2565人が裁判員経験、無罪なし 制度まもなく1年
asahi.com2010年4月17日4時51分
裁判員制度がスタートして5月で1年を迎えるのを前に最高裁は16日、3月末までの裁判員裁判の実施状況を発表した。昨年8月に初めて裁判員が選ばれて以降、全国で計2565人の市民が裁判員を務め、444人の被告に判決を言い渡した。刑の重さでは、執行猶予にする際に保護観察を付けるケースが、過去2年間の裁判官だけの裁判に比べて約2割も増えていることが明らかになった。
裁判員制度の意識調査 主な質問と回答
運用上の課題を検討するため、学者や元判事らをメンバーに最高裁が設けた有識者懇談会に同日、報告された。
最高裁によると、裁判所が事件ごとに無作為に選んだ裁判員候補者の総数は4万1047人だったが、実際に裁判員を選ぶ手続きに出席を求められた候補者は2万38人。70歳以上のお年寄りや学生のほか、仕事や家庭の事情など社会生活上の負担に配慮し、半数以上の辞退を幅広く認めた。
呼び出しに応じて裁判所に足を運んだ候補者は1万6600人で、出席率は82.8%。スタート直後に比べると、やや低下傾向にある。
出席者のうち、面接でのやりとりを経て「不公平な裁判をする恐れがある」などの理由で裁判所によって外されたのは86人。このほか、弁護人や検察官の意向で外された候補者は1997人を数えた。面接での態度や外見から「何となく不公平そうだ」と見える人や、年代や性別などから自分たちの主張に都合が悪いと考える人を、主に弁護人が除外しているとみられる。
判決を受けた被告を罪名別にみると、強盗致傷が115人と最多。殺人(未遂を含む)100人▽覚せい剤取締法違反(営利目的密輸)47人▽傷害致死33人――と続く。裁判所別(支部を除く)では、成田空港を抱えて薬物の密輸事件の多い千葉地裁が47人で最も多く、大阪地裁40人▽東京地裁36人▽さいたま地裁22人――などが多かった。
444人の被告の判決で、無罪は1件もない。死刑判決もなく、無期懲役の判決を受けた被告が7人いた。執行猶予が付いた80人のうち半数を超える44人に、保護観察所や保護司が生活を見守る保護観察がついた。法廷で被告と向き合った裁判員たちが被告の「判決後」に強い関心を持った証しといえそうだ。
起訴数に比べて判決数が少なく、公判前に証拠や争点を絞り込む「公判前整理手続き」に時間がかかって事件が滞留していく課題も浮き彫りになっている。(延与光貞、岩田清隆)
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保護観察付きが60% 裁判員裁判 最高裁調査
2010年4月17日 東京新聞朝刊
最高裁は十六日、裁判員裁判の実施状況を公表した。執行猶予判決に保護観察が付けられたのは約60%に上り、従来の裁判官による裁判に比べて23ポイント増えた。最高裁は「裁判員が真剣に事件に取り組み、被告の立ち直りに強い関心を寄せている結果ではないか」と話している。
保護観察は、保護観察官や保護司の指導、住居や就職などの援助を受け、社会生活しながら再犯防止と更生を目指す制度。執行猶予のほか、仮釈放時などに付けることができる。
裁判員裁判の対象となる罪のうち殺人など十七の罪で起訴された被告に対し、二〇〇八年四月~今年三月に言い渡された執行猶予判決を最高裁が調査。その結果、裁判員裁判で審理されたのは七十一件あり、うち四十二件(59・2%)で保護観察が付いた。これに対し、〇九年五月の裁判員制度開始までの一年余に起訴された事件では、三百八十三件のうち保護観察付きは百四十件(36・6%)にとどまっている。
〇九年版犯罪白書は「再犯防止に保護観察は有効な方策」としているが、全事件で保護観察が付けられた割合は〇〇年以降、低下の一途をたどり、〇八年は過去最低の8・3%になっている。
一方、裁判員裁判で三月末までに判決を受けたのは四百四十四人で、すべて有罪だった。
二月末までに判決を受けた三百八人のうち九十九人(32%)が控訴。三月末までに控訴審が終わったのは十八件で、十二件が控訴棄却、残り六件は控訴取り下げだった。
◆裁判員裁判、消極派80%.実施後も不安解消されず 「裁判員裁判の重い刑、尊重すべきだ」と控訴棄却
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