に真っすぐ打ち込む熱心さの陰で友人や勉強の悩み、親への不満などを抱える時期。普段からしっかり耳を傾ける姿勢が大切だと思う」と話した。
 18、19歳については、今月から未成年者が結んだ契約を取り消せる「未成年者取消権」もなくなる。カルトや新興宗教への寄付も民法上の契約に当たるため、取消権は及ばなくなる。例えば、親の同意を得ずに契約したクレジットカードでキャッシングした現金や、ローンを組んで購入した車などをカルトに寄付することも可能だ。
 「日本脱カルト協会」(西田公昭代表理事)によると、広大なキャンパスを持ち、部外者の侵入が不自然に思われにくい有名私大や国公立がカルトから狙われている。交流サイト(SNS)上に入学前から友人を募る「#春から○○大学」などの書き込みもあふれ、その中に勧誘が紛れている可能性もある。
 名古屋学院大は1月、ホームページで、新入生向けに「ツイッターで大学や在学生をかたったアカウントが、カルトの勧誘などを行う危険性がある」として注意を呼び掛けた。岐阜大は本年度の新入生らに向けた「学生生活ガイド」で、カルトに勧誘された場合に「インターネットなどで団体について情報を集める」「少しでも疑問を感じたらはっきりと断る」「友人や家族などに相談する」などの対策を示した。
 西田代表理事は「カルトにとっては、親の力が及ばない成人が増えるのは好機会。親や社会が警戒心を高めるべきだ」と呼び掛ける。オウム真理教被害対策弁護団事務局長の小野毅弁護士は「4月に加え、新生活になじめない人が増える5月病の時期も危ない」と警鐘を鳴らす。

 ◎上記事は[中日新聞]からの転載・引用、及び書き写し(=来栖)


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