出会い系サイト 1度も会ったことのない男に会社の金1億5000万円送金窃盗容疑 「中日春秋」

2008-01-24 | 社会

男に会社の金1億5000万 名古屋・港署 窃盗容疑、女ら逮捕
2008年1月24日 中日新聞夕刊

 名古屋市中川区の女が、出会い系サイトで知り合った広島県庄原市の無職の男に送金するため、勤めていた会社の金を盗んだとして名古屋・港署は24日、窃盗容疑で2人を逮捕した。5年間交際し、女は約1億5300万円を送金したが、実際には1度も会ったことはなく、会社側が起こした損害賠償請求訴訟で初めて“彼氏”と対面。電子メールで届いた美男子の写真とはまったく別人だったという。

 逮捕されたのは名古屋市中川区、元会社員塚田幸子容疑者(30)と広島県庄原市、無職広沢正文容疑者(30)。

 調べによると、塚田容疑者は2007年春、経理を担当していた港区の運送会社から250万円を盗み、広沢容疑者に送金した疑い。社内調査で04-07年に合計約1億5000万円を送金したことも認めている。

 2人は01年末、携帯電話の出会い系サイトで、広沢容疑者が「必ず返すから」と病気の親の治療費などの名目で金を無心。消費者金融の借金だけでは足りず、嫌われたくない一心で会社の金に手をつけたという。最初はいくらか返金されたため、信用したらしい。

 別の社員が不自然な会計処理に気づいて不正が発覚。会社は昨年5月、塚田容疑者を懲戒解雇して港署へ告訴し、2人に対して1億5300万円の返還を求める訴訟を起こした。

 名古屋地裁は昨年10月中旬、塚田容疑者に、今月17日、広沢容疑者にそれぞれ請求通り賠償を命じる判決を言い渡した。広沢容疑者は「会社から不正に引き出した金とは知らなかった」と争う姿勢を示したが、2人のメールのやりとりから、共犯と認定された。

 2人は昨年10月10日、法廷で初めて顔を合わせたが、塚田容疑者の前に現れたのは写真とはかけ離れたひげ面。広沢容疑者は“ジャニーズ系”の別人の写真をメール送信してなりすまし、メールと電話だけで“交際”を続け、理由をつけては会うのを避けてきた。

◆“なりすまし”横行
 インターネット上で見ず知らずの男女がやりとりする出会い系サイトが犯罪の温床となっている。雑誌モデルの顔写真を使ったり、年齢やときには性別まで偽る“なりすまし”も横行する。

 ネット犯罪に詳しい神戸大大学院の森井昌克教授(情報通信工学)は、匿名性が強いネットを通した相手は、現実の自分を知らないため「安心して本音をさらけ出し、いつの間にか毎日会う友達よりも親しい心理状態に陥る場合がある」と指摘。今回の1億5000万円という金額には「これだけ長期に多額の金を送金したケースは聞いたことがない」と驚く。

 警察庁によると、出会い系サイトにからむ事件は2006年に過去最高の約1900件を摘発。約5000サイトが存在すると推計され、被害のほとんどが少女へのわいせつ行為など。成人女性では、結婚詐欺などで金をだまし取られるケースが多い。

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中日春秋
2008年1月25日

 「儲」。お金をもうける、という時の漢字である。これを不埒(ふらち)に読み解き、悪徳商法に利用していた輩(やから)がいたそうだ

▼うまい儲け話をした後、こう言って、お年寄りをだますのである。「私の話を信用してください。ほら、儲かるという字は<人>の<言>うことを<信>じる<者>と書くじゃないですか」。前に京大大学院教授の阿辻哲次さんが東京新聞に書いていた話

▼儲という字は<人>と、字音を表す<諸>からなっている字であり、そんな分解は無論、でたらめ。それでも、そう言われてみると、ちょっと納得しそうになるから言葉というものは恐ろしいのだが、「言葉の魔力」の表現を地でいくような事件が、きのう明らかになった

▼名古屋市の元OLが、出会い系サイトで知り合った広島県の男に送金するため、勤めていた会社から金を盗んだとして逮捕され、男も共犯で縛についた。これだけなら別に珍しくない。送った額が一億円を軽く超えると聞いてもそうは驚かない。が、五年にわたる二人の“交際”がメールと電話だけだった、というのにはたまげた

▼いくら実像とはかけ離れた美男の写真を送っていたとはいっても、それだけで、一度も会わない相手からこんな額を引き出すのは無理だろう。男女のこと。甘い言葉も連ねたはずだが、並や大抵の表現力で、ここまで人の心を操れるものではあるまい。全体、いかなる不届きな言葉の魔力を使ったものか

▼結局は<言>のみで<人>を<信>じさせ<儲>けた<者>の悪行も暴かれた。言霊のなせるわざかもしれぬ。


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